妊娠中の働き方を守る「母健連絡カード」|均等法の相談19,482件のデータと、会社に義務があることを医師が解説
「つわりがひどいけれど、妊娠は病気じゃないから、自分が我慢するしかない」
「妊婦健診のたびに有給休暇を使っている。それが当たり前だと思っていた」
「つらさを自分の口で説明するのが、いちばん難しい」
妊娠がわかってからの働き方について、こうした思いを抱えている方は少なくありません。体はつらいのに、職場では言い出せない。自分だけが弱いのではないか、と感じてしまう。
けれど、国の窓口に寄せられた相談の数を見ると、同じ悩みを抱えている人がたくさんいることがわかります。会社には、妊娠中の働き方について法律で決められた義務もあります。その義務を動かすために、医師が書く1枚の書類があることも、あまり知られていません。
この記事では、国の公式レポート「令和7年版 厚生労働白書」と、厚生労働省・こども家庭庁・日本産科婦人科学会の公表資料をもとに、妊娠・出産期の相談の実態、会社に課された義務、「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」の使い方を、医師の立場からわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 男女雇用機会均等法に関する相談 19,482件の内訳と、その正しい読み方
- 母性健康管理について会社に課された2つの義務(健診を受ける時間の確保と、医師の指導を守るための措置)
- 健診の時間や休んだ時間の賃金の扱いと、会社が一方的に年次有給休暇を指示できないこと
- 母健連絡カードの使い方、書ける症状、書かれる措置
- カードがなくても、申し出れば会社に措置の義務があること
- つわりで受診する目安と、「無理をすると流産する」は本当か(流産と早産は分けて考えます)
https://youtu.be/1PXmb5ubL7I
国の窓口に寄せられた相談は、1年で19,482件
令和7年版 厚生労働白書によると、2023(令和5)年度に都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ寄せられた、男女雇用機会均等法に関する相談は 19,482件 でした(白書 p.193)。
白書は、この法律を守らせる取組の目的を「働く女性が母性を尊重されつつ、その能力を十分に発揮できる雇用環境の整備」と書いています。我慢を前提にした法律ではない、ということです。
相談の内訳は、白書の図表2-1-1「男女雇用機会均等法に関する相談内容の内訳」(p.194)に示されています。
| 相談の内容 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| セクシュアルハラスメント | 7,414件 | 38.1% |
| 婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い | 5,075件 | 26.0% |
| 母性健康管理 | 3,225件 | 16.6% |
| 妊娠・出産等に関するハラスメント | 1,756件 | 9.0% |
| 性差別(募集・採用、配置・昇進、教育訓練、間接差別等) | 1,097件 | 5.6% |
| その他 | 915件 | 4.7% |
| 合計 | 19,482件 | 100.0% |
出典:令和7年版 厚生労働白書 図表2-1-1(p.194)
「母性健康管理」というのが、健診を受ける時間や、医師の指導を守るための措置についての相談です。つわりがつらくて働き方を変えてほしい、という悩みはここに入ります。
相談の内訳を読むときの注意点
妊娠・出産に関わる3つの区分——不利益取扱い、母性健康管理、妊娠・出産等に関するハラスメント——を合計すると、5,075+3,225+1,756で 10,056件、全体の 51.6% になります。ただし、この合計は白書には書かれていません。図表の数字から計算したものです。
もうひとつ、大切な点があります。2つ目の「婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い」には、結婚を理由とするものも含まれています。ですから「相談の半分以上が妊娠の相談」という言い方はできません。それでも、妊娠・出産の時期の悩みが大きな部分を占めていることは確かです。
なお、この19,482件は相談の件数で、人数でも事業所数でもありません。働く人からの相談に限らず、会社からの相談も含まれています。
本稿の執筆時点でもっとも新しい集計では、2025(令和7)年度の相談は21,320件でした(厚生労働省「令和7年度の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況について」)。2023年度19,482件、2024年度19,145件、2025年度21,320件と上下しており、単純に増え続けているわけではありません。
別の調査|働きながら妊娠・出産した女性1,000人のうち26.1%がハラスメントを受けていた
図表2-1-1とは別の調査ですが、厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度、2024年5月17日公表)では、過去5年間に働きながら妊娠・出産をした女性1,000人のうち、26.1%が職場で妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを受けたと答えています。
これは働く女性全体の割合ではなく、妊娠・出産の時期を経験した人の中での割合です。受けた人の 30.7% は「何もしなかった」と答えています。声を上げられないのは、あなただけではありません。
白書には、妊娠・出産等を理由とする解雇その他の不利益取扱いに関する相談について、法違反が疑われる場合には報告徴収を行い、違反が認められれば厳正な指導により法の履行確保を図っている、と書かれています(p.193)。
会社には、母性健康管理について2つの義務があります
男女雇用機会均等法は、妊娠中と産後1年以内の女性について、会社に2つの義務を課しています。「均等法の義務が全部で2つ」という意味ではなく、母性健康管理について2つ、という意味です。
flowchart TD
A["🏢 会社に課された義務
(母性健康管理について)"]
A --> B1["🕐 1つ目
健診を受ける時間の確保"]
A --> B2["🛡 2つ目
医師の指導を守るための措置"]
B1 --> C1["妊娠23週まで 4週間に1回
24〜35週 2週間に1回
36週〜出産 1週間に1回
※医師・助産師の指示が優先"]
C1 --> C2["「必要な時間」に含まれるもの
診察/保健指導/待ち時間/往復の時間"]
C2 --> C3["通院日は原則として本人が希望する日
会社が休日に変えさせることは原則できない"]
B2 --> D1["🚃 通勤の緩和
時差通勤・勤務時間の短縮・在宅勤務 など"]
B2 --> D2["☕ 休憩
時間を延ばす・回数を増やす・横になれる場所 など"]
B2 --> D3["🩺 症状への対応
作業の制限・勤務時間の短縮・休業 など"]
B1 --> E["💴 賃金(健診の時間・措置に共通)
法律に支払いの定めなし/有給か無給かは会社の規定
会社が一方的に年休を充てるよう指示することはできない
自分から希望して年休を使うのは自由"]
B2 --> E
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classDef detail fill:#fff7cc,stroke:#d4a017,color:#7a5c00
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classDef caution fill:#ede9fe,stroke:#7c3aed,color:#4c1d95
class A head
class B1,B2 duty
class C1,C2,C3 detail
class D1,D2,D3 act
class E caution
1つ目|健診を受ける時間を確保する
会社は、妊婦健診や保健指導を受けるために必要な時間を確保しなければなりません。確保すべき回数は、法律の施行規則で次のように決められています。
| 妊娠週数 | 健診の時間を確保する間隔 |
|---|---|
| 妊娠23週まで | 4週間に1回 |
| 妊娠24週から35週まで | 2週間に1回 |
| 妊娠36週から出産まで | 1週間に1回 |
| 出産後1年以内 | 医師・助産師が指示した回数 |
医師や助産師がこれと違う指示をしたときは、その指示による回数になります。表の回数は「これしか受けられない」という意味ではありません。
ここでいう「必要な時間」には、診察と保健指導の時間だけでなく、医療機関での待ち時間と、往復の時間も含まれます。通院日は原則として本人が希望する日で、会社が「休みの日に行ってほしい」と変更させることは、原則としてできません(厚生労働省「働く女性の母性健康管理のために」令和8年1月)。
2つ目|医師の指導を守れるようにする措置
医師や助産師から指導を受けたとき、会社はその指導を守れるように、次の措置を講じなければなりません。
- 妊娠中の通勤緩和……時差通勤(始業・終業に各30〜60分程度)、勤務時間の短縮(1日30〜60分程度)、在宅勤務 など
- 妊娠中の休憩……休憩時間を延ばす、回数を増やす、時間帯を変える、横になれる場所を用意する など
- 妊娠中・出産後の症状等への対応……作業の制限、勤務時間の短縮(1日1〜2時間程度)、休業 など
( )内は国が示している目安です(同パンフレット p.7)。同じ「勤務時間の短縮」でも、通勤緩和として行う場合と、症状への対応として行う場合で目安が違います。作業の制限については、長時間の立ち仕事は連続して1時間程度以上を避けること、同じ姿勢が続く作業は1時間以内とすることが目安として示されています。
対象は妊娠中と産後1年以内の女性です。パートタイム、契約社員、派遣でも対象で、勤続年数の条件はありません。派遣で働いている場合は、派遣元と派遣先の両方に措置の義務があります。
賃金はどうなるのか
ここは誤解が多いところです。
| ありがちな誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 会社の義務だから、健診の時間も賃金が出る | 法律にあるのは時間の確保。賃金の支払いについては法律に定めがありません |
| 無給と決まっている | 有給にするか無給にするかは会社の規定です。就業規則を確認してください |
| 会社に「年休を使って」と言われたら従うしかない | 会社が一方的に年次有給休暇を充てるよう指示することは認められていません |
| では年休を使ってはいけないのか | 自分から希望して年次有給休暇を使うのは自由です |
勤務しなかった時間分の賃金について、国は「労使で話し合って決めることが望まれます」としています(同パンフレット Q&A 問3・問4)。
なお、妊婦健診の費用については、市区町村の助成があります。2025年4月1日現在、全国1,741すべての市区町村が14回以上を助成しており、妊婦1人当たりの公費負担額は全国平均で113,647円でした(こども家庭庁、2026年4月8日公表)。ただしこれは全国平均で、助成の額と内訳は市区町村ごとに異なります。ご自身の額は、母子健康手帳の受診券や市区町村の窓口でご確認ください。「時間の話」と「費用の話」は別の制度です。
措置を求めたことを理由に、不利益な扱いをすることは禁止されています
こうした措置を求めたこと、実際に利用したことを理由に、解雇したり不利益な扱いをしたりすることは、男女雇用機会均等法で禁止されています。妊娠中や産後1年以内になされた解雇は、会社が「妊娠等を理由とする解雇ではない」と証明しないかぎり、原則として無効です。
これらの規定そのものに刑事罰はありませんが、国は会社に報告を求め、助言・指導・勧告を行うことができ、勧告に従わない場合は企業名が公表されることがあります。
なお、母性健康管理の措置としての休業を、会社が私傷病休暇の制度で処理することは可能です。ただしそのとき、賞与や退職金の算定、人事考課で、通常の私傷病休業より不利に扱うことは、法律で禁止された不利益取扱いにあたります(同パンフレット Q&A 問6)。
なお、産前産後の休業は労働基準法の仕組みで、ここまでの話とは別です。産前は6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定の方が請求した場合に休業でき、産後8週間は請求がなくても就業が禁止されています(産後6週間を過ぎたあと、本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務に就くことはできます)。
母健連絡カードとは——医師が書けば、あなたが説明しなくていい
「制度があるのはわかった。でも、つらさを自分の口で説明するのがいちばん難しい」——そのための仕組みが、母性健康管理指導事項連絡カード、略して母健連絡カードです。
このカードは、男女雇用機会均等法に基づく国の指針で様式が定められた書類で、医師や助産師が記入します。厚生労働省は「医師等による証明文書の一つであり、診断書と同等と位置づけられるものですので、診断書の提出は必要ありません」と説明しています。つまり、会社に措置を求めるときは、診断書を別に用意する必要がありません。
使い方は4つの段階
- 健診や診察のときに、医師・助産師に「カードを書いてください」とお願いする
- 医師・助産師が、症状と必要な措置を記入して本人に渡す
- 本人がカード下段の「指導事項を守るための措置申請書」欄に記入し、会社に提出する(これが措置の申し出になります)
- 会社が、記載内容に応じた措置を講じる(法律上の義務)
flowchart TD
S1["① 健診のときに医師・助産師へ
「カードを書いてください」
とお願いする"]
S1 --> S2["② 医師・助産師が
症状と必要な措置を記入して
本人に渡す"]
S2 --> S3["③ 本人が会社に提出し
措置を申し出る
(申請書欄はカードの下段)"]
S3 --> S4["④ 会社が
記載内容に応じた措置を講じる
(法律上の義務)"]
S4 --> N1["🔁 期間は1週間・2週間・4週間などで区切る
延長するときは新しいカードを発行"]
N1 --> N2["💡 カードがなくても
本人の申し出で内容が明らかなら
会社は措置を講じる必要がある"]
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classDef doc fill:#e0f2fe,stroke:#0284c7,color:#075985
classDef submit fill:#fff7cc,stroke:#d4a017,color:#7a5c00
classDef company fill:#dcfce7,stroke:#16a34a,color:#14532d
classDef note fill:#ede9fe,stroke:#7c3aed,color:#4c1d95
class S1 ask
class S2 doc
class S3 submit
class S4 company
class N1,N2 note
診察のときに「カードを書いてください」と伝えるだけで構いません。言いにくければ、母子健康手帳を出すときに一言添えるのでも大丈夫です。
カードに書ける症状
現在の様式(2021年7月1日から使われているもの)には、次の症状等が並んでいます。該当するものに医師が印をつけます。
| 区分 | 様式に並んでいる症状等 |
|---|---|
| つわり・消化器 | つわり、妊娠悪阻(にんしんおそ)、腹痛 |
| 血液・循環 | 貧血、めまい・立ちくらみ、動悸、頭痛、血圧の上昇 |
| お腹・出血 | 腹部緊満感(お腹の張り)、子宮収縮、性器出血 |
| 体の痛み・むくみ | 腰痛、痔、静脈瘤、浮腫(むくみ)、手や手首の痛み |
| 排尿 | 頻尿、排尿時痛、残尿感 |
| 全身・検査 | 全身倦怠感、蛋白尿、妊娠糖尿病 |
| 赤ちゃん・妊娠の状況 | 赤ちゃん(胎児)が週数に比べ小さい、多胎妊娠 |
| 産後・こころ | 産後体調が悪い、妊娠中・産後の不安・不眠・落ち着かないなど |
| その他 | 合併症等(自由記載) |
出典:厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カード」(2021年7月1日適用様式)
項目は全部で27あります。2021年の見直しで、古くなっていた用語が改められ、妊娠中・産後の不安や不眠という項目が新しく加わりました。
ここで知っておいていただきたいのは、病名がつく前の「症状」の段階でも、医師が必要と判断すれば書けるということです。診断名が確定していないから頼めない、ということはありません。
なお、現在の様式に「妊娠高血圧症候群」「切迫流産」「切迫早産」といった病名の欄はありません。「血圧の上昇」「お腹の張り」「子宮収縮」「性器出血」といった症状の言葉で記入します。
カードに書かれる措置
症状に対して書かれる措置は、次の4つです。
- 休業(入院加療/自宅療養)
- 勤務時間の短縮
- 作業の制限……長時間の立ち仕事、同じ姿勢が続く作業、腰に負担のかかる作業、寒い場所での作業、持ち場を長時間離れられない作業
- ストレス・緊張を多く感じる作業の制限
カードの「その他の指導事項」欄には、妊娠中の通勤緩和の措置(在宅勤務を含む)と妊娠中の休憩に関する措置が用意されています。在宅勤務は、新型コロナの特例(2023年9月30日で終了)とは別に、現在の様式に恒久的な措置として明記されているものです。
措置が必要な期間は、1週間・2週間・4週間・その他から選んで記入します。期間の延長が必要になったときは、新しいカードを発行します。
カードがなくても、申し出れば会社に措置の義務があります
これは、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
厚生労働省は「母健連絡カードの提出がない場合でも、女性労働者本人の申出等からその内容等が明らかであれば事業主は必要な措置を講じる必要があります」と明記しています(同パンフレット p.9・Q&A 問8)。
カードは、会社に義務を発生させるための紙ではありません。あなたの代わりに、医師が症状と必要な措置を正確に伝えるための道具です。カードがまだ手元になくても、会社に申し出ることをためらわないでください。
産後1年以内、流産・死産のあとも対象です
母性健康管理の措置は、妊娠中だけのものではありません。産後1年以内も対象です。
流産・死産(人工妊娠中絶を含む)をされた場合も、その後1年以内であれば、妊娠の週数を問わず措置の対象になります(同パンフレット Q&A 問11)。妊娠4か月以降の流産・死産の場合は、労働基準法に基づく産後休業(原則8週間)の対象にもなります。
様式の入手先と、文書料について
カードの様式は、厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」からダウンロードできます(PDFとPowerPointの2種類。日本語版のほか、英語・中国語・ポルトガル語・ベトナム語との併記版もあります)。
母子健康手帳に掲載されている場合もあります。ただし手帳への掲載は、国が必ず載せるよう定めた「府令様式」ではなく「任意記載事項様式」としての収載なので、載っている手帳と載っていない手帳があります。
文書料については、国の資料に定めがありません。医療機関によって異なりますので、受診される医療機関にご確認ください。
医師からお伝えしたいこと——つわりと、受診の目安
つわりで受診する目安
つわりは多くの方が経験する症状ですが、程度は人によって大きく違います。厚生労働省の「母性健康管理に関する用語辞典」は、次のような場合に受診や措置を検討するとしています。
- 体重が1週間に2kg前後減ったとき
- 尿の検査でケトン体が出たとき
- 妊娠12週を過ぎても症状が続くとき
つわりの症状が悪化し、食事がとれず、嘔吐が激しく全身の栄養状態が悪くなった状態を「妊娠悪阻」といい、入院しての治療が必要になることもあります。
ただし、これらは「ここまで我慢しなければ受診してはいけない」という線引きではありません。水分が取れないとき、つらいときは、この目安より早くても受診してください。母健連絡カードも、この基準に達していなければ書けない、というものではありません。
「無理をすると流産する」は本当か——流産と早産を分けて考える
妊娠初期に体調がつらいとき、「無理をしたら流産してしまうのでは」と不安になる方が多くいらっしゃいます。ここは、流産と早産を分けて考える必要があります。
流産について。日本産科婦人科学会は、妊娠12週未満の流産(早期流産)で最も多い原因は赤ちゃんの染色体の異常であり、流産した組織を調べると約80%に異常を認めたという報告があると説明しています。「安静にしたり、くすりを投与したからといって、流産を予防する効果はなさそうです」とも書かれています。同時に学会は「それでも重労働や長時間労働は避けた方が良いと思われます」とも書いています。つまり「あのとき無理をしたから流産した」と、ご自身を責める必要はありません。
早産については、同じ学会が「重労働や長時間労働、ストレスのかかる仕事は、早産のリスクを高める」と明記しています。働き方を整えることには意味があります。
流産の責任をご自身に求める必要はないこと、そのうえで働き方を守ることには意味があること——この2つは矛盾しません。母健連絡カードは、後者のための道具です。
相談窓口・情報
| 窓口 | 内容 |
|---|---|
| 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) | 母性健康管理の措置が講じられないときの相談。紛争解決の援助(労働局長による助言・指導・勧告)と調停(機会均等調停会議)の申出先でもあります。受付は平日8時30分〜17時15分 |
| 働く女性の心とからだの応援サイト(厚生労働省) | 母性健康管理の情報と、母健連絡カードの様式のダウンロード |
| 藤東クリニック | 妊婦健診。必要な方には母健連絡カードを発行しています(健診のときでも、つらくて受診されたときでも、お声がけください) |
よくある質問(FAQ)
Q1. 母健連絡カードは、どうやってもらえますか?
妊婦健診や産後の診察のときはもちろん、つらくて受診されたときでも構いません。医師や助産師に「カードを書いてください」とお伝えください。医師が必要と判断した場合に発行します。様式は厚生労働省のサイトからダウンロードでき、母子健康手帳に掲載されている場合もあります。
Q2. 診断書も一緒に出す必要がありますか?
会社に母性健康管理の措置を求める場面では、母健連絡カードは診断書と同等に扱われるため、診断書を別に出す必要はありません。会社の休職制度や保険の手続きなど、他の制度で必要な書類については、それぞれの窓口にご確認ください。
Q3. カードがないと、会社は何もしてくれませんか?
いいえ。厚生労働省は、カードの提出がない場合でも、本人の申し出からその内容が明らかであれば、会社は必要な措置を講じる必要があるとしています。カードは、内容を正確に伝えるための道具です。
Q4. 健診で休んだ分の給料は出ますか?
法律に定めがありません。有給にするか無給にするかは会社の規定によりますので、就業規則をご確認ください。ただし、会社が一方的に「年次有給休暇を使いなさい」と指示することは認められていません。ご自身の希望で年次有給休暇を使うことは自由です。
Q5. パートや派遣でも使えますか?
使えます。母性健康管理の措置は就業形態を問わず、パートタイム・契約社員・派遣でも対象で、勤続年数の条件もありません。派遣で働いている場合は、派遣元と派遣先の両方に措置の義務があります。
Q6. カードの文書料はいくらですか?
国の資料に費用の定めがないため、医療機関によって異なります。受診される医療機関にご確認ください。
Q7. 産後や、流産・死産のあとも使えますか?
使えます。産後1年以内、また流産・死産(人工妊娠中絶を含む)のあと1年以内であれば、妊娠の週数を問わず母性健康管理の措置の対象です。
Q8. 措置をお願いしたら、職場で不利に扱われませんか?
措置を求めたことや利用したことを理由に、解雇や不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。妊娠中や産後1年以内になされた解雇は、会社が別の理由だと証明しないかぎり原則として無効です。困ったときは、都道府県労働局にご相談ください。
まとめ|1枚のカードが、あなたと会社をつなぐ
- 2023年度、男女雇用機会均等法に関する相談は 19,482件。妊娠・出産に関わる相談が、その大きな部分を占めています
- 会社には、健診を受ける時間を確保する義務と、医師の指導を守れるようにする義務があります。ただし賃金の扱いは会社の規定によります
- 母健連絡カードは、医師が症状と必要な措置を書いて会社に伝える書類です。会社に措置を求めるときは診断書と同等に扱われます
- カードがなくても、申し出て内容が明らかであれば、会社には措置の義務があります
- つわりは、体重が1週間に2kg前後減った、尿の検査でケトン体が出た、妊娠12週を過ぎても症状が続く、といったときに受診を。つらいときは、それより早くても構いません
我慢は、あなたも赤ちゃんも守ってくれません。つらさを言葉にするのが難しいときこそ、医師に書いてもらうという方法があります。藤東クリニックでも、必要な方には母健連絡カードをお書きしていますので、健診のときでも、つらくて受診されたときでも、遠慮なくお声がけください。
出典:令和7年版 厚生労働白書(厚生労働省)第2部第2章、図表2-1-1(p.194)/母性健康管理の指針(平成9年労働省告示第105号。母健連絡カードの別記様式)/厚生労働省「令和7年度の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)における雇用均等関係法令の施行状況について」/厚生労働省「働く女性の母性健康管理のために」(令和8年1月)/厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カード」(2021年7月1日適用様式)/厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度)/厚生労働省「母性健康管理に関する用語辞典」/こども家庭庁「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果」(2026年4月8日公表)/日本産科婦人科学会