不妊治療と仕事は両立できない? 「4人に1人が諦める」現実と、あなたを守る制度・職場への伝え方
「通院の予定が読めなくて、職場に迷惑をかけてしまう」「治療のこと、誰にも言えない」——不妊治療と仕事の両立に悩む声を、診察室で毎日のように耳にします。
広島県・藤東クリニックが、国の公式レポート「令和7年版 厚生労働白書」と最新の調査データをもとに、両立を支える制度と実践的なコツをわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 不妊治療がどれほど「身近なこと」なのかを示すデータ
- 4人に1人が仕事か治療を諦めているという調査結果
- 治療に理解のある会社を見分ける「くるみんプラス」
- 無料で使える国の3つのサポートツール
- 職場に伝えるときの、そのまま使える「ひと言」
不妊治療は「特別なこと」ではありません
数字を見ると、イメージが変わるはずです。
| データ | 数値 | 言い換えると |
|---|---|---|
| 不妊の検査・治療を経験した夫婦 | 22.7% | 約4.4組に1組 |
| 体外受精で生まれた赤ちゃん(2022年) | 77,206人 | 出生児の約10%=10人に1人 |
- 30人のクラスなら、3人は体外受精で生まれている計算です
- 結婚5年未満の夫婦でも、6.7%が検査や治療を受けています
- 「自分だけかもしれない」という孤独感は、データの上では事実と異なります
4人に1人が「仕事か治療」を諦めている現実
厚生労働省の調査(令和5年度)では、働きながら治療をした人のうち、両立できた人は半分強にとどまりました。
| 両立の状況 | 割合 |
|---|---|
| 両立している・していた | 55.3% |
| 両立できず仕事を辞めた | 10.9% |
| 両立できず治療をやめた | 7.8% |
| 両立できず雇用形態を変えた | 7.4% |
諦めた人の合計は 26.1%、約4人に1人。女性だけでなく男性も約3割が両立を諦めたと回答しており、男女共通の課題です。
なぜ両立はこんなに難しいの?
産婦人科医の視点から、理由を整理します。
通院日が前もって決められない
- 排卵日は月経周期やホルモンの状態で変わります
- 「毎月第2水曜に受診」ではなく「卵胞の育ちを見て、明後日また来てください」という進み方になります
- 体外受精の採卵日は、2〜3日前にようやく確定することもあります
通院回数が多い
| 治療のステップ | 通院の目安 |
|---|---|
| タイミング法 | 月2〜3回 |
| 体外受精 | 月5回以上になることも |
心と体の負担が重なる
- ホルモン注射によるお腹の張りや気分の波
- 「今回もだめだったら」という精神的なプレッシャー
プライベートなことなので、職場に説明しづらい
会社選びの目印「くるみんプラス」
転職や就職を考えている方は、このマークを覚えておいてください。
- 「くるみん」は子育て支援に積極的な企業を厚生労働大臣が認定するマークです
- 認定企業は全国 4,749社(うち、より基準の高いプラチナくるみんが 676社)
- 2022年4月から、不妊治療と仕事の両立に取り組む優良企業に「プラス」認定が付くようになりました
- 2025年4月には認定基準が新しくなり、制度はさらに強化されています
- 企業の実際の取組みは「両立支援のひろば」(https://ryouritsu.mhlw.go.jp/)で検索できます
求人票やコーポレートサイトで「くるみんプラス」を見つけたら、治療に理解のある会社のサインです。
無料で使える3つのサポートツール
厚生労働省が、立場別に3つの冊子を無料で公開しています。
| ツール | 誰のためのもの? |
|---|---|
| 職場づくりのためのマニュアル | 企業・人事担当者 |
| 両立サポートハンドブック | 上司・同僚 |
| 両立支援ガイドブック | 治療を受けるあなた自身 |
- いちばんのおすすめは本人向けの「両立支援ガイドブック」です
- 制度の使い方や職場との調整のヒントがまとまっています
- 上司にそっと渡すだけでも、理解がぐっと進みます
- 不妊治療のための休暇制度づくりを後押しする、企業向けの助成金も用意されています。「こういう助成金があるそうですよ」と人事に伝えるのも一つの方法です
職場への伝え方——全部を話す必要はありません
診察室でいつもお伝えしている、実践的なコツです。
- 病名や治療の内容まで説明する義務はありません
- 伝える相手は、信頼できる上司一人だけでも構いません
- そのまま使える「ひと言」がこちらです
「通院が必要な治療をしています。日程が直前に決まることがあります」
働き方の面では、次の制度が使えないか確認してみてください。
- 半日休暇・時間単位の有給休暇
- フレックスタイム
- テレワーク
flowchart TD
A["😔 一人で抱え込んでいる<br/>通院日が読めない・職場に言いづらい"]:::worry
A --> B["STEP 1 知る"]:::step
B --> B1["治療経験は4.4組に1組<br/>10人に1人が体外受精で誕生"]:::detail
B1 --> C["STEP 2 伝える"]:::step
C --> C1["伝えるのは上司一人でもOK<br/>『通院が必要な治療をしています』"]:::detail
C1 --> D["STEP 3 制度を使う"]:::step
D --> D1["両立支援ガイドブック<br/>半日休暇・フレックス・テレワーク"]:::detail
D1 --> E["🌸 仕事も治療も諦めない"]:::goal
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お金と心のサポートも、以前より充実しています
- 2022年4月から不妊治療に保険が適用され、自己負担は原則3割になりました
- タイミング法から体外受精・顕微授精まで、幅広い治療が対象です(年齢や回数に条件があります。詳しくは受診時にご確認ください)
- 心がつらいときは、厚生労働省のメンタルヘルスサイト「こころの耳」も利用できます
- 職場に言えない悩みこそ、医師や看護師など医療者に話してください
よくある質問
Q1. パートや契約社員でも、支援は受けられますか?
サポートツールや相談窓口は、雇用形態に関係なくすべての働く人が対象です。休暇制度の有無は会社によって異なるため、就業規則の確認から始めてみてください。
Q2. 職場に「不妊治療」と伝えたくありません。隠してもいいですか?
病名を伝える義務はありません。「通院が必要な治療をしています」だけで十分ですし、誰にも伝えず有給休暇の範囲で通院する選択もあります。無理のない形を一緒に考えましょう。
Q3. 治療と仕事、どちらを優先すべきか迷っています。
どちらかを選ぶ前に、使える制度を全部並べてみることをおすすめします。半日休暇やテレワークを組み合わせるだけで続けられるケースを、私たちは何度も見てきました。一人で決めず、医療者にもご相談ください。
まとめ:今日の3つのポイント
| # | ポイント | 数字・キーワード |
|---|---|---|
| 1 | 不妊治療は身近なこと。あなた一人ではない | 4.4組に1組・10人に1人 |
| 2 | 諦める前に、制度という味方がいる | くるみんプラス・両立支援ガイドブック |
| 3 | 職場には全部話さなくていい | 「通院が必要な治療をしています」 |
- 両立できず諦めた人は約4人に1人。それは意思の弱さではなく、支えの情報が届いていないだけかもしれません
- 制度は「知って、使う」ことで初めて力になります
- 藤東クリニックでは不妊治療のご相談をお受けしています。仕事との両立の悩みも、どうぞ一緒にお聞かせください
出典:令和7年版 厚生労働白書(厚生労働省)/不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査(厚生労働省・令和5年度)/第16回出生動向基本調査(国立社会保障・人口問題研究所)/ARTデータ(日本産科婦人科学会)