月経前症候群

PMSとは月経の3〜10日前に身体や心の調子が悪くなり、月経の始まりとともに自然に軽快するいろいろな症状の集まりのことをいいます。

むくみ、ニキビ、乳房や下腹部の張り、肌荒れ、腹部の激しい痛みなど身体の不調。そしてイライラ、無気力、憂うつ、倦怠感、不眠などの心の不調。あなたにこんな症状はありませんか?実は、ほとんどの女性の悩みなのです。
月経は、約1カ月の周期で子宮内膜が出血をともなってはがれ落ち、体外へ排出されることです。さまざまなつらい症状は、周期的なホルモンの変化により、主に月経前と月経中にあらわれ、ほとんどの女性がこれらの症状を感じています。そして、多くの女性が、ガマンするものと、ひとりで耐えているのが現実です。

日常生活に支障をきたすような症状は、治療の対象です。
そして、ひとりで悩んだりガマンしないで、パートナードクターと一緒に自分に合った対処法を見つけてください。

月経前症候群(PMS)とは何ですか?

PMSとは Premenstrual Syndromeの略で、月経の3〜10日前に身体や心の調子が悪くなり、月経の始まりとともに自然に軽快するいろいろな症状の集まりのことをいいます。
症状は、おなかや乳房の張り・痛みのような身体の症状から、イライラや憂うつなど心の不調があらわれることもあります。PMSと比べてより症状が重く、特に精神的な症状が強いものを、月経前不快気分障害(PMDD)といいます。PMSに悩む女性の3〜5%がPMDDとみられ、強い不安や翌うつ感、怒り、悲しみ、絶望感、緊張感などがあらわれます。

PMSにはどのような症状が現れますか?

身体的な症状と精神的な症状とに分けられます。

  • 下腹部膨満感
  • 下腹痛
  • 頭痛
  • 乳房痛、乳房が張る
  • 腰痛
  • 関節痛
  • むくみ、体重増加、脚が重い
  • にきび
  • めまい
  • 食欲亢進
  • 便秘あるいは下痢
  • 悪心、動悸など
  • 怒りやすい、反感、闘争的
  • ゆううつ
  • 緊張
  • 判断力低下、不決断
  • 無気力
  • 孤独感
  • 疲れやすい
  • 不眠
  • パニック
  • 妄想症
  • 集中力低下、気力が集中できない
  • 涙もろい

これらの身体的な症状や精神的な症状は単に本人がつらいだけでなく、社会的なトラブルの原因になることがあります。例えば、PMSのため仕事の効率が下がったり、休んだりする人がいます。また、母親や夫にあたりちらしたり、口論したり、暴言をはいたりすることもあります。あるいは友人に決断を任せたり、「ノーと言えない」などの状態になる人もいます。
PMSには以上のようないろいろな症状が単一で出ることは少なく、身体的な症状と精神的な症状が複合して出る場合が多いのです。

PMSの原因

PMSの原因にはいろいろな説がありますが、現在まだはっきりと解明されてはいません。
その中で有力な説を以下に紹介します。

  • 排卵した後に卵巣から分泌される黄体ホルモンという女性ホルモンにより体に水分がたまりやすくなり、その水分貯留がいろいろな症状を出す原因となる。
  • 脳の中で分泌されモルヒネ様の作用があるβーエンドルフィンという物質が月経の前になると急激に低下する結果、うつ状態になりやすくなる。
  • 脳内に神経刺激を伝達する作用をもつセロトニンという物質があります。セロトニンは神経線維の末端から分泌され、神経情報を伝達する役割をになっています。
  • 月経の前にはこのセロトニンが低下することが知られています。この月経前のセロトニンの低下がいろいろネガティブな精神症状が出る原因と考えられており最近は有力視されている説の一つです。

以上のようにPMSの原因はいろいろあげられていますが、まだ完全に解明されているわけではありません。

PMSを見つける検査

PMSは、問診、血液検査、尿検査、内診や超音波検査により容易に診断できます。

問診は、事前に記入した問診表をもとに行う面談で、今の身体の状態や月経の様子・症状などを詳しく聞き、どんな検査が必要かを決めます。心配に思っていることはどんなことでも伝え、わからないことは質問したりしましょう。

必要に応じて、血液検査や尿検査をします。ホルモンの状態や貧血、排卵の有無、肝機能など、身体について多くの情報が得られる検査です。

内診は腟の中に指を入れて行い、子宮の向き、大きさ、形などを調べます。子宮を動かすことで、癒着や子宮に感じる痛み等も分かる重要な診察です。腟に指を入れることが難しい場合は、直腸診と言って肛門に指を入れて診察を行います。

超音波検査には腹部に超音波発信器を当てて検査する腹部エコーと、腟の中に発信器を入れて検査する経腟エコーがあります。経腟エコーは指よりも少し太めの発信器を直接子宮に当てて検査を行いますが、経腟分娩の経験のある方は痛みを感じることなく行えます。性交渉の経験のない方などは、腹部からの経腹エコーを行います。

PMSはなぜ治療した方がよいのでしょう?

PMSのある女性は、本人はもちろんつらいのですが、家族や職場の人など周囲にも少なからず好ましくない影響を与えます。自分がイライラしていたり、集中力が落ちると同僚が不必要な気をつかいます。仕事上の効率も低下します。このようなことは本人がわかっていても、その気分をコントロールできにくいのがPMSなのです。ですから適切な治療をして症状を改善することはもちろん、周囲の人との人間関係もスムーズにさせることが必要なのです。実際、PMSを治療することで、仕事が順調になったと話される方がたくさんいらっしゃいます。

PMSの治療

下腹部痛や腰痛、頭痛などの痛みの軽減に使います。早めの服用が効果的です。

ピルは女性ホルモンのうち少量の卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲスチン)を含んだ合剤です。ピルを服用するとその間、排卵がストップし、日頃卵巣から分泌される女性ホルモンのレベルが低下します。ピルがPMSの全ての人に、あるいはPMSの全ての症状を改善するものではありません。しかしピルを服用することによりPMSの特に身体症状のかなりの部分が軽減あるいは消失します。まず試みてもよい一つの方法です。

特に選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI
PMSの原因の一つにセロトニンの活性の低下があげられています。このセロトニン作用の低下がPMSの抑うつや不安、攻撃性、集中力の低下などの精神症状の原因と深くかかわっているという考えかたから、セロトニンの活性化をはかりPMSの改善をはかろうとするものです。最近は各種のSSRIが開発され、PMSに対して有効であることが確認されています。またこのSSRIは従来の抗うつ剤に比較し、副作用が少なく、服用しやすいことも利点です。抑うつなどの精神的症状が強い人には向いています。

イライラ、憂うつ、不眠、不安感など、精神的な症状が強い場合に使います。

漢方薬、利尿剤、ビタミン薬なども症状に合わせて使います。

PMSの上手な付き合い方

PMSを治療する上で大切なポイントの一つは、患者さん自身がPMSのことをよく知るということです。自分を悩ませていたいろいろな症状が月経の1〜2週間前から始まり、月経の開始とともに軽減、消失するという事実を見きわめ、決して過剰に思い込まないことです。これらの症状がPMSであると自ら認知するだけでも安心できます。さらにPMSについての正確な情報が得られれば、それだけで自分の身体的なあるいは精神的な不安を軽減することに役立ちます。

また、暮らしの中のちょっとした工夫と習慣が、月経にともなうつらさをやわらげることにつながります。以下のことに気をつけ、生活習慣を見直し、日頃から自分にあったセルフケアで症状の軽減をはかりましょう。

  • バランスのとれた食事
  • 身体を動かす
  • リラクゼーション

日頃から決まった時間にきちんと食べることは大切ですが、特に症状が出る時期はビタミンとミネラルを多く含む豆類や海草、野菜をたくさん取りましょう。ひかえたほうがいいものは、甘いもの、塩分や脂の多いもの、インスタント食品、カフェイン、アルコール類などです。

ウォーキングやエアロビクス、水泳などの全身運動は血行を良くし、気分転換にも役立ちます。でも、つらい時期には無理に動かすのではなく、手軽に楽しめる散歩などから始めましょう。ストレッチやヨガなど自分に合った運動を日頃から続けていると、より効果的です。

つらい時こそ無理をしないで、自分をいたわってあげましょう。ハーブティーやアロマテラピーなど植物の力でくつろぐのも良い方法です。特にアロマオイルは香りにひたるだけではなく、マッサージや入浴などにも幅広く楽しめます。

PMSで悩んでいる人はあなただけではありません。症状の強弱はありますが、軽症例も入れればほとんどの人はPMSあるいはそれに近い症状があります。そして、PMSの被害者はあなただけではありません。そんなつらさに1人で悩んだりガマンしたりしないで、専門家に相談してみましょう。

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