HTLV-1(human T-cell leukemia virus type 1)から赤ちゃんを守りましょう。

藤東クリニックでは、妊娠初期に全員に対し、母体血液のHTLV-1抗体を測定しています。

  • ATL(成人T細胞白血病)は、HTLV-1というウイルスによっておこる病気です。
  • お母さんがこのウイルスを持っていると、授乳などによって赤ちゃんに感染する可能性があります。
  • 妊婦さんがウイルスを持っているかどうかは、血液検査でわかります。
  • このウイルスは、エイズとまったく関係がありません。

ATLとHTLV-I のQ&A

平成21年度厚生労働科学研究「HTLV-Iの母子感染予防に関する研究」
(主任研究者:齋藤滋)報告書より抜粋

ATLとHTLV-I の基本的知識について

ATL、HTLV-I とは?

ATLは成人T細胞白血病(Adult T cell Leukemia)の略称で、白血病だけでなく、リンパ腫(Lymphoma)の形をとることもあるため,ATLL(成人T細胞白血病・リンパ腫)と呼ぶこともあります。HTLV-I (human T-cell leukemia virus type I)はATLをおこすウイルスの名前です。HTLV-I は他にHAM(HTLV-I関連脊髄症)などのHTLV-I 関連疾患を引きおこすこともあります。ただし、ATLやHAMを発症するのは感染者のごく一部であり、またすぐに発症するわけでもありません。

HTLV-I の感染経路は?

HTLV-I の主な感染経路は、主に母親から子供への母乳を介した母子感染です。その他性行為による男性から女性への感染があることが知られています。キスや唾液でうつることは、まずありません。また輸血による感染も検査を行っていますので、現在では感染の心配はありません。

キャリアとは?

HTLV-I を持っていて、ATLやHAMなどの病気を発病していない人をHTLV-I のキャリアと呼びます。HTLV-I に感染するとウイルスは一生体の中にとどまり、持続感染状態となります。

キャリアだと言われました。どうしたらよいでしょうか?

今のところATLやHAMの発症を予防する方法はありません。また、特別な健康管理の方法も現在のところありません。しかし、母子感染については、母乳による感染が最も関与していると指摘されていることから、かなりの場合「親の意志」で予防できます。生まれてくる自分の子どもにできるだけウイルスをうつさないように、栄養方法を選んでいただきたいと思います。

キャリアからのATL発症率は?

キャリアからのATL発症は40歳を越えるまではほとんどありません。40 歳を過ぎると年間キャリア1,000人に1人の割合で発症します。生涯発症率は約5%と言われています。

予防接種はありませんか?

感染を防ぐために有効な予防接種は今のところ開発されていません。すでに感染した人に有効な手段もありません。

ATLの治療は?

白血病の治療を行いますが、ATLの治療は白血病の中でも難しい部類に入ります。

ATL関連疾患 HAMについて

HAMとは?

HAM(HTLV-I Associated Myelopathy)はHTLV-I 関連脊髄症の略称です。
HTLV-I が関係して下肢の麻痺と排尿障害が徐々に起こってくる病気です。
平成20年度より厚生労働省難病対象疾患に指定されました。

キャリアからのHAMの発症率は?

30〜50歳代の発症が多く1年間でキャリア3万人に1人の割合で発症するといわれています。ATLに比べて発症率は1/30とはるかに低い割合です。

HAMの治療は?

ステロイドホルモン剤やインターフェロンなどの治療が効果を示す例が多くあります。また、この病気が直接の死亡原因になることはほとんどないとの指摘があります。

母子感染と児の栄養方法について

母乳を与えなければ、HTLV-Iの母子感染は防げますか?

母乳を与えなければ母子感染率を約1/6に減少できます。しかし、人工栄養を行った場合でも約2-3%程度感染がおこります。残念ながらこの原因は明らかになっていません。

免疫が心配なので、初乳だけでも与えることはできませんか?

3カ月以内短期母乳保育での母子感染率は厚生労働科研研究班のデータでは1.9%ですが、初乳のみのデータはありません。少なくともこれ以上になることはないと思います。免疫のみの心配であれば冷凍母乳にする方法もあります。

短期母乳の期間とその安全性は?

短期母乳の目安は3カ月としています。その理由は、3カ月までの母乳哺育での感染率は1.9%でしたが、4カ月以上の母乳哺育での感染率は17.7%に増加するためです。しかし、そのメカニズムについては今のところ解明されておらず、十分な症例数でないため学問的には推奨できる予防法ではありません。さまざまな理由で母乳を選択せざるを得ない場合でも、できるだけ感染率が低い方法を考える必要があります。

冷凍母乳による母子感染の予防方法は?

母乳を24時間冷凍し(家庭用冷蔵庫で可)、解凍後37℃に温めて哺乳瓶で投与する方法でも母子感染予防は可能であることがこれまでの研究から示唆されています。母乳中に含まれる免疫物質を赤ちゃんに投与できる利点がありますが、直接授乳できないことは人工栄養と同じという欠点もあります。十分な症例数ではないため学問的に推奨できる予防法ではありませんが、未熟児などの特殊な場合で、母乳も与えたいが感染もできるだけさせたくない時の選択肢になります。

HTLV‐Iの検査について

なぜ、妊婦の検査をするのでしょうか?

将来ATLを発症する危険性があるのは、HTLV-I が子どもの時に感染した場合です。輸血による感染がほとんどなくなった現在、子どもへの感染は主として母乳によるものです。キャリアの母親が母乳哺育をすると4〜5人に1人の子どもは感染します。人工栄養ではこの危険性を30-40 人に1人にできます。従って妊婦健診等の場で血液検査を受け、キャリア妊婦の方には、適当な方法について、「親の意志」で決定してもらうことによって、その子どものキャリア化を防ぐことができる可能性があります。キャリアにならなければ将来のATLになる危険性をゼロにすることができ、また、その子どもからその次の世代へのウイルスの伝達も防ぐことができます。

HTLV-1抗体検査で陽性、陰性を判定する手順は?

今のところ、単一のHTLV-I 抗体検査で本ウイルス保有者を確実に選び出す方法は確立されていません。実際には二段階に分けて検査を行うことが多いようです。第一段階の検査で抗体陽性が疑われる検体を広く選び出します。このため、多少、本当はHTLV-I 抗体陽性ではないのにその検査では陽性とでてしまうこと(偽陽性)があります。偽陽性を除くため第二段階目の検査を実施します。しかし、あらゆる検査を実施しても陽性か陰性か明確にならない場合があります。

妊娠のいつ検査するのでしょうか?

妊娠初期の妊婦さんは精神状態が安定していないこともあり、妊娠10週以降から妊娠30週頃までに検査することをおすすめします。分娩直前に検査しますと十分な説明ができない可能性があります。

ウイルスに感染しているかどうか調べて欲しいのですが?

ATLやHAMの症状が全くなければ、母子感染予防を除いて、現在のところ、感染していることを知る利益はほとんどありません。一方、陽性であった場合の精神的負担はかなり大きなものです。このことを十分理解した上で、なおかつ検査を希望されるのであればかかりつけの医師又は保健所に相談してください。

妊娠するたびに検査は必要ですか?

前回妊娠時の検査が陰性でも、夫婦間感染の可能性が全くないわけではないので、妊娠ごとに検査を受けることが望まれます。陽性者についても念のため検査を受けることが望まれます。

キャリアの日常生活について

このウイルスは、職場・学校・共同浴場・プールなどでうつりますか?

このウイルスが人から人にうつるためには、キャリアの持つHTLV-I 感染細胞が生きたまま大量に人の体にはいることが必要です。単なる共同生活や、風呂場・プールでの感染はありません。理髪店のタオル・剃刀・バリカンなどについても同様です。

キャリアの健康管理について

特別な健康管理の方法はありません。住民健診、職場健診などがあれば必ず受診するようにしてください。

子どもがキャリアであると分かったとき

キャリアとなった子どもの育児上の注意点について?

特別なものはありません。ウイルスを持っていることをのぞいて普通のお子さんと同じです。ただし、年長児では極めてまれですがHAMをおこすことがありますので、歩き方がだんだんおかしくなるなど、進行性の歩行障害の症状があれば病院を受診してください。

上の子どもがキャリアでした。兄弟間で感染はおこりませんか?

兄弟の間ではまず感染しません。

妊娠中のトラブル

つわり

つわりは、50〜80%の妊婦さんにみられます。

HTLV-1

HTLV-1(human T-cell leukemia virus type 1)から赤ちゃんを守りましょう。

トキソプラズマ

妊娠中にトキソプラズマに初めて感染すると胎児も感染する場合があります。

リンゴ病

妊娠中にパルボウイルスB19に感染すると、胎盤を通過して胎児に感染する場合があります。

B群溶連菌

この菌は妊婦さんの約20%に認められる常在菌で、妊婦さん自身には何の病害も示しません。

クラミジア

統計では、妊婦さんの3〜5%の方がクラミジアを持っています。

妊娠糖尿病

GDM)とは、妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病にいたっていない耐糖能異常です。