なんだか気持ちが晴れない…その不調、コロナ禍の「孤独」が原因かもしれません
「最近、マスクを着けない生活にも慣れて、日常が戻ってきたように感じる」
「でもその一方で、理由もなくふと寂しくなったり、気持ちが完全に元に戻らないと感じたりする…」
もし、あなたがそう感じているなら、それは決して特別なことではありません。この感覚は、コロナ禍という未曾有の経験が私たちの心に残した、無視できないサインなのかもしれません。
藤東クリニックのYouTubeチャンネル「藤東クリニック インサイト」では、動画シリーズ『現代女性のこころの健康を守るために知っておきたいこと』の第3回として、「【コロナ禍と孤独】私たちの心はどう変わった?」を公開しました。この記事では、動画の内容を基に、最新のデータを用いて現代女性が直面する心の変化と、その向き合い方について解説します。
データが示す、コロナ禍がもたらした「不安」と「孤独」
厚生労働省が公表した「令和6年版厚生労働白書」によると、私たちの生活には大きな変化がありました。
- 急激なデジタル化: スマートフォンの世帯保有率は9割を超え、SNSはあらゆる年代に浸透しました。これにより、人との繋がり方や生活様式が大きく変わりました。
- 増大した不安とストレス: 新型コロナの流行によって、「環境の変化による不安やストレスが増加した」と答えた人は、全体の約半数(48.2%)にものぼります。 特に、学生生活や進路、就職活動に関する不安は55.3%と、最も高くなっています。
そして、今回の大きなテーマである「孤独」については、さらに深刻なデータが示されています。
孤独感を「時々ある」または「しばしば・常にある」と感じている人を合わせると、全体の約20%に達します。
これは、日本人の5人に1人が、程度の差こそあれ孤独を感じながら生活しているという現実を浮き彫りにしています。 あなたが感じている寂しさは、決してあなた一人のものではないのです。
なぜ、女性はより強く影響を受けたのか?
コロナ禍という同じ状況下でも、心の不調を感じる割合は、男性よりも女性の方が一貫して高いというデータがあります。 「神経過敏に感じた」「気分が落ち込んだ」といった不調を訴える女性が多かった背景には、いくつかの社会的な要因が考えられます。
- 経済的な打撃: 飲食業や宿泊業など、コロナ禍で大きな影響を受けた業種は、非正規で働く女性の割合が高い職場でした。
- 家事・育児負担の偏り: 学校の休校などにより、家事や育児の負担がこれまで以上に女性に偏りがちになった家庭も少なくありませんでした。
こうした強いストレスは、自律神経やホルモンバランスの乱れに直結します。実際にクリニックでは、この時期に月経不順やPMS(月経前症候群)、更年期症状の悪化などを訴えて来院される方が明らかに増えました。
孤独のきっかけは、誰の身にも起こりうるライフイベント
では、どのような時に人は孤独を感じやすくなるのでしょうか。調査によると、孤独感に影響を与えた出来事として、以下のようなものが挙げられています。
- 家族との死別(23.3%)
- 一人暮らし(19.5%)
- 心身の重大なトラブル(病気や怪我など)(15.5%)
- 転校・転職・離職(14.0%)
- いじめやハラスメントなど(12.9%)
これらはすべて、私たちの人生で誰にでも起こりうることです。 孤独は、人生のあらゆる段階で、すぐ隣にある普遍的な問題なのです。
孤独とどう向き合う?大切なのは「一人で抱え込まないこと」
孤独な状態が続くと、「寂しい」という気持ちだけでなく、うつ病などの心の病や、免疫力の低下、心臓病といった身体的な健康にも深刻な影響を及ぼすことが分かっています。 これは、社会全体で取り組むべき健康問題です。
では、もし今あなたが辛い気持ちを抱えているなら、どうすればよいのでしょうか。
一番大切なのは、たった一つ。「一人で抱え込まないこと」です。
- 自分の気持ちを認める: まずは「今、自分は寂しいんだな」「辛いんだな」と、ご自身の気持ちを否定せずに受け止めてあげることが第一歩です。
- 小さな繋がりを持つ: 「いつも行くお店の店員さんに『ありがとう』と伝える」「近所を5分だけ散歩してみる」など、本当に些細なことで構いません。誰かや社会と繋がるきっかけを持つことで、心は少し軽くなるはずです。
- 専門家を頼る: 私たち産婦人科医を、もっと気軽に頼ってください。 産婦人科は、女性の生涯にわたる健康のパートナーです。 生理や更年期の悩みと同じように、「気分が晴れない」「理由もなく寂しい」といった心の不調も、ぜひ私たちにご相談ください。
ひとりで悩まず、まずは相談してください
コロナ禍を経て、多くの人が不安や孤独を感じやすくなっています。それは決して特別なことでも、恥ずかしいことでもありません。
もしあなたが今、辛い気持ちを抱えているなら、どうか一人で耐えようとしないでください。 ご家族、ご友人、そして私たちのような専門家は、いつでもあなたの味方です。
藤東クリニックは、体や心のどんな小さな変化でも、安心して相談できる場所でありたいと願っています。国や自治体にも専門の相談窓口はたくさんあります。あなたに合った話しやすい場所を見つけて、ぜひその一歩を踏み出してみてください。
より詳しい解説は、ぜひ動画本編でご覧ください。