あなたの心を蝕む「社会的バリア」とは?産婦人科医が本気で伝えたい、自分を守るための知識

【産婦人科医が解説】あなたの「生きづらさ」、社会の“見えない壁”が原因かも?心が軽くなるヒント

「SNSでの心ない言葉に傷ついてしまう」
「理由もなく孤独を感じ、気分が落ち込む」
「周りと比べて、自分がダメな人間のように思える」

現代社会を生きる中で、このような「生きづらさ」を感じている女性は少なくありません。そのつらい気持ち、ご自身の性格や心の弱さが原因だと思っていませんか?

もし、その不調の原因があなた自身ではなく、私たちを取り巻く社会に潜む「見えない壁」にあるとしたら…。

当院のYouTubeチャンネル「藤東クリニック インサイト」で公開した動画シリーズ最終回では、こころの健康を脅かす「社会的障壁」をテーマに、産婦人科医の視点から、誰もが健やかに暮らすためのヒントを提言しています。この記事では、動画の要点を分かりやすくご紹介します。

その「困難」、あなたのせいじゃない。― “社会モデル”という考え方

動画では、まず「障害」に対する考え方をアップデートする「社会モデル」という視点を紹介しています。

【イラストで解説】車いすと階段
階段の前で困っている車いすの人がいる時、「車いすだから上がれない」と個人に原因があるように考えるのが「個人モデル」です。
一方で、そこにエレベーターを設置すれば、その人は問題なく上がれます。これは「階段しかない」という社会環境こそが障壁であり、それを取り除くことで困難は解消される、という考え方。これが「社会モデル」です。

この「社会モデル」で私たちの日常を見渡すと、多くの「社会的障壁」が見えてきます。

  • SNSでの誹謗中傷
    動画で紹介された2022年の調査によると、SNS利用者の65.0%が誹謗中傷の投稿を目にしたことがあると回答しています。
  • 孤独・孤立の問題
    2023年の調査では、成人の39.3%が「孤独を感じることがある」と回答。特に20代女性では8.7%もの人が「しばしば・常にある」と強い孤独感を抱えています。

これらは個人の問題だけでなく、社会の仕組みが生み出している「壁」なのです。

いじめ、DV、オーバードーズ…私たちを追い詰める「見えない壁」

こころの不調の場合、この壁は目に見えにくく、知らず知らずのうちに私たちを追い詰めます。動画では、その深刻な実態がデータと共に語られました。

  • ネットいじめ
    匿名で攻撃でき、情報が瞬時に拡散するインターネットの特性は、いじめをより陰湿にしています。2022年度の「重大事態」の発生件数は過去最多の923件にのぼり、そのうち約67%は精神的な被害でした。
  • 配偶者からの暴力(DV)
    家庭という密室で起こるDV。「誰にも相談できない」「自分が悪いのかも」と思わせる社会の無理解や偏見も、被害者を孤立させる「見えない壁」です。被害経験者の26.2%が「自分に自信がなくなった」と回答しています。
  • 市販薬のオーバードーズ
    2022年、薬物依存で治療を受けた10代のうち65.2%の主たる薬物が市販薬でした。 その背景には、家庭や学校に安心できる居場所を見つけられない若者たちの孤独があります。これも、若者を受け止めるセーフティネットが不足しているという社会構造の「壁」と言えるでしょう。

明日からできる!「見えない壁」を乗り越えるための3つのアクション

社会構造の問題と聞くと、あまりに大きすぎて無力感を覚えてしまうかもしれません。しかし、その社会を構成しているのは私たち一人ひとりです。動画では、誰でも今日から始められる具体的なアクションを3つのステップで提案しています。

Step 1: 知ること、そして広めること

知識は、あなたと大切な人を守る武器になります。例えば、SNSの危険性や、若者の間で誤った情報が広がる大麻の本当の有害性について、まずは正しく知ること。そして、「ネットで悪口を見るのは嫌だよね」といった何気ない会話で、その意識を家族や友人と共有することが、社会の意識を変える第一歩になります。

Step 2: 気づき、声をかけ、つなげること

あなたの周りに、いつもと様子が違う人はいませんか?「元気ないね」その一言が、孤立した心を救うことがあります。もし深刻な悩みを打ち明けられたら、一人で抱え込まず、専門の相談窓口につなぐことが大切です。東京都の「きみまも@歌舞伎町」のように、自治体が運営する無料の相談窓口も全国にあります。お住まいの地域の相談窓口を知っておくだけでも、いざという時のお守りになります。

Step 3: 社会の取り組みを応援すること

ネット上の誹謗中傷対策として、2024年に「情報流通プラットフォーム対処法」が成立しました。 このように、社会の「壁」をなくすための法整備も進んでいます。こうした動きに関心を持ち、支持の声を上げることも、私たちにできる力強いアクションです。

なぜ産婦人科医が「こころ」の問題を発信するのか

このシリーズを通して、当院が「こころの健康」について発信し続けるのには理由があります。それは、女性のからだの健康とこころの健康は、切り離すことのできない「車の両輪」だからです。

女性は生涯を通じてホルモンバランスが大きく変動し、それが感情や精神状態に直接影響します。しかし、「女性は感情的」「母親なのだからしっかり」といった社会の根強い偏見が、女性たちを「相談してはいけない」と追い詰めてしまうのです。

私たちは、女性の生涯にわたる健康のパートナーとして、からだの不調だけでなく、それに伴う心のつらさも丸ごと受け止め、安心して話せる場所でありたいと心から願っています。

もし今、あなたが何かつらい気持ちを抱えているなら、どうか一人で我慢しないでください。そのつらさは、決してあなた一人のせいではありません。私たち藤東クリニックも、いつでもあなたの味方です。どんな些細なことでも構いません。どうぞ安心して、あなたの声を聞かせに来てください。

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