「これくらい普通…」は危険!ハラスメントのグレーゾーンと、自分を守る境界線の引き方

【これってハラスメント?】職場や顧客との健全な関係のために – データと専門家が教える対処法

「これってハラスメントなのかな…?」
職場で、あるいは顧客とのやり取りの中で、そう感じたことはありませんか?

こんにちは!女性の健康をデータに基づいて分かりやすく解説する「藤東クリニックインサイト」。今回は、多くの方が直面する可能性のある「ハラスメント」について、令和6年版厚生労働白書などのデータを交えながら、その実態と対処法、そして心身への影響について詳しくご紹介します。

驚きの相談件数!見過ごせない職場ハラスメントの現状

最近よく耳にする「ハラスメント」という言葉。実は、厚生労働省の調査によると、令和4年度のパワーハラスメント(パワハラ)の相談件数は、なんと約5万840件にも上ります。これは決して他人事ではない、非常に身近な問題と言えるでしょう。

パワーハラスメントの相談、なぜ多い?

この高い相談件数の背景には、2022年4月から中小企業にもパワーハラスメント防止措置が義務化された影響が大きいと考えられます。法整備が進んだことで、これまで声を上げにくかった方が相談しやすくなった側面があるのかもしれません。
相談内容で特に多いのは、「パワーハラスメント防止措置(第30条の2第1項関係)」に関するもので、全体の約87.7%(4万4568件)を占めています。

パワハラだけじゃない!セクハラ・マタハラの現状

職場にはパワハラ以外にも様々なハラスメントが存在します。

  • セクシュアルハラスメント(セクハラ):令和4年度の相談件数は20,967件。そのうち「セクシュアルハラスメント(第11条関係)」に関するものが最も多く、全体の約32.7%を占めています。
  • マタニティハラスメント(マタハラ):妊娠・出産等に関するハラスメントの相談件数は、令和4年度で1,926件。「妊娠・出産等に関するハラスメント(第11条の3関係)」が9.2%となっています。

これらの数字は都道府県労働局に寄せられた相談件数であり、実際には声を上げられずにいる方がもっと多くいる可能性も考えられます。ハラスメントの実態を理解し、適切な対応を知っておくことが、私たち自身を守るために非常に重要です。

「お客様は神様」では済まされない!深刻化するカスタマーハラスメント(カスハラ)

近年、従業員が顧客から受ける過度なクレームや迷惑行為、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」も大きな問題となっています。

厚生労働省が企業に対して行った調査によると、驚くべき結果が明らかになりました。過去3年間に各ハラスメントの相談があった企業に対し、『実際にハラスメントに該当する』と判断したものの割合が最も高かったのは、実は「顧客等からの著しい迷惑行為」で86.8%でした。これはパワハラ(73.0%)やセクハラ(80.9%)を上回る数字です。

さらに、これらのハラスメントに該当すると判断した事例が「件数が増加している」と回答した企業の割合も、「顧客等からの著しい迷惑行為」が22.6%と最も高く、企業側もカスハラの増加傾向を認識していることが分かります。

社会全体のストレスの高まりやSNSでの情報拡散の容易さなども背景にあると考えられますが、カスハラは働く人の心身の健康を脅かし、企業の生産性低下にも繋がる深刻な問題です。

フリーランスも無縁ではない!約10人に1人がハラスメントを経験

働き方が多様化し、フリーランスとして活躍する女性も増えています。組織に属さないフリーランスの方々も、ハラスメントと無縁ではありません。

内閣官房などが行ったフリーランスの実態調査によると、主な契約において仕事の依頼者等からハラスメントを受けたことがあると回答したフリーランスの方は10.1%、つまり約10人に1人が何らかのハラスメントを経験しています。

フリーランスが受けるハラスメントの種類と行為者

  • 最も多いのは「パワハラ」(身体的な攻撃、精神的な攻撃、業務の過大・過小な要求など):経験者の割合は6.1%
  • 次に多いのは「セクハラ」:「依頼者等からの性的な言動に対する反応を理由として仕事上で不利益を受けるなどしたもの」が2.5%、「依頼者等の性的な言動によって就業環境が不快なものとなり業務遂行に悪影響が生じるなどしたもの」が1.5%

ハラスメント行為者は、パワハラでは62.0%、セクハラ(不利益型)では46.2%の方が「発注者(企業の担当者)」と回答しており、クライアント側の人間からハラスメントを受けるケースが多いことが分かります。

フリーランスの厳しい現実:ハラスメントを受けても「何もせず取引継続」が最多

ハラスメント行為を受けた後の対応として最も多かったのは、「特に何もせず、そのまま取引を継続した」(35.2%)でした。「行為者に対してやめるように申し入れた」(23.9%)よりも多く、声を上げることの難しさがうかがえます。さらに深刻なのは、「心身に不調や病気を発症した」と回答した方も8.5%いることです。

女性が特に注意すべきハラスメントとは?

1. セクシュアルハラスメント(セクハラ)

セクハラは、大きく分けて「対価型」と「環境型」があります。

  • 対価型セクハラ:職務上の地位を利用して性的な言動を行い、それに対する労働者の対応によって解雇、降格、減給などの不利益を与えること。(例:性的な関係を要求し、拒否されたら仕事を回さない)
  • 環境型セクハラ:性的な言動によって働く環境が不快なものとなり、仕事に支障が生じること。(例:執拗に身体に触る、わいせつな画像を職場で見せる、性的な冗談を繰り返す)

大切なのは、「相手がどう受け止めたか」という視点です。たとえ言動の主にそのつもりがなくても、相手が不快に感じ、尊厳を傷つけられたと感じれば、それはセクハラに該当し得ます。

2. マタニティハラスメント(マタハラ)

妊娠・出産、育児休業や介護休業などを理由とした嫌がらせや不利益な取り扱いを指します。

  • 具体例
    • 妊娠を報告したら「忙しい時期に迷惑だ」「辞めてもらっては困る」などと言われる。
    • つわりで体調が悪くても配慮してもらえない。
    • 育児休業を取得しようとしたら昇進に響くことを示唆される。
    • 復帰後に本人の意に沿わない部署へ配置転換される、契約を更新してもらえない。

「母性健康管理(第12条、13条関係)」に関する相談も令和4年度で4,863件と多く、妊娠中や出産後の女性が職場で適切な配慮を受けられていない状況がうかがえます。これらのハラスメントは、女性の心身の健康に深刻な影響を及ぼすため、決して許されるものではありません。

もし「ハラスメントかも?」と感じたら…まず何をすべき?

実際にハラスメントかもしれないと感じた時、私たちはどうすれば良いのでしょうか?

  1. 一人で抱え込まない:最も大切なことです。自分を責めたり、我慢したりせず、信頼できる人に相談しましょう。
  2. 相談先を考える
    • 社内:職場の同僚、上司、ハラスメント相談窓口、労働組合など。
    • 社外:各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーなど。(広島県にも窓口があります)
  3. 記録を取る:いつ、どこで、誰から、どのようなハラスメント行為を受けたのか、日時、場所、言動の内容、その時の自分の気持ちなどを具体的に記録しましょう。メール、チャット履歴、音声データも重要な証拠になります。
  4. はっきりと伝える(無理のない範囲で):可能であれば、ハラスメント行為者に対して「その行為は不快であり、やめてほしい」と伝えましょう。ただし、身の危険を感じる場合は決して無理をせず、自身の安全確保を最優先してください。

フリーランスの場合の相談先

社内窓口がないフリーランスの方は、外部の専門機関や弁護士への相談が重要になります。フリーランス協会などの団体、法テラス(無料法律相談)などを活用しましょう。契約内容によっては、契約不履行や損害賠償を請求できる可能性もあります。

ハラスメントが心身に与える影響【産婦人科医の視点】

ハラスメントによる強いストレスは、心だけでなく身体にも深刻な影響を及ぼします。

  • 自律神経の乱れ:ストレスは自律神経のバランスを崩し、内臓の働きやホルモン分泌に影響を与えます。
  • 女性特有の症状
    • 月経周期の乱れ、無月経
    • PMS(月経前症候群)の悪化
    • 不正出血
  • 睡眠の質の低下:不眠、中途覚醒、起床時の疲労感など。
  • その他の身体症状:食欲不振、過食、頭痛、めまい、肩こり、動悸、胃腸の不調など。
  • 精神症状:気分の落ち込み、不安感、イライラ、集中力の低下、意欲の喪失など。(うつ病や不安障害のサインである場合も)

心身の不調を感じたら…あなたをケアする方法

もしハラスメントが原因で心身の不調を感じたら、以下のことを試してみてください。

  • 自分を責めないでください。あなたは何も悪くありません。
  • できる限りストレスの原因から離れ、十分な休息と睡眠を取る。
  • リラックスできる時間を持つ、信頼できる人と話す。
  • バランスの取れた食事を心がける。
  • ためらわずに専門医に相談する:精神科や心療内科はもちろん、産婦人科医も女性の心と体のトータルケアを目指しています。月経不順やPMSの悪化など、女性特有の症状でお悩みでしたら、ぜひ一度ご相談ください。

藤東クリニックでは、お話をじっくり伺い、必要なサポートをさせていただきます。

まとめ:一人で抱え込まず、適切な対処を

ハラスメントは、働くすべての人に関わる重要な問題です。その形態は様々ですが、いずれも個人の尊厳を傷つけ、心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

大切なのは、もし自分が被害に遭ったり、周りでそういった場面を見聞きしたりした場合に、決して一人で抱え込まず、適切な対処法を知っておくことです。相談すること、記録すること、そして自分自身の心と体を大切にケアすることを、ぜひ覚えておいてください。

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