フリーランスは”自己責任”じゃなくなりました|報酬の減額は違法です

フリーランスの報酬減額、どこからが違法?|2024年11月に変わった新しい働き方のルールを医師が解説

「予算が変わったので、報酬を下げさせてください」

在宅で仕事を受けている方なら、こんな連絡に黙って従った経験があるかもしれません。契約書もなく、口約束のような形で始まった仕事だと、なおさら言い返せないものです。

けれど、2024年11月から状況は変わりました。この月に、フリーランスで働く人を守る新しい法律が施行され、同じ月から、フリーランスの方も労災保険に加入できるようになったのです。

この記事では、テレワーク・フリーランス・副業という「新しい働き方」を守る最新ルールを、国の公式レポート「令和7年版 厚生労働白書」をもとにわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 2024年11月に施行された「フリーランス新法」で、発注する側に課された4つの義務
  • 報酬は「受け取った日から60日以内」に支払われるルール
  • フリーランスも労災保険に入れるようになった話(ただし手続きは自分で)
  • テレワークを社内で実現するための支援制度
  • 副業を始める前に確認したい「働きすぎ」の目安

https://youtu.be/up0IXErrUE4

2024年11月、2枚の傘が同時に開きました

フリーランスという働き方は、長く「自己責任」の領域とされてきました。それが変わった月が2024年11月です。

変わったこと 内容
フリーランス新法の施行 発注する側に、取引条件の明示・報酬の支払期日などの義務が課されました
労災保険の対象拡大 フリーランス(特定受託事業者)が行う事業も、労災保険の「特別加入」の対象になりました

同じ月に、取引を守る傘体を守る傘の2枚が開いた——そう考えるとわかりやすいと思います。

フリーランス新法|発注する側に課された4つの義務

正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)で、「フリーランス・事業者間取引適正化等法」は通称です。2023年の通常国会で成立し、2024年11月に施行されました。

仕事を発注する側には、次の4つが義務づけられています。

義務 内容
① 取引条件の明示 業務の内容・報酬額・支払期日などを、書面やメール等で明示する
② 報酬の支払期日 成果物を受け取った日から60日以内に支払う(再委託の場合は、発注元からの支払期日から30日以内)
③ 禁止行為 1か月以上の業務委託では、報酬の減額・返品・買いたたきなどを禁止
④ ハラスメント対策 フリーランスの就業環境が害されないよう、相談体制を整備する

⚠️ この4つの義務の出典は「フリーランス・事業者間取引適正化等法」です。厚生労働白書には法律名と施行時期が記載されており、具体的な義務内容は法律本体・公正取引委員会・中小企業庁の説明資料によります。区別して記載しています。

冒頭の「予算が変わったので報酬を下げます」は?

1か月以上の業務委託であれば、報酬の減額は禁止行為にあたります。「予算が変わったから」という発注側の都合は、減額を正当化する理由になりません。

ただし、個別のケースが違法かどうかは事情によって判断されます。「おかしいのでは」と感じたら、次の窓口に相談してください。

flowchart TD
    A["📩 仕事の依頼を受ける"]
    A --> B["✅ 取引条件を書面やメールで受け取る<br/>業務内容・報酬額・支払期日"]
    B --> C["💼 仕事をして納品する"]
    C --> D["💰 受け取った日から60日以内に支払い"]
    D --> E["🙂 問題なく完了"]
    D --> F["⚠️ 支払われない<br/>一方的に減額された"]
    B --> G["⚠️ 条件を示してもらえない<br/>口約束のまま"]
    F --> H["☎️ フリーランス・トラブル110番へ<br/>ワンストップで相談・紛争解決の援助"]
    G --> H

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    classDef duty fill:#fff7cc,stroke:#d4a017,color:#7a5c00
    classDef ok fill:#dcfce7,stroke:#16a34a,color:#14532d
    classDef ng fill:#fee2e2,stroke:#dc2626,color:#7f1d1d
    classDef help fill:#ede9fe,stroke:#7c3aed,color:#4c1d95

    class A start
    class B,C,D duty
    class E ok
    class F,G ng
    class H help

困ったときの相談先

  • フリーランス・トラブル110番:取引上のトラブルをワンストップで相談できます。相談体制の拡充やトラブル解決機能の向上により、紛争解決の援助まで行っています
  • 法違反の申出があった場合、厚生労働省は公正取引委員会・中小企業庁と連携して対応します
  • 判断に迷うときは、内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省が連名で策定した「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」も公開されています

フリーランスも労災保険に入れるようになりました

2024年11月1日から、フリーランス法に規定する特定受託事業者が行う事業が、労災保険の特別加入制度の対象に加わりました。

仕事が原因で健康を損なうリスクは、決して他人事ではありません。国のデータを見ると、その現実がわかります。

精神障害の労災(2023年度) 件数
労災の請求件数 3,575件
うち女性 1,850件(半数以上)

💡 上の数字は「請求件数」です。実際に労災と認められた(支給決定)件数は883件で、別の数字になります。

注意|自動的に加入されるわけではありません

特別加入には、次の点に注意が必要です。

  • ❌ 自動的に対象になるわけではありません
  • 自分で加入の手続きが必要です
  • 保険料は自己負担です

手間も費用もかかりますが、仕事中のケガや病気に備える安全網として、検討する価値があります。

「名ばかりフリーランス」で困っている方へ

契約上はフリーランスでも、実態は会社に雇われているのと変わらない——そんな働き方が問題になっています。

2024年11月から、全国の労働基準監督署に「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」が設置されました。自分の働き方が労働者に当たるのではないかと感じたら、相談できます。

在宅で仕事を受ける方には、こんな情報源もあります。

  • 自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン
  • ホームワーカーズウェブ:自営型テレワークの総合支援サイト

テレワーク|会社の中で在宅を実現する

在宅で働きたくても「うちの会社には制度がない」という方は多いはずです。国はテレワークを、仕事と育児・介護の両立、ワーク・ライフ・バランスの向上に資するものと位置づけており、企業向けの支援がそろっています。

支援 内容
テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン 会社が守るべき指針
テレワーク相談センター 労務管理やICTの課題についてワンストップで相談(企業向けの窓口です)
人材確保等支援助成金(テレワークコース) 中小企業がテレワーク勤務制度を導入するときの助成

💡 「うちみたいな小さい会社では無理」ではありません。小さい会社だからこそ助成金があります。人事の方に「こういう制度があるらしいですよ」と伝えるだけでも、話が動くことがあります。

医師から見た、テレワークの意味

テレワークは、私たちから見ると「医療的な道具」でもあります。

  • 🤢 つわりの時期:満員電車の通勤そのものが症状を悪化させます。在宅なら通勤はゼロです
  • 🛏 安静が必要な妊娠経過:仕事を続けられる可能性が出てきます
  • 👶 育休明け:いきなりフルタイム通勤に戻さず、在宅から段階的に復帰できます
  • 🌡 子どもの急な発熱:在宅なら早退にならずに済む場面があります

必要な人ほど、使えていません

第1子の出産前に仕事をしていた方のうち、出産後も働き続けられた方の割合(継続就業率)を見てみます。

第1子出産前の働き方 継続就業率
全体 69.5%
正規の職(正社員) 83.4%
パート・派遣 40.3%

倍以上の差があります。この壁を下げる現実的な道具がテレワークです。ところが、テレワークの実施率には別の偏りがあります。

雇用型テレワーク実施率
全体 24.6%
男性 31.2%
女性 16.9%

女性の実施率は男性の約半分です。いちばん必要としている人に、いちばん届いていないのが現状といえます。

⚠️ テレワーク実施率の出典は国土交通省「令和6年度 テレワーク人口実態調査」です。厚生労働白書には掲載されていないため、区別して記載しています。

副業・兼業のルール

副業についても、国はルールを整えてきました。「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は2度改定されています。

改定 内容
2020年9月 副業先での労働時間の把握方法、簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)を示し、ルールを明確化
2022年7月 企業に対し、副業・兼業への対応状況の情報公開を推奨

つまり「副業できる会社かどうか」を見える化しよう、という段階です。就業規則や求人情報を見るときの、新しいチェックポイントになります。

複数の会社で働く方向けのセーフティネットも整備されました。

  • 雇用保険:2022年1月1日から
  • 労災保険:2020年9月1日から

医師からお伝えしたいこと|体はひとつです

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

働く時間のうち、残業(時間外労働)には法律で上限が定められています。

区分 上限
原則 月45時間・年360時間
特別な事情がある場合 年720時間/複数月平均80時間/月100時間未満(休日労働を含む)

⚠️ この数字は時間外労働(残業)の上限であり、働く時間そのものの上限ではありません。

これは、働きすぎで人が倒れないための線として決められた数字です。副業をすると会社が違うぶん時間の管理は難しくなりますが、体はひとつです。

妊娠を考えている方、妊娠中の方、不妊治療中の方は特に注意してください。過重労働と睡眠不足は、母体にも、治療の継続にも負担になります。

flowchart TD
    S["🤔 副業を始めようか迷っている"]
    S --> A["① 本業の労働時間を書き出す<br/>残業時間も含めて"]
    A --> B["② 必要な睡眠時間を確保する<br/>削らないと決める"]
    B --> C["③ 残りの時間から副業の量を決める"]
    C --> D["④ 本業の就業規則で<br/>副業の可否を確認する"]
    D --> E["🍀 収入も体調も守れる副業へ"]
    C --> F["⚠️ 睡眠を削らないと<br/>時間が作れない"]
    F --> G["🛑 いったん見送る<br/>体調を崩したら本末転倒です"]

    classDef start fill:#e0f2fe,stroke:#0284c7,color:#075985
    classDef step fill:#fff7cc,stroke:#d4a017,color:#7a5c00
    classDef ok fill:#dcfce7,stroke:#16a34a,color:#14532d
    classDef stop fill:#fee2e2,stroke:#dc2626,color:#7f1d1d

    class S start
    class A,B,C,D step
    class E ok
    class F,G stop

収入を増やしたい気持ちは、よくわかります。ただ、増やした収入で体調を崩しては本末転倒です。副業を始めるなら、本業の労働時間と睡眠時間から逆算してください。

💡 本業では、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者について、そのうち年5日は会社が時季を指定して取得させることが義務とされています(労働基準法第39条第7項・2019年4月〜)。勤務日数が少ない場合は付与日数が10日未満となり、対象外となることがあります。副業を考える前に、ご自分の付与日数と取得状況を確認してみてください。※この項目は厚生労働白書第1章には記載がないため、区別して記載しています。

無料で使える相談窓口

窓口 内容
フリーランス・トラブル110番 取引上のトラブルをワンストップで相談。紛争解決の援助まで
テレワーク相談センター テレワーク導入の労務管理・ICTの相談(企業向け)
労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口 全国の労働基準監督署に設置(2024年11月〜)
こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト。個人事業主等の労災保険特別加入者も相談できます
ホームワーカーズウェブ 自営型テレワークの総合支援サイト

よくある質問(FAQ)

Q. 報酬を一方的に減額されました。違法ですか?
A. 1か月以上の業務委託であれば、報酬の減額は禁止行為にあたります。「予算が変わったから」は正当な理由になりません。個別の判断は事情によりますので、フリーランス・トラブル110番にご相談ください。

Q. 報酬はいつまでに支払われるべきですか?
A. 成果物を受け取った日から60日以内です。再委託の場合は、発注元からの支払期日から30日以内というルールが適用されます。

Q. 契約書がありません。それでも守られますか?
A. 発注する側には取引条件を書面やメール等で明示する義務があります。条件が示されないこと自体が問題です。「条件を書面かメールでいただけますか」と伝えてください。

Q. フリーランスでも労災保険に入れますか?
A. 2024年11月1日から特別加入の対象になりました。ただし自動的に加入されるわけではなく、手続きが必要で保険料も自己負担です。

Q. 会社に制度がなくてもテレワークはできますか?
A. 会社が導入する必要がありますが、中小企業向けの助成金(人材確保等支援助成金・テレワークコース)や、企業が相談できるテレワーク相談センターがあります。人事に情報を伝えることから始められます。

Q. 副業は会社に黙って始めてよいですか?
A. 会社ごとのルールによります。就業規則を確認してください。国は企業に対し、副業・兼業への対応状況を情報公開するよう推奨しています。

まとめ|自由と無防備は違います

  • 2024年11月、フリーランス新法が施行されました。取引条件の明示・受領日から60日以内の支払い・報酬減額等の禁止・ハラスメント対策が、発注する側の義務です
  • ✅ 同じ月から、フリーランスも労災保険に特別加入できます(手続きが必要・保険料は自己負担)
  • ✅ テレワークには中小企業向けの助成金があります。副業のルールも整備が進んでいます。ただし体はひとつ。時間は睡眠から逆算してください

働き方は自由になりました。けれど、自由と無防備は違います。

仕事を受けるときは、口約束にしないこと。「条件を書面かメールでいただけますか」——この一言が、あなたを守ります。法律も、その一言の味方になりました。

藤東クリニックでは、働き方と妊娠・出産のタイミングに悩む方のご相談もお受けしています。体のこと、これからの生活設計のこと、ひとりで抱え込まずにご相談ください。

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