職場での「すみません」はもう卒業。女性のメンタルを守る「社会モデル」という新しい考え方

「私が我慢すればいい」はもう終わり。2024年4月義務化の「合理的配慮」と女性のメンタルヘルス

2024年(令和6年)4月1日より、「改正障害者差別解消法」が施行されたことをご存知でしょうか。
ニュースなどで「合理的配慮の義務化」という言葉を耳にした方もいらっしゃるかもしれません。

「障害のある方のための法律でしょ? 私には関係ないわ」

もしそう思われているとしたら、少しもったいないかもしれません。
実は、この法律の根底にある考え方は、妊娠中の方や、更年期の不調、PMS(月経前症候群)などで悩むすべての働く女性にとって、「こころを軽くする処方箋」になり得るものなのです。

今回は、厚生労働白書のデータをもとに、この新しいルールが私たちの働き方やメンタルヘルスにどう関わってくるのかを解説します。

1. 2024年4月から何が変わったのか?

一番の変更点は、これまで民間事業者(お店や会社)にとって「努力義務(できればやってください)」だった「合理的配慮の提供」が、「義務(やらなければならない)」に変わったことです。

■「合理的配慮」とは?
障害のある方などから「社会的なバリア(障壁)を取り除いてほしい」という意思表示があった場合に、事業者が「過重な負担にならない範囲」で、必要かつ合理的な対応をすることです。

例えば、以下のようなケースです。
* 車椅子の方のために、段差にスロープをかける。
* 聴覚過敏の方のために、静かなスペースを確保する。
* 筆談やタブレットを使ってコミュニケーションをとる。

ここで重要なのは、法律が求めているのは「言われたことを全て叶えること」ではなく、「建設的な対話」を行うことだという点です。
「どうすれば解決できるか?」「この方法なら対応できますよ」と、話し合いを通じて解決策を探るプロセスそのものが、社会のルールとして義務化されたのです。

2. 自分を責めないための「社会モデル」

私たち産婦人科医がこの法律に注目するのは、そこに「社会モデル」という重要な視点が含まれているからです。

これまで、体調不良や障害で生活しづらい時、私たちは以下のように考えがちでした。

  • 医学モデル(従来の考え方)
    「つわりで電車に乗れないのは、私の体が弱いからだ」
    「更年期のホットフラッシュで仕事に集中できないのは、私の体調管理不足だ」
    原因は「個人」にあり、自分が我慢すべきと考える。

しかし、今回の法改正のベースにある考え方は違います。

  • 社会モデル(新しい考え方)
    「移動しづらいのは、電車や駅の構造にバリアがあるからだ」
    「仕事がしづらいのは、オフィスの空調や勤務体系が、多様な体調の人に対応していないからだ」
    原因は「社会(環境)」にあり、環境を変えることで解決できると考える。

もし今、あなたが心身の不調で「周りに迷惑をかけている」と自分を責めているなら、この「社会モデル」の視点を持ってみてください。あなたが悪いのではなく、環境が合っていないだけかもしれません。

「今、こういう体調なので、少し休憩のタイミングをずらせませんか?」
そうやって職場と対話をすることは、わがままではなく、法改正が目指す「誰もが生きやすい社会」を作るための正当なアクションなのです。

3. 「孤立」を防ぎ、働き続けることの重要性

「辛いなら、仕事を辞めて休んだ方がいいのでは?」
そう考えることもあるでしょう。もちろん休養が必要な時期もあります。しかし、長期的なメンタルヘルスの視点では、「社会とのつながり」を持ち続けることが非常に重要です。

厚生労働白書には、注目すべきデータが記されています。

■孤立はメンタル悪化のリスク
視覚や聴覚などに「機能制限(生活のしづらさ)」がある場合、悩みを相談できる相手がいないと、メンタルヘルスが悪化するリスクが4.6倍になるというデータがあります(米国CDC調査)。
仕事を辞めて社会的な接点を失うことは、こころの健康にとって大きなリスクになり得ます。

■環境さえ整えば、回復できる
一方で、適切なサポートや配慮があれば、多くの人が社会で活躍できます。
ある就労移行支援事業所のデータでは、企業と連携して環境調整を行うことで、就労への移行率が77%という高い実績が出ています。
また、仕事と生活を一体的に支える「障害者就業・生活支援センター」は、全国に337箇所(令和6年4月時点)設置されており、多くの人が働き続けるための伴走支援を受けています。

まとめ:一人で抱え込まず「対話」を

2024年4月からの変化は、単なる法律の改正にとどまらず、私たち一人ひとりの意識のアップデートを求めています。

こころや体に不調がある時、「辞める」か「我慢する」かの二択ではありません。
「対話をして、環境を変える(合理的配慮を求める)」という第三の選択肢が、当たり前の権利として認められたのです。

藤東クリニックでは、こうした社会制度の知識も含め、女性の皆さんが自分らしく生きるためのトータルケアを目指しています。
こころの不調を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。

最新情報をチェックしよう!
>女性のライフサイクルを応援します

女性のライフサイクルを応援します

産科・婦人科 藤東クリニック
〒735-0029 広島県安芸郡府中町茂陰1丁目1-1
TEL: 082-284-2410
FAX: 082-284-2411
MAIL: mail@fujito.clinic

電話でのお問い合わせご相談は、受付時間内にお願いいたします。
受付時間: 午前 9:00〜午後 17:30(日曜・祝日、休診日を除く)

CTR IMG