【2024年法改正】それ、犯罪です。言葉の暴力、経済的支配も「接近禁止命令」の対象に。DV防止法がここまで強くなりました

あなたは一人じゃない。困難な状況とDVに悩む女性への新たな支援が始まっています

「パートナーとの関係が辛い」「経済的に苦しい」「誰にも言えない性的な悩みを抱えている」——。今、多くの女性が複雑に絡み合った困難に直面し、どこに相談すればよいか分からず、一人で悩みや不安を抱え込んでいます。

特にコロナ禍を経て、女性が直面する困難は、一つの問題だけでなく家庭や経済の問題が絡み合う「複合化」と「複雑化」が進んでいると指摘されています。

しかし、もしあなたが今、そのような状況にいるとしても、希望を捨てないでください。2024年4月から、困難な状況にある女性たちを社会全体で力強く支えるための、新しい法律と、より強力になった法律がスタートしました。

この記事では、藤東クリニックの動画『あなたは一人じゃない〜困難な状況にある女性とDV被害者への新たな支援〜』の内容をもとに、新しくなった支援制度について分かりやすく解説します。

新しいセーフティネット:「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」

2024年4月1日に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が施行されました。 これまで女性支援の根拠となっていた法律は、制定から時間が経ち、現代の女性が抱える多様な問題に対応しきれない面がありました。

この新しい法律は、時代に合わせて考え方を根本から刷新し、「女性の福祉」「人権の尊重と擁護」「男女平等」を基本理念として明確に掲げました。 これにより、支援を受ける女性を単に「保護の対象」と見るのではなく、一人ひとりの尊厳を守り、その人らしい生活を取り戻すことを社会全体で支えるという強い意志が示されています。

【新法による主な3つの変化】

  1. 対象者の明確化: 性的な被害や家庭の問題、経済的な困窮など、様々な困難を抱えるすべての女性が支援の対象です。
  2. 支援体制の強化:
    • 民間団体との協働: これまで女性支援の最前線で活動してきたNPO法人など、専門性を持つ民間団体と行政が正式に連携します。 これにより、一人ひとりの心に寄り添った、きめ細やかなサポートが可能になります。
    • アウトリーチ(出向く)支援: 心や体が疲れ果てて相談窓口に行けない方や、支援が必要なことに気づいていない方のために、支援者側から直接訪問したり、SNSでつながりを作ったりする「出向いていく支援」が強化されます。
  3. 相談しやすい環境へ: これまでの「婦人相談所」は「女性相談支援センター」に名称が変わりました。 これは、すべての女性がより気軽に相談できる場所にしたい、という思いが込められています。

強化されたDV防止法:「精神的DV」も保護の対象に

「殴られていないからDVではない」「お前のためを思って言っているんだ」——。そんな言葉で自分を責め、苦しんでいませんか?

2024年4月1日から施行された改正DV防止法は、こうした「目に見えにくい心の傷」も守るための大きな一歩を踏み出しました。

【改正DV防止法の重要ポイント】

今回の改正で最も大きな点は、裁判所が加害者に「近づいてはいけない」と命じる「接近禁止命令」の対象が大幅に拡大されたことです。

これまでは身体的な暴力が主な対象でしたが、改正後は、うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症するほどの深刻な精神的被害も保護の対象となりうることが明確化されました。

さらに、これまでの「生命・身体」への脅しだけでなく、以下のような「自由・名誉・財産」に対する脅迫も、接近禁止命令の対象となりうる「脅迫」に含まれるようになりました。

  • 自由への脅迫: 「部屋に閉じ込めてやる」「仕事を辞めさせないとどうなるか分からないぞ」
  • 名誉への脅迫: 「性的な画像をネットにばらまく」「SNSでお前の悪口を拡散してやる」
  • 財産への脅迫: 「お前の親から借りた金をめちゃくちゃにしてやる」「キャッシュカードを取り上げる」

これらの行為は、もはや「夫婦げんか」では済まされません。あなたの尊厳を傷つける重大な人権侵害です。国が法律を改正し、命令違反への罰則を「2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金」へと厳しくしたことからも、被害者を守るという国の強い決意がうかがえます。

もしパートナーからの言葉や態度に心を削られているのなら、決して「自分の心が弱いからだ」などと思わないでください。それは、あなたのせいでは決してありません。

勇気を出して、まずは相談を

法律が変わり、社会があなたを守るためのネットワークは、より広く、強くなりました。一人で抱え込まず、専門の相談窓口に連絡してみてください。相談することは恥ずかしいことではなく、あなた自身と大切な未来を守るための、最も勇気ある一歩です。

【主な相談窓口】

  • 女性相談支援センター 全国共通短縮ダイヤル「#8778(はなそう なやみ)」
    困難な問題を抱える女性の様々な悩みについて相談できます。
  • DV相談ナビ「#8008(はれれば)」
    配偶者からの暴力に関する相談窓口で、最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながります。
  • DV相談+(プラス)「0120-279-889(つなぐ はやく)」
    24時間対応の電話相談のほか、SNSやメール、多言語でのチャット相談も可能です。

私たち藤東クリニックも、産婦人科医として、女性の心と体の健康を生涯にわたってサポートし続けます。いつでもあなたの味方です。

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