【新常識】日本人の8割が「健康」な時代に。産婦人科医が警鐘を鳴らす、見過ごされがちな健康の土台とは?
「あなたはご自身のことを『健康だ』と思いますか?」
もしそう聞かれたら、多くの方が「はい」と答えるかもしれません。実際に、最新の国の調査によると、日本人の約8割が自分を心も体も健康だと感じているというデータがあります。しかし、その一方で、私たちが「健康」を判断する基準は、ここ数年で大きく変化していることをご存知でしょうか。
YouTubeチャンネル『藤東クリニック インサイト』の新シリーズ「私のこころと、上手に付き合う方法」では、最新の公的データである『令和6年版厚生労働白書』などを基に、現代女性の健康について解説しています。その第1回配信では、新しい健康の常識ともいえる「睡眠」と「ストレス」に焦点が当てられました。
健康の指標に新常識。「ぐっすり眠れること」の重要性が急上昇
かつて健康のために重要とされてきたのは、「バランスの良い食事」や「適度な運動」でした。もちろん、これらが大切なことに変わりはありません。しかし、近年のデータは、人々の意識に大きな変化が起きていることを示しています。
「健康状態を判断する上で何を重視しますか?」という質問に対し、「ぐっすりと眠れること」と答えた人の割合は、2014年の27.6%から2024年には41.5%へと、10年間で13.9ポイントも増加しました。これは他の項目と比較しても突出した伸びであり、多くの人が睡眠を重要な健康のバロメーターと捉えるようになったことを示しています。
藤東クリニックの医師は、この変化の背景について「睡眠が心と体の両方の健康に、私たちが思う以上に深く関わっていることが広く知られるようになったから」だと指摘します。特に女性にとって、睡眠は健康の土台そのものと言っても過言ではありません。
睡眠不足は自律神経の乱れに直結し、自律神経と女性ホルモンの両方をコントロールしている脳の視床下部に影響を及ぼします。その結果、ホルモンバランスが崩れ、月経不順やPMS(月経前症候群)の悪化、肌荒れ、イライラなど、様々な不調を引き起こす可能性があるのです。妊活中の方にとっても、質の良い睡眠は妊娠しやすい体づくりのために不可欠です。
質の良い睡眠をとるためには、以下の3つの簡単な習慣から始めることが推奨されています。
- 寝る1時間前はスマホやPCを見ない: 画面の光は脳を興奮させ、寝つきを悪くします。
- ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる: 心身をリラックスさせ、自然な眠りを誘います。
- 朝起きたら太陽の光を浴びる: 体内時計がリセットされ、夜の寝つきが良くなります。
現代社会最大の健康リスクは「ストレス」
もう一つの重要なキーワードが「ストレス」です。健康にとって最もリスクになるものを尋ねた調査では、かつてトップだった「生活習慣病」の割合が年々減少する一方で、「ストレス」と回答する人の割合が著しく増加しています。
2004年にはわずか5.0%だったその割合は、2024年には15.6%にまで上昇し、20年間で3倍以上に増加しました。 これは、かつて「気の持ちよう」と片付けられがちだったストレスが、今や多くの人にとって、がんや生活習慣病と並ぶ重大な健康リスクとして認識されるようになったことを意味しています。
特に若い世代ほど、こころの不調をより身近な問題として捉えています。「こころの不調を身近に感じるか」という質問に対し、「感じる」または「どちらかといえば感じる」と答えた人の割合は、20代では7割を超える一方、年代が上がるにつれて減少し、70代以上では3割未満に留まります。
しかし、問題を認識していても、適切に対処できているとは限りません。「ストレスや不安感がある、またはかなりあるが、特に何もしていない」と答えた人は23.1%にのぼり、約4人に1人がストレスを抱えながらも具体的な対処ができていないのが現状です。
強いストレスは、体を常に緊張状態にし、自律神経やホルモンバランスを乱します。その結果、月経不順や免疫力の低下、頭痛、胃痛など、様々な身体症状として現れることがあります。まさに「病は気から」は、医学的にも真実なのです。
まとめ:健康な「今」だからこそ、見直したい2つのこと
今回の調査データからは、私たちの健康に対する考え方が大きく変わりつつあることが明らかになりました。
- 健康の新常識として「ぐっすり眠れること」を重視する人が41.5%に急増。
- 健康リスクとして「ストレス」を意識する人がこの20年で3倍以上に増加。
約8割の人が自分を健康だと感じている今だからこそ、その健康を支える土台である「睡眠」と「ストレス管理」に目を向けることが、未来の自分を大切にすることに繋がります。まずは今夜から、スマホを少し遠くに置いて、心と体を休める時間を作ってみてはいかがでしょうか。