【専門医解説】もしかして「うつ病」?女性に多いサインと原因とは
「なんだか気分が晴れない」「今まで楽しめていたことが楽しくない」——。そんな心の不調を感じたことはありませんか?もしかしたら、それは「うつ病」のサインかもしれません。
YouTubeチャンネル『藤東クリニック インサイト』では、最新の公的データに基づき、女性のうつ病について詳しく解説しています。この記事では、動画「【第2回】 もしかして「うつ病」?女性に多いサインと原因を徹底解説」の内容を基に、うつ病の現状、具体的な症状、そしてなぜ女性に多いのか、その背景を掘り下げていきます。
日本のメンタルヘルスの現状:うつ病は決して他人事ではない
厚生労働省の調査によると、2020年時点で何らかの精神疾患で医療機関にかかっている患者さんの総数は、約615万人にのぼります。 このうち、入院ではなく外来で通院している患者さんは約586万人です。
驚くべきは、その中で「うつ病」などを含む「気分(感情)障害」の患者さんが最も多く、約169万人、全体の約29%を占めているという事実です。 この数字からも、うつ病が決して珍しい病気ではなく、誰にとっても身近な問題であることが分かります。
「うつ病」の正体とは?-"心の風邪"という言葉の真実
「うつ病は心の風邪」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは「誰でもかかる可能性がある身近な病気」という意味では正しいものの、「寝ていれば治る」というような簡単なものではありません。
うつ病は、「感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じている状態」、つまり治療が必要な「脳の機能不全」です。 意志の力や気合いで乗り越えられるものではなく、専門的な治療が必要な病気なのです。
【うつ病の主な症状】
うつ病の症状は、心の不調だけでなく、体の不調としても現れることが特徴です。
- 心の症状
- 一日中気分が落ち込んで晴れない
- 今まで好きだったことや趣味に興味が持てない、楽しめない
- 自分を責めてしまう、価値がないと感じる
- 思考力や集中力が低下する
- 体の症状
- 眠れない、夜中に何度も目が覚める、または逆に眠りすぎる
- 食欲がない、味がしない、または過食になる
- 体が鉛のように重い、強い疲労感や倦怠感が続く
- 頭痛や肩こり、動悸、息切れ
このような心や体のつらい症状が、ほとんど毎日、2週間以上続く場合は、うつ病のサインかもしれません。
なぜ女性はうつ病になりやすい?男性の約1.6倍という事実
厚生労働省の調査では、うつ病を含む気分障害の患者数は女性が男性よりも多く、その差は約1.6倍にもなるというデータがあります。 なぜ、これほど明確な性差があるのでしょうか。
その大きな理由の一つが、女性特有のライフステージに伴うホルモンバランスの急激な変動です。 女性の人生はホルモンの大きな波と共にあり、それが「こころ」の状態に密接に関わっているのです。
【特に注意したい!女性ホルモンが大きく揺らぐ3つの時期】
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月経周期(PMS/PMDD)
生理前にイライラや気分の落ち込みを感じるPMS(月経前症候群)は多くの女性が経験しますが、精神的な症状が特に重く、日常生活に支障をきたす場合はPMDD(月経前不快気分障害)と診断されることがあります。 PMDDは、うつ病の一種として扱われることもある深刻な状態です。 -
妊娠・出産期(産後うつ)
出産後に気分が落ち込む「マタニティブルー」は一過性の場合が多いですが、それが2週間以上改善しない場合は「産後うつ」の可能性があります。 出産によるホルモンバランスの急激な変化や、慣れない育児による睡眠不足、疲労などが原因と考えられています。 「赤ちゃんを可愛いと思えない」「理由もなく涙が出る」といった症状に悩む方も少なくありません。 -
更年期
40代半ばから50代半ばの更年期は、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少する時期です。 これにより、ほてりや発汗といった身体的な不調だけでなく、気分の落ち込み、不安感、意欲の低下といった、うつ病とよく似た精神症状が現れやすくなります。 これが更年期障害の症状なのか、うつ病なのか、丁寧な見極めが重要になります。
原因はホルモンだけではない?意外な「うつ病」の引き金
ホルモンの影響は大きな要因ですが、うつ病は一つの原因だけで発症するわけではありません。 辛い出来事だけでなく、結婚、進学、就職といった喜ばしいライフイベントでさえも、大きな環境の変化というストレスとなり、発症の引き金になることがあります。
その他にも、以下のような要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
- 性格傾向:真面目、責任感が強い、完璧主義など
- 遺伝的要因:血縁者にうつ病の人がいる場合、発症リスクが高まることが知られています。
- 慢性的な身体疾患:がんや糖尿病など、長期にわたる病気も発症に関わることがあります。
まとめ:専門医からの3つの重要ポイント
うつ病は、決して特別な病気ではありません。今回の重要なポイントを3つにまとめます。
- うつ病は「脳の機能不全」であり、気合や性格の問題ではありません。
- 「心の症状」だけでなく、「眠れない」「疲れやすい」といった体の不調にも注意が必要です。
- 女性は「月経前・産後・更年期」のホルモン変動が引き金になることがあります。
もし「もしかして…」と感じることがあっても、決して一人で抱え込まず、ご自身を責めないでください。うつ病はあなたのせいではありません。産婦人科や精神科、心療内科など、専門家に相談することが回復への最も確かな第一歩です。