「私、要領が悪いの?」いいえ、違います。データが証明する“家事時間3.4倍”の残酷な真実

なぜ「ワンオペ育児」はなくならない?データで証明された「妻の負担3.4倍」の衝撃的な実態

「毎日、家事と育児に追われて休む暇がない」
「夫は『手伝う』と言うけれど、結局指示待ちでイライラしてしまう」
「私が要領よくこなせないから、こんなに辛いのだろうか……」

診察室で、そんな自分を責めるような言葉を耳にすることが少なくありません。
しかし、産婦人科医として、そして一人の人間として、はっきりとお伝えしたいことがあります。

あなたが疲れているのは、あなたの要領が悪いからではありません。
日本の社会構造上、女性に負担が集中せざるを得ない現状があるからです。

今回は、最新の「厚生労働白書」の統計データをもとに、日本の女性が抱える「見えない負担」の正体を医学的・統計的な視点から紐解いていきます。

衝撃のデータ「妻 6時間32分 vs 夫 1時間57分」

まず、皆様に知っていただきたい衝撃的なデータがあります。
6歳未満のお子さんがいる共働き世帯において、夫婦が1日に費やす「家事・育児・介護・買い物」の合計時間(家事関連時間)の比較です(令和3年)。

  • 妻:1日平均 6時間32分
  • 夫:1日平均 1時間57分

共働きであっても、妻の負担は夫の約3.4倍にも上ります。

夫側が「ゴミ出しをした」「お風呂に入れた」ことで「家事を分担しているつもり」になっていても、データは残酷なほどの格差を示しています。名前のない家事、夜泣きの対応、保育園の準備……それらのほとんどを女性が担っているのが現実です。

産婦人科医として警鐘を鳴らしたいのは、産後の女性の体は、交通事故に遭ったのと同じくらい大きなダメージを負っているという事実です。ホルモンバランスが激変し、身体も回復していない状態で、毎日6時間半もの重労働をこなせば、心身に限界が来るのは医学的に見ても当然のことなのです。

男性育休の落とし穴「4割が2週間未満」

近年、「男性の育児休業」が推奨され、取得率は30.1%(令和5年度)まで上昇しました。街中で抱っこ紐を使う男性を見かけることも増え、社会は変わりつつあるように見えます。

しかし、ここにも数字のマジックがあります。
育休を取得した男性のうち、その期間が「2週間未満」の人は約4割(37.7%)。さらに「5日未満」という人は15.7%もいます。

出産直後の入院期間は約1週間です。つまり、退院手続きやお祝いをしている間に「育休」が終わってしまうケースが少なくありません。これでは、育児の過酷さを理解し、妻の身体を休めるという本来の目的を果たすことは困難です。
「取るだけ育休」になっていないか、その「質」を見直す必要があります。

女性のキャリアを阻む「130万円の壁」

なぜ、女性ばかりが家事・育児を担うことになるのか。そこには社会制度の「壁」も大きく関係しています。

パートタイムで働く既婚女性の約2割(21.8%)が、あえて働く時間や日数を減らす「就業調整」を行っています。
その理由の第1位(57.3%)は、いわゆる「130万円の壁(社会保険の扶養)」です。

一定額を超えて働くと、夫の扶養から外れ、自分で保険料を負担しなければならず、世帯の手取りが減ってしまう可能性があります。そのため、能力があっても仕事をセーブせざるを得ない女性が多く存在します。

仕事をセーブして家にいる時間が長くなれば、必然的に家事や育児の役割は女性に固定化されます。この制度の壁こそが、ワンオペ育児を助長する構造的な要因の一つと言えるでしょう。

最後に:データを「共通言語」に

今回ご紹介したデータを見て、少し心が軽くなった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「私が悪いわけじゃない」「社会全体の問題なんだ」と知ることは、ご自身を守るための第一歩です。

そして、このデータをぜひ、パートナーの方と共有してみてください。
感情的に「手伝ってよ!」と伝えるよりも、「日本の平均はこうらしいけど、うちはどうかな?」と数字を見せることで、建設的な話し合いができるかもしれません。

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