明治のブラック労働から学ぶ:いま“休む権利”を使うことが未来の自分を守る理由

生理休暇は“甘え”じゃない:昔の女性、今の女性――働く環境はどう変わった?

「生理痛がつらいけれど、休むのは申し訳ない」「産休・育休を取ったら迷惑かも」――そんな不安を抱えながら働いている女性は少なくありません。
でも、いま私たちが使える制度や“働くルール”は、飾りではなく、命と健康を守るために積み上げられてきたものです。

この記事では、厚生労働白書(令和7年版)に掲載されている内容をもとに、過去の女性労働の現実と、いまの女性の働き方を示すデータをつなげて、産婦人科医の視点でわかりやすく整理します。

1. 歴史を知る:明治・大正期の女性労働は“過酷”だった

白書には、『日本之下層社会』『女工哀史』など当時の文献をもとに、工場で働く女性たちの状況が紹介されています。

  • 労働時間は「12時間」、休憩時間を除いても「11時間」が通例と記され、忙しい時期には「2日間も勤続」させることがあったとされます。
  • 休憩は合計「1時間」という記述が出てきますが、現代の感覚で見ると十分とは言いにくい内容です。
  • 休日も安定しておらず、機械の掃除日が休日に充てられ、状況によって休みがずれることがあったとされています。
  • 『女工哀史』では、賃金の支払いが遅れたり、欠勤すると支払いが延びたりする話、危険な作業環境、懲罰や罰金、氏名や罰金額の掲示、作業台への赤旗など、精神的な圧迫も含む実態が記されています。
  • 寄宿舎での生活では外出が制限され、手紙のやりとりへの干渉(開封など)に触れた記述もあります。

産婦人科医の立場から見ると、長時間労働・休みの不安定さ・安全衛生の不備・罰による萎縮は、体調不良を言い出しづらくし、結果として症状を悪化させやすい構造です。だからこそ、現代の「働くルール」や母性保護の考え方は、単なる建前ではなく“守るための仕組み”として存在しています。

2. データで見る:働く女性は増えた。でも“正規で続ける”は難しい

白書の図では、女性の就業率は高い水準にある一方で、正規雇用比率には課題が残ることが示されています。

就業率(働いている割合)は高い

令和6年(2024年)の女性就業率は、たとえば以下のように示されています。

  • 25~29歳:85.4%
  • 30~34歳:81.6%
  • 35~39歳:79.6%
  • 40~44歳:81.4%
  • 45~49歳:82.3%
  • 50~54歳:79.7%
  • 60~64歳:65.0%
  • 65歳以上:19.1%

子育て期に“谷”ができるいわゆるM字カーブは、過去より浅くなってきたことが読み取れます。

ただし正規雇用比率は“L字”で下がる

一方、正規雇用比率(正規の職員・従業員の割合)を見ると、

  • 25~29歳:60.3%(ピーク)
  • 30~34歳:51.6%
  • 35~39歳:41.4%
  • 40~44歳:38.5%
  • 45~49歳:36.6%
  • 50~54歳:32.9%

就業率は高いのに、正規で働き続ける割合が年齢とともに下がる“L字”が見えます。ここが、働く女性が直面しやすい大きな壁です。

3. 出産を境に、働き方が変わりやすい現実

白書の「第1子出産前後の妻の継続就業率・育児休業利用状況」から、出産前後での就業変化が読み取れます。

  • 第1子出産前に有職:77.4%
  • 出産後に継続就業:53.8%
  • 出産退職:23.6%

さらに雇用形態別に見ると、「育休を利用して継続就業」には大きな差があります。

  • 正規職員:育休利用で継続 74.7%(2015~2019年)
  • パート・派遣:育休利用で継続 16.7%(2015~2019年)

制度が“ある”だけではなく、雇用形態や職場環境によって“使いやすさ”が変わり、結果として継続のしやすさに差が出る――これが、データが示す現代の現実です。

4. 賃金差は「能力の差」だけでは説明できない

白書では、男女間の賃金差異(男性を100とした場合)が示されています。

  • 一般労働者:女性 75.8
  • 一般労働者のうち正社員・正職員:女性 78.1

この差は個人の努力や能力だけで単純に説明できるものではなく、先ほどの“正規比率の低下”や“出産・育児期の働き方の変化”といった構造とも関係していると捉えることが重要です。

5. 藤東クリニック(産婦人科)からの提言:明日からできる3つ

ここからは、現場で働く女性の健康を見ている産婦人科としての提言です。

① 「我慢」を前提にしない

生理痛や不調は、根性で乗り切るほど長期的に悪化することがあります。痛みが強い、仕事に支障が出る、鎮痛薬が手放せない、気分の波がつらい――そうした状態は、治療で軽くできる可能性があります。

② 制度は“使っていい権利”として情報を先に取りに行く

育休・両立支援は、いざとなってから調べると間に合わないことがあります。自分の職場で「何が使えるか」「誰に相談するか」を、体調が落ち着いている時期に確認しておくことが、結果的に自分を守ります。

③ 相談ルートを持つ(職場の外にもある)

白書には、労働問題全般の相談先として「総合労働相談コーナー」、仕事探しや雇用保険の相談先として「ハローワーク」、賃金や労働時間・労災などの相談先として「労働基準監督署」などが整理されています。
また、妊娠・出産・子育ての相談先として、市区町村の「こども家庭センター(旧:子育て世代包括支援センター等)」や保健センター等が挙げられています。

「限界になる前に相談する」――これが、長く働き続けるための現実的なコツです。

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