【生涯医療費2,900万円】給与明細の「控除」が、実は最強のお守りである理由
毎月受け取る給与明細。
「支給額」と「手取り額」の差を見て、ため息をついたことはありませんか?
「健康保険料に厚生年金……。一生懸命働いたのに、なんでこんなに引かれるの?」
「自分は元気だし、病院もあまり行かないのに損している気がする」
そんなふうに感じるのは、とても自然なことです。しかし、先日厚生労働省から発表された「令和7年版 厚生労働白書」のデータを紐解いていくと、この「天引きされているお金」の本当の価値が見えてきます。
今回は、私たちが支払っている社会保険料が、実は将来訪れる数千万円のリスクから人生を守る「最強のお守り」である理由について、具体的なデータをもとに解説します。
日本人の生涯医療費は平均「約2,900万円」
まず、想像してみてください。私たちがオギャーと生まれてから亡くなるまで、一生涯でかかる医療費はいくらぐらいだと思いますか?
白書のデータによると、その額は1人あたり平均約2,900万円(令和4年度)です。
若い頃は風邪をひく程度で済んでいても、年齢を重ねるにつれて医療費は急激に増加します。もし日本に「国民皆保険制度」がなく、すべてが自己責任(自助)の世界だったとしたらどうなるでしょうか。
私たちは、老後の生活費とは別に、この約3,000万円近い医療費を自分一人の貯金だけで準備しなければなりません。これは非常に困難なハードルです。
アメリカのように公的保険が限定的な国では、盲腸の手術だけで数百万円の請求が来ることもあり、医療費が原因で破産するケースも珍しくありません。
私たちが毎月支払っている保険料は、この「個人では抱えきれないリスク」を社会全体で割り勘(共助)にするための会費なのです。
社会保障がないと、女性は「仕事」を続けられない?
医療費と同じくらい、女性の人生にとって切実なのが「介護」の問題です。
現在、介護が必要になった際は「介護保険制度」のおかげで、1割〜3割の自己負担でサービスを受けることができます。しかし、もしこの制度がなかったらどうなるでしょうか。
親御さんに介護が必要になった時、全額自己負担で施設に入れるお金がなければ、家族が自宅で介護をするしかありません。白書では、もし社会保障がなければ「家族の介護のために、仕事や進学、将来の夢をあきらめる人が増える」と指摘されています。
現状、家族の介護を担うのは女性であるケースがまだ多く見られます。
「東京で働いていたけれど、親の介護のために仕事を辞めて実家に戻る」
いわゆる介護離職です。
社会保障制度は、単に医療費や介護費を安くするだけのものではありません。
介護サービスを利用しやすくすることで、あなたがキャリアを中断せず、自分の人生を自分で選択する自由を守るための土台となっているのです。
「払い損」ではない? 給付と負担のリアルな数字
それでも、「払っている額に対して、受けているサービスが見合っていないのでは?」と感じる方もいるでしょう。
ここで、日本の社会保障の「お財布事情(給付と負担のバランス)」を見てみます。
実は、年金・医療・介護などで使われるお金のうち、私たちが支払っている「保険料」で賄われているのは全体の約6割に過ぎません。
では残りの約4割はどこから出ているかというと、税金(公費)です。
ざっくりと言えば、私たちは「6割の負担で、10割のサービスを受け取る権利」を得ていることになります。
構造的に見れば、現役世代であっても支払っている保険料以上の恩恵がシステムの中に組み込まれており、決して「払い損」ではないのです。
まとめ:給与明細は「安心へのチケット」
「社会保障=税金で取られるもの」
というイメージが強かったかもしれませんが、データを見ていくと
「社会保障=2,900万円のリスクや、キャリアの断絶から身を守るための安心料」
という側面が見えてきます。
もちろん、手取りが減るのは痛手ですが、そのお金が巡り巡って、あなたやあなたの大切な家族の「万が一」を支え、自立した生活を維持する柱になっています。
次回の給与明細を見たときは、少しだけ視点を変えて、「今月も安心へのチケットを手に入れた」と思ってみてはいかがでしょうか。
藤東クリニック
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