「消えたい」は心が弱いからではありません。女性と子どもの命を守るために、今知ってほしいこと
今回は、少し重たい、けれど決して目を背けてはいけないテーマ「自殺対策」についてお話しします。
「令和6年版 厚生労働白書」には、私たち産婦人科医としても見過ごせない、女性と子どもに関する衝撃的なデータが記されていました。
「自分は大丈夫」
「うちの子に限って」
そう思っている方にこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。
■ 厚労省白書が示す「2つの異変」
日本の自殺者数は、長い目で見れば減少傾向にありました。しかし、ここ数年で深刻な変化が起きています。
1. 小中高生の自殺者数が「過去最多」に
2022年(令和4年)、未来ある子どもたちの自殺者数が過去最多となってしまいました。
2. 女性の自殺者数が「2年連続で増加」
これまで減少傾向にあった女性の自殺が、コロナ禍を機に増加に転じています。
なぜ、いま女性や子どもたちが追い詰められているのでしょうか?
白書では、その要因として「健康問題」「経済・生活問題」「家庭問題」が複雑に絡み合っていると指摘しています。特にコロナ禍による環境の変化は、女性の負担を大きく増やしました。
■ 「甘え」ではなく「仕組み」のせい
診察室でよくお伝えするのは、「あなたが辛いのは、あなたの心が弱いからではない」ということです。
私たち女性の体は、月経周期や妊娠・出産、更年期など、ホルモンバランスがダイナミックに変化します。この変動は、脳の神経伝達物質に影響を与えるため、医学的に見てもメンタルに波があるのは自然なことなのです。
そこに、社会的なストレスや孤独が重なれば、誰だって心は風邪を引きます。
「辛い」「消えたい」と感じてしまうのは、あなたが頑張りすぎて疲れてしまった証拠であり、決して「甘え」ではありません。
■ 子どものSOSは「体」に出る
では、子どもたちのサインにはどう気づけばよいのでしょうか。
子どもは大人ほどうまく言葉にできません。「死にたい」と言葉にできる子は稀です。
その代わり、SOSは「体」に出ます。
- 朝、起きられない
- 「お腹が痛い」「頭が痛い」と訴える
- 食欲がない、眠れない
もしお子さんにこうした様子が見られたら、理由を問い詰めたり、無理に学校へ行かせようとしたりせず、まずは「体が辛いんだね」と受け止めて、逃げ場を作ってあげてください。
「体の不調」は「心の限界」のサインです。これは大人も同じです。
■ 国も「孤独」をなくすために動いています
暗いニュースばかりではありません。国もこの状況を変えるために動いています。
2024年4月には「孤独・孤立対策推進法」が施行されました。
これは、孤独を個人の問題ではなく「社会全体で解決すべき問題」と定義し、「声を上げやすい社会」を作るための法律です。
データ(※)でも、悩みがある時に「相談できる相手がいる」だけで、メンタルヘルスのリスクが下がることが分かっています。
(※出典:令和6年版 厚生労働白書)
■ ひとりで抱え込まないで
もし今、辛い気持ちを抱えている方がいたら、どうか一人で悩まないでください。
当院では、体の不調だけでなく、更年期やPMS、産前産後の心の不調についても相談を受け付けています。
「眠れない」「なんとなく涙が出る」といったことでも、立派な受診の理由になります。
また、下記のような公的な相談窓口もあります。
- まもろうよ こころ(厚生労働省):電話やSNSで相談できます。
- #いのちの電話
あなたの代わりはいません。
まずは「今日一日を生き抜いたこと」を、自分自身で褒めてあげてくださいね。