『だらしない』『意志が弱い』という偏見が一番の敵。依存症の正しい知識が、あなたと大切な人を救う。

【記事】「つい、やり過ぎてしまう…」それは意志の弱さ?依存症の正しい理解と回復への道

「コロナ禍以降、家でお酒を飲む量が増えた」「ストレス解消で、ついネットショッピングが止まらない」

友人との会話で、そんな話題が出ることはありませんか?笑い話で終わることも多いけれど、心のどこかで「これって、ただ意志が弱いだけなのかな?」と不安に感じたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

当院のYouTubeチャンネル『藤東クリニック インサイト』では、動画シリーズ「女性のための、こころの保健室」の第4回として、『「やめられない」は意志の弱さじゃない〜依存症の正しい理解と回復への道〜』を公開しました。

この記事では、動画の内容をダイジェストでご紹介します。最新の公的データ『令和6年版厚生労働白書』などを基に、依存症が決して特別な誰かの話ではなく、私たちのすぐそばにある問題であること、そして回復への道筋を分かりやすく解説しています。

ポイント1:依存症は「意志の弱さ」ではなく「脳の病気」

「依存症」と聞くと、特定の薬物やアルコールの問題を想像し、「本人の心が弱いから」「だらしないからだ」といった厳しい目が向けられがちです。しかし、これは大きな誤解です。

依存症は「脳の病気」です。

私たちの脳には、快感をもたらす「報酬系」という神経回路があります。依存性のある物質や行為は、この回路を刺激し、ドーパミンという快感物質を大量に放出させます。この強い刺激を繰り返すうちに、脳の回路そのものが物理的に変化してしまいます。

その結果、物事を冷静に判断したり、衝動をコントロールしたりする前頭前野の働きが低下し、「やめたい」という理性のブレーキが効かなくなってしまうのです。

これは、性格や意志の強さの問題ではありません。誰の身にも起こりうる「病気」であり、だからこそ個人の努力だけで治すのは極めて困難です。しかし、病気であるからこそ、専門的な治療と支援によって回復が可能なのです。

ポイント2:一人で抱え込まないで。全国に整備された支援体制があります

「もし自分や家族が依存症になったら…」
そう考えると、誰にも言えずに一人で抱え込んでしまいそうになるかもしれません。しかし、その「孤立」こそが、回復から最も遠ざかってしまう状態です。

ご本人やご家族が最初に頼れる場所として、全ての都道府県と指定都市に『依存症の相談拠点』が設置されています。多くは地域の精神保健福祉センターなどがその役割を担っており、専門の相談員が話を聞いてくれます。ご本人が行きたがらない場合でも、ご家族だけで相談することが可能です。

相談拠点では、必要に応じて以下のような場所へと繋いでくれます。

  • 依存症専門医療機関:専門の医師による治療が受けられる医療機関
  • 依存症治療拠点機関:地域の治療ネットワークの中核となる機関
  • 自助グループ・民間団体:同じ悩みを持つ仲間と支え合い、共同生活や就労支援などを通じて回復を目指す場所

動画では、福岡県の『NPO法人ジャパンマック福岡』の例を挙げ、ご家族への支援プログラム「クラフト」についても紹介しています。ご家族が病気への理解を深めることが、ご本人の回復に繋がる大切な鍵となります。

このように、相談拠点、医療機関、民間団体が連携し、地域全体でご本人とご家族を支えるネットワークが作られています。決して一人で悩まず、まずはお住まいの地域の相談窓口に連絡してみてください。

ポイント3:回復への一番の壁は「社会の偏見」

手厚い支援体制が整っている一方で、『令和6年版厚生労働白書』では、依存症へのスティグマ(差別や偏見)が、当事者や家族が適切な支援に繋がることを妨げているという課題が指摘されています。

この社会的な障壁を取り除くために、私たち一人ひとりができることがあります。それは、依存症について正しい知識を持つことです。

厚生労働省の特設サイトなどでは、依存症について漫画などで分かりやすく解説されています。まずはこうした情報に触れ、「依存症は特別な誰かの問題ではない」と知ることが、当事者やご家族を孤立させない温かい社会への第一歩となるはずです。

まとめ:あなたは一人ではありません

今回のテーマである依存症を含め、女性が抱える心の問題に共通して言えることは、「あなたは一人ではない」ということです。

藤東クリニックは、これからも女性の生涯にわたる心と体の健康を、すぐそばでサポートしていきます。どんな些細なことでも、不安に思うことがあれば、どうか一人で抱え込まず、いつでも私たちにご相談ください。

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