日本人が「がん」より「心の病」を相談できない衝撃のワケ。心がスーッと軽くなる婦人科医からのメッセージ

【婦人科医が伝えたい】心の不調、がんと比べて相談しにくい?データが示す「見えない壁」と社会の変化

「もし、あなたが『うつ病』だと診断されたら、ご家族にすぐに相談できますか?」

この問いに、少しでもためらいを感じたなら、それはあなただけではありません。多くの人が「心の不調」に対して、身体の病気とは違う「見えない壁」を感じています。

こんにちは!産婦人科専門医が女性の健康を分かりやすく解説する『藤東クリニック インサイト』です。今回は、最新の公的データ『令和6年版厚生労働白書』などをもとに、「心の不調」を相談することのハードルと、そこに隠された女性特有の問題、そして社会の「希望」についてお話しします。

がんより高い?データで見る「心の不調」相談の壁

厚生労働省の調査によると、もし症状を感じたり診断されたりした場合の行動について、心の不調と身体の病気(がん)とでは、人々の行動に大きな違いがあることが明らかになりました。

家族への相談ですら、ためらいが

最も身近な存在であるはずの家族。しかし、「症状を自覚したら家族に相談する」と答えた人は、がんの場合68.1%に対し、心の不調では56.9%と、11%以上も低い結果となりました。診断後もその差は依然として残り、心の不調を打ち明けることへの根強いハードルがうかがえます。

職場や学校には5人に1人しか相談しない現実

さらに深刻なのは、職場や学校への相談です。心の不調の症状を自覚した場合、相談を考える人はわずか21.9%。これは、がんの27.0%と比べても低く、学業や仕事への影響を心配している人の割合(心の不調49.8%、がん52.1%)がほぼ同じであるにもかかわらず、相談という行動には移せていない実態が浮き彫りになりました。

治療への第一歩「通院」にも壁

「症状を自覚したら病院に通う」と答えた人の割合は、がんの73.5%に対し、心の不調では63.4%に留まります。10人のうち3〜4人が、症状を感じていても定期的な通院をためらってしまう可能性があるのです。

この背景には、「心の病は気の持ちよう」「精神的に弱いから」といった社会的な偏見がいまだ根強く残っていることが考えられます。周りの目を気にするあまり、あるいは症状が見えにくいために「これくらいで…」と、専門家へ助けを求めることをためらってしまうのです。

世代間の意識差にこそ「希望」がある

しかし、暗いデータばかりではありません。社会が確実に良い方向へ変わりつつあることを示す「希望」のデータもあります。

心の不調をどれくらい身近に感じるかを年代別に調査したところ、驚くべき事実が判明しました。

20代では72.7%、30代では72.6%もの人々が、心の不調を「身近な問題」だと捉えているのです。 一方で、70歳以上ではその割合が29.6%に留まり、若い世代との間には40%以上の巨大な意識のギャップが存在します。

この若い世代の高い数字こそが、社会の希望です。SNSなどを通じて当事者の声に触れ、共感する機会が増えたことで、若い世代ほど心の不調に対する偏見が少なく、正しい知識を持っていると考えられます。彼らがこれからの社会の「当たり前」を作っていくことで、「心が疲れた」ときに、誰もがためらわずに「専門家に相談しよう」と言える社会が訪れるはずです。

その不調、婦人科で相談できるかもしれません

「理由もないのに気分が落ち込む」「わけもなくイライラする」「漠然とした不安がある」

こうした心のサインは、決してあなたのせいではありません。「甘え」でも「心が弱い」からでもないのです。特に女性の場合、その不調の裏には、私たち産婦人科医が専門とする領域が深く関わっている可能性があります。

その不調、もしかしたらPMS(月経前症候群)や、さらに精神症状が強いPMDD(月経前不快気分障害)、あるいは更年期症状産後うつが関係しているかもしれません。 これらはすべて、女性ホルモンの劇的な変化によって引き起こされる医学的な症状なのです。 ホルモンバランスの乱れは自律神経の乱れにつながり、気分の落ち込みや疲労感、つまりデータで多くの人が不安の原因として挙げていた「体力の衰え」として感じられることも少なくありません。

「年だから仕方ない」「忙しいから」と諦めてしまう前に、一度、婦人科に相談するという選択肢を持ってください。私たちは女性ホルモンの専門家として、低用量ピルや漢方薬、ホルモン補充療法など、様々な治療法を提案できます。

身体の病気と同じように、心の不調も、我慢せずに専門家に相談することが、あなたらしい毎日を取り戻すための一番の近道です。藤東クリニックは、いつでもあなたをお待ちしています。一人で抱え込まず、「助けて」と声を上げてください。

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