【働く女性の皆さんへ】「なんだか辛い…」はあなただけじゃない。データで見る、こころの不調の現実
「最近、疲れが取れないな…」「みんな頑張っているから、私も頑張らないと…」
そう感じながら、ご自身の心のサインに気づかないふりをしていませんか?
藤東クリニックの公式YouTubeチャンネル『藤東クリニック インサイト』では、女性の皆さんの心と身体に寄り添う情報を、信頼できるデータに基づいて分かりやすく解説しています。
今回は、新シリーズ「女性のこころの健康」の第1回目として配信された『【第1回】もしかして私だけ? 働く女性の「こころの不調」が増えているという現実』の内容を、記事としてご紹介します。
最新の公的データから見えてきたのは、多くの働く女性が今、深刻なストレスにさらされているという現実でした。この記事を通して、ご自身の心と身体を客観的に見つめ直し、大切にするきっかけにしていただけたらと願っています。
仕事が原因で心を不調に…労災認定は過去最多という事実
衝撃的なデータから見ていきましょう。仕事が原因で心の病気になったとして国に労災申請される件数は、この10年間で約2.13倍に増加しています。 そして、実際に労災と認定された件数も、2022年度には710件と過去最多を記録しました。
これは、社会全体のストレスレベルが上がっていることの動かぬ証拠と言えるでしょう。 そして、認定された方の背後には、声を上げられずに苦しんでいる方がもっとたくさんいるのかもしれません。
では、その原因は何なのでしょうか?
2022年度のデータで最も多かったのは『上司等からのパワーハラスメント』で147件。 次いで『悲惨な事故や災害の体験、目撃』が89件、『仕事内容・仕事量の大きな変化があった』が78件と続きます。 やはり、職場での人間関係や急な働き方の変化が、大きな負担となっているようです。
特に女性を追い詰める「セクハラ」と「いじめ」
さらに、女性にとって見過ごせないデータがあります。
- セクシュアルハラスメント(セクハラ)
- 2022年度にセクハラが原因で労災認定された97件のうち、実に94件(約97%)が女性でした。
- 同僚等からのいじめ・嫌がらせ
- この項目でも、認定された方の約6割を女性が占めています。
これらの数字は、パワハラだけでなく、性的な嫌がらせや同僚との関係といった、よりパーソナルなストレスが女性の心を追い詰めている現実を物語っています。 男性中心の価値観が根強い職場で意見が言えなかったり、キャリアを気にして理不尽を我慢してしまったり…。そうした構造的な問題も背景にあると考えられます。
あなたの職場も例外ではない。「10社に1社」で誰かが長期休職
強いストレスは、休職という形でキャリアをストップさせてしまうことにも繋がります。
2022年の調査では、「過去1年間にメンタルヘルスの不調で1ヶ月以上休んだ方がいる」と回答した企業の割合は10.6%にのぼりました。 つまり、日本の会社の10社に1社以上で、誰かが心の不調で長期のお休みをしていることになります。
特にストレスレベルが高いと言われる業種では、この割合はさらに高くなります。
- 情報通信業:36.3%(3社に1社以上)
- 金融・保険業:24.8%
もはや「他人事」とは言えない状況です。
衝撃の事実。病気で休む人の「3人に1人」が心の不調
さらに私たちの生活に直結する、より衝撃的なデータがあります。
病気やけがで仕事を休んだ時に生活を支える「傷病手当金」。この手当金が支払われた原因を調べたデータです。
平成7年(1995年)には、支給原因のうち心の不調(精神及び行動の障害)が占める割合はわずか4.45%でした。 ところが、令和3年(2021年)には32.96%にまで急増したのです。
これは、がんや心臓病、大きなケガなど様々な病気がある中で、傷病手当金を受け取って長期で休んでいる人の約3人に1人が、心の不調が原因だったことを示しています。
心の不調が、私たちのキャリアや生活を突然ストップさせてしまう、非常に大きなリスクになっているという紛れもない事実が、ここに表れています。
産婦人科医の視点:女性は「2つの波」にさらされている
ここまで見てきたような職場のストレスという『外からの圧力』。それに加え、産婦人科医として女性の皆さんに特に知っていただきたい視点があります。
それは、女性の身体は一生を通じてホルモンバランスが大きく変動し続けるという『内からの変化』です。
- 毎月の月経前の不調(PMS)
- 妊娠・出産によるホルモンの急激な変化
- 更年期における女性ホルモンの急減
これらの身体の変化だけでも、私たちの心は非常に繊細で、不安定になりやすい状態に置かれています。 実際に、心の不調で傷病手当金を受け取った方の割合は、男性(17.40%)よりも女性(18.79%)の方がわずかに高いというデータもあります。
社会的なストレスと、女性特有の身体の変化。この「2つの大きな波」にさらされることで、女性の心と身体のバランスは、時にぷつんと切れてしまいやすいのです。
「私だけじゃなかった」と知ることから始めよう
もし今、あなたが「最近疲れたな」「辛いな」と感じていたとしても、それは決してあなたの気持ちが弱いからでも、甘えているからでもありません。 今回見てきたように、その不調の背景には、社会や身体の変化といった、あなた一人の力ではどうしようもない大きな要因が存在するのです。
まずは、「私だけじゃなかったんだ」と知ること。そして「疲れた」と感じるご自身を、どうか責めないでください。 それが、回復への大切な第一歩です。