「一人で悩まないで」 心の健康を守る、未来のケアと今できること
「藤東クリニック インサイト」の動画シリーズ最終回では、現代女性が知っておきたい「こころの健康」について特集。最新データと共に、AIを活用した未来のメンタルケアや、今すぐ実践できる具体的なアクションを専門家が解説します。
「なんだか最近イライラする」「理由もなく涙が出る」——。慌ただしい毎日の中で、そんな心や体のサインを見過ごしていませんか?
女性の健康を多角的にサポートする「藤東クリニック インサイト」。動画シリーズ『産婦人科医と学ぶ、女性のための「こころの健康」大全』の最終回では、「これからの時代の心のケア」をテーマに、誰もが直面しうる心の不調とどう向き合っていくべきか、具体的なデータと最新の研究を交えて解説されました。
心の不調は「特別なこと」ではない、日本の現状
番組冒頭で示されたのは、日本の精神疾患患者数が約615万人(令和2年調査)にものぼるという衝撃的な事実です。 外来患者だけでも約586万人おり、これは決して他人事ではない数字と言えるでしょう。
特に外来患者の中で最も多いのが、うつ病などを含む「気分障害」で約169万人、次いで適応障害などを含む「ストレス関連障害」が約124万人。 この二つで、外来患者全体の半数を占めています。
さらに、うつ病は生涯のうちに100人に6人程度が経験すると言われ、特に女性は男性の約1.6倍から2倍リスクが高いという調査結果もあります。 これは、月経や妊娠・出産、更年期といったライフステージにおける女性ホルモンの大きな変動が、心の状態に直接影響を与えるためと考えられています。
心の健康を守るために大切な「3つのポイント」
番組では、私たちが心の健康を保つために、特に覚えておくべき3つのポイントが紹介されました。
- 正しい知識を持つこと: 心の不調は誰にでも起こりうる身近な問題であり、特に女性はリスクが高いという事実を知ることが第一歩です。「自分だけじゃない」と思えることが、心の負担を和らげてくれます。
- 早期に気づくこと: 体の健康診断と同じように、心の状態をセルフチェックする習慣が大切です。例えば、統合失調症では、発病から治療開始までの期間(DUP)が平均で約1年かかると言われ、この期間が長いほど回復に時間がかかる可能性が指摘されています。自分の心の声に早く耳を傾けることが、早期回復につながります。
- 一人で抱え込まないこと: これが最も重要であり、今回の最大のテーマです。しかし、「どこに相談すればいいか分からない」と、一人で悩みを抱え込んでしまう人は少なくありません。
未来のケア:AIが「心の疲れ」を教えてくれる時代へ
相談へのハードルを下げ、より多くの人を支える可能性を秘めているのが、AI(人工知能)技術です。現在、国立精神・神経医療研究センターなどを中心に、AIを活用して精神科のケアを向上させる研究が進められています。
例えば、カウンセリング中の会話や声のトーンをAIが分析し、その人に合った治療法の効果を予測したり、将来的にはスマートフォンの操作パターンや表情から「少し心が疲れているサインかもしれません」と不調の兆候を本人も気づかないうちに知らせてくれたりする技術が期待されています。
このような「超高精細精神ケア」が実現すれば、AIが適切な専門家や相談窓口を提案してくれるようになり、専門家はより治療が必要な人に集中できるため、医療全体の質の向上が見込まれます。
今すぐできること:「産婦人科」を心と体の最初の相談相手に
未来の技術に希望を抱くと同時に、私たちが「今すぐ」できることもあります。番組で産婦人科医が最も強く伝えたメッセージは、「私たち産婦人科医を、気軽に頼ってほしい」ということでした。
前述の通り、女性ホルモンの変動は心の不調に直結します。「最近、寝つきが悪い」「ささいなことで不安になる」といった症状は、体の問題だけでなく、心のサインかもしれません。また、摂食障害のように、10代から20代の女性に多く見られる心の不調もあります。
産婦人科医は、体と心の両面から女性の生涯をサポートする専門家です。生理や避妊の相談のついでに、「実は最近…」と心のもやもやを話すだけで、解決の糸口が見つかるかもしれません。かかりつけの産婦人科を「心と体の最初の相談相手」として、ぜひ頼ってみてください。
セルフケアとしては、まず「5分だけ、自分のために時間を使う」ことを意識するのがおすすめです。好きな音楽を聴く、温かいお茶を飲む、窓を開けて深呼吸するなど、どんな些細なことでも構いません。
心の健康は、特別なことではなく日々の暮らしの延長線上にあります。この動画シリーズが、あなた自身と、あなたの周りの大切な人の「こころの健康」について考えるきっかけとなれば幸いです。
そして、どうか一人で抱え込まないでください。心配なことがあれば、藤東クリニックをはじめ、身近な専門家にお気軽にご相談ください。