【危険なサイン】日本女性の20人に1人が経験。産婦人科医が教える『うつ病』の初期症状と3分セルフチェック

「なんだか最近、心が疲れているかも…」女性のためのうつ病セルフチェックと早期発見の重要性

現代社会を生きる中で、心の不調を感じることは誰にでも起こり得ます。特に女性は、ホルモンバランスの変化やライフステージごとの役割など、心身に影響を与える要因が多く存在します。

本記事では、ご自身の心の状態を客観的に把握するための一助として、信頼性の高いセルフチェックの方法をご紹介するとともに、不調を感じた際に早期に対応することの重要性について解説します。

日本のメンタルヘルスの現状と女性のうつ病

最新の公的データである「令和6年版厚生労働白書」によると、2020年時点で精神疾患により医療機関で治療を受けている患者数は、全体で約615万人、そのうち外来患者数は約586万人にのぼります。

外来患者の中で最も多いのが、うつ病などを含む「気分(感情)障害」で、その数は約169万人と、全体の約29%を占めています。 この数字は、気分の落ち込みといった症状が、決して他人事ではない身近な問題であることを示しています。

さらに、うつ病は女性の方が男性よりも約1.6倍から2倍かかりやすいという調査結果もあり、女性にとって、日頃から自身の心の状態に気を配ることが特に重要であると言えます。

こころの状態を知る「体温計」:セルフチェック『QIDS-J』

「病院に行くのは少し勇気がいるけれど、自分の状態を知りたい」と感じる方のために、自宅で手軽に試せるセルフチェックがあります。今回ご紹介するのは、『QIDS-J(クイッズ・ジェイ)』という、非常に信頼性の高いセルフチェックリストです。

QIDS-Jとは?
* 世界的に著名な精神科医によって開発され、世界10カ国以上で利用されている信頼性の高いチェックリストです。
* 16個の簡単な質問に答えるだけで、最近1週間の心の状態を客観的に振り返ることができます。
* うつ病の重症度を評価でき、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM)にも対応した本格的なものです。


【重要】セルフチェックご利用にあたっての注意点

このセルフチェックは、あくまでご自身の状態を客観視するための「目安」です。これだけで病気を診断するものでは決してありません。 点数が低くても、ご自身が「つらい」と感じているのであれば、それが最も大切なサインです。心配な方は、必ず専門の医療機関にご相談ください。


QIDS-J セルフチェックリスト

ご自身のこの1週間の状態に、最も近いものを選んでみてください。

【睡眠について】(項目1〜4)
不眠だけでなく、眠りすぎてしまう「過眠」もサインの一つです。
* 1. 寝つき: 寝つくのに30分以上かかることはありましたか?
* 2. 夜中の睡眠: 夜中に目が覚めてしまうことはありましたか?
* 3. 早朝の目覚め: 予定より早く目が覚めてしまうことはありましたか?
* 4. 睡眠時間: いつもより眠りすぎてしまうことはありましたか?

【気分について】(項目5)
* 5. 悲しい気持ち: 1人の時間や、ふとした瞬間にどうしようもなく悲しくなったり、涙が出たりすることはありましたか?

【食欲・体重について】(項目6〜9)
食欲不振だけでなく、甘いものなどを過剰に食べてしまう「過食」も注意が必要です。
* 6. 食欲の低下: 食欲が落ちたと感じますか?
* 7. 食欲の増加: 逆に食欲が増えたと感じますか?
* 8. 体重の減少: この2週間で体重が落ちましたか?
* 9. 体重の増加: この2週間で体重が増えましたか?

【集中力・意欲・自己評価について】(項目10〜14)
* 10. 集中力/決断力: 本の内容が頭に入ってこなかったり、簡単な決断ができなかったりしますか?
* 11. 自分についての見方: 自分自身に失望したり、自分を価値のない人間だと感じたりしますか?
* 13. 興味・関心: これまで楽しめていた趣味が面白いと感じられなかったり、友人と会うのが億劫になったりしますか?
* 14. エネルギーレベル: 朝から体が鉛のように重い、といった強い疲労感はありますか?

セルフチェックの結果と向き合う

これらの質問に答えることで、ご自身の心と体の状態を客観的に振り返ることができます。もし点数が高めに出た場合、不安に感じるのは当然です。

しかし、最も大切なのは、点数という結果よりも、ご自身が「毎日つらい」「しんどい」と強く感じているその感覚を信じることです。その感覚こそが、専門家に相談すべき何より重要なサインなのです。

なぜ「早期発見・早期治療」が重要なのか?

心の不調を感じた時に、我慢せずできるだけ早く専門家に相談することが、なぜこれほど大切なのでしょうか。それには「DUP(Duration of Untreated Psychosis)」という考え方が関係しています。

DUPとは、「病気を発症してから、治療を開始するまでの期間」のことです。 このDUP、つまり治療を受けずにいる期間が短いほど、その後の回復が良好であることが、多くの研究で分かっています。

逆に、未治療期間が長引くほど、症状が悪化・慢性化するリスクが高まります。 これは虫歯と同じで、初期段階で治療すれば簡単に済むものが、放置することで大きな治療が必要になるのと似ています。心の不調も、早くケアを始めることで回復がスムーズになり、その後の人生をより良く過ごせる可能性が高まるのです。

一人で抱え込まず、専門家へ相談を

今回のセルフチェックは、ご自身の心の状態を知るためのきっかけです。うつ病は特別なことではなく、特に女性にとっては身近な病気です。

藤東クリニックでは、産婦人科として生理や妊娠、更年期といった女性の生涯のパートナーとして、体の不調はもちろん、その背景にあるかもしれない「こころのつらさ」にも寄り添います。「なんだか最近おかしいな」と感じたら、それは体と心からの大切なサインです。

どんな些細なことでも構いません。心配なことがあれば、どうぞお一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。

藤東クリニックのウェブサイトでは、WHO(世界保健機関)が作成したセルフチェックを元にした『SRQ-D Webアプリ』も公開しています。 こちらは今回のQIDS-Jよりもさらに手軽に試せますので、ぜひご利用ください。

うつ病スクリーニング

最新情報をチェックしよう!