藤東クリニックお悩み相談室~茶色いおりものについて~
茶色いおりものが出る原因は病気?
血液が混ざったおりものは、茶色く見えることがあります。出血の原因は生理的なものや、病気や外傷によるものなど様々です。
主な生理的要因としては、月経の始まりや終わり際、排卵や着床による微量の出血などが挙げられます。外傷によるものは、セックスや検査により腟内に傷が付いたことが考えられるでしょう。感染症・腫瘍など、病気の炎症による出血が起こることもあります。
おりものが出たときに、生理周期のタイミングや痛みの有無、外傷の原因となる行為などがあったかどうかを合わせて確認することで、ある程度原因を判断することができるでしょう。
生理前後に茶色いおりものが続くのは異常?
月経期間の前後は、経血がおりものに混ざって排出されることがあります。その時期であれば、茶色のおりものが出ても、必ずしも健康に問題がある訳ではありません。
しかし、前後1週間以上など長期に渡り茶色いおりものが出続けたり、痛みや違和感があったりするときは、何らかの疾患がある可能性があります。なるべく早く婦人科を受診し、原因を特定しましょう。
もっと知りたい「茶色いおりもの」について
茶色いおりものが出る原因と対処法
原因(1)生理前後
生理は栓を開閉するように瞬時に切り替わる訳ではなく、剥がれた子宮内膜が少しずつ腟を通って排出されていきます。経血は2日目から3日目をピークに減り始め、通常5日~1週間程度で徐々に生理が終わります。
生理が始まったばかりの頃と終わり間際には、経血の混ざった茶色のおりものが出ることがあります。このタイミングで茶色いおりものが出るのは自然な現象ですが、長期間出続ける場合は、一度病院で診察を受けることをおすすめします。
原因(2)排卵出血
排卵の時期にも、茶色のおりものが出ることがあります。
排卵により破れた卵胞が腹膜を刺激するため、「排卵痛」と呼ばれる痛みを感じる場合があります。その卵胞が破れる際に流れ出た少量の血液が、おりものに混ざって排出されるために、茶色やピンク色のおりものが出るのです。
これは「排卵出血」「中間期出血」と呼ばれる現象で、生理的なものですので、過度に敏感になることはありません。通常は2~3日で治まります。
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原因(3)ホルモンバランスの変化
不正出血により、茶色いおりものが出ることもあります。
月経や排卵など生理的な現象以外での出血を、不正出血と呼びます。不正出血には「器質性出血」と「機能性出血」の2種類があります。
機能性出血の原因は主にホルモンバランスの変化で、不正出血全体の約3割が機能性出血だと言われています。過度な疲労やストレス、ダイエットなどによって、ホルモンバランスが乱れることで出血が起こります。
機能性出血は、ホルモンバランスが不安定になりやすい思春期や更年期、ピルを服用し始めたときに起こることも多いです。
原因(4)腟内に傷がついている
腟内の傷や炎症によって出血したときも、おりものに血が混ざり、茶色くなります。
十分に腟内が濡れていない状態での性行為や自慰行為は、強い摩擦によって腟内の粘膜が傷付き、血が出ることがあります。腟内の検査時に、器具などで傷が付いて出血することもあります。
また、病原菌の感染によって腟内に炎症やびらんを発症していたり、ポリープやがんが発生したりしていると、性行為などで患部に接触したときに出血する場合があります。このように、病気が原因である不正出血を「器質性出血」と呼びます。茶色いおりものに加え、痛みや違和感があるときは、クリニックを受診してください。
原因(5)着床出血・流産・異所性妊娠(子宮外妊娠)
避妊せず性交渉をしており、生理予定日の前後に少量の出血や下腹部に軽い痛みがある場合、妊娠超初期の着床出血である可能性があります。
受精卵が着床する際に微量の出血が起こり、茶色いおりものとして出ることがあるのです。着床出血が起こるのは大体妊娠4週頃で、出血の期間は個人差がありますが、長くて3日程度です。
その後、妊娠中に茶色いおりものが出たときは、流産や切迫流産、異所性妊娠(子宮外妊娠)などによる出血の可能性があります。必ずすぐに主治医に相談しましょう。
茶色いおりものが出る主な病気・感染症
病気(1)子宮がん・子宮頸がん
子宮がんには、大きく分けて「子宮頸がん」と「子宮体がん」があります。
子宮頸がんは、子宮の入り口の筒状になっている子宮頸部にできるがんを指します。ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって起こるとされており、後発年齢は30~40代です。
子宮体がんは、子宮の内部を覆っている子宮内膜から発生するがんです。子宮内膜は生理によって剥がれ落ちて入れ替わるため、閉経後の50~60代に多く発症する傾向があります。子宮体がんの発症は、女性ホルモンのエストロゲンと関わりが深いと考えられています。
子宮頸がんも子宮体癌も不正出血が症状の1つで、生理前後や排卵などの生理周期に関係なく茶色のおりものが出ることがあります。
万が一発見が遅れ、進行がんになると、骨盤内のリンパ節など他の臓器に転移する恐れがあり、予後を左右します。気になる不正出血が続いたら、すぐに病院を受診しましょう。不正出血や痛みなどの症状がなくても、定期的にがん健診を受けておくと安心です。
子宮頸がん・子宮体がんの主な症状
- 不正出血
- 下腹部痛
- 腰痛
- 性交痛
- 排尿痛
病気(2)子宮筋腫
子宮の筋肉にできる、こぶのような良性の腫瘍を「子宮筋腫」と言います。悪性腫瘍のがんとは異なり、転移などの恐れはほとんどありません。しかし、できた場所や大きさ、数によって、症状やその度合いが変わります。
目立つ症状としては、月経痛や生理不順、経血の量の増加が挙げられます。子宮内に腫瘍がこぶ状に出っ張ることで、子宮内膜の表面積が増えます。その分、子宮内膜の剥がれ落ちる量が増えるため、経血の量が増えると考えられています。経血の量が増えることで、生理がなかなか終わらずに、茶色のおりものがダラダラと出る「過長月経」になる可能性があるのです。
子宮筋腫が大きくなると、神経や他臓器を圧迫し、腰痛や頻尿、便秘になる場合があります。着床しにくい傾向から、不妊の原因になることもあります。
子宮筋腫の主な症状
- 不正出血
- 月経過多
- 生理不順
- 過長月経
- 経血の量が増える
- 貧血
- 強い生理痛
- 腰痛
- 頻尿
- 便秘
- 不妊
病気(3)子宮頸管ポリープ
子宮頸管ポリープとは、子宮頸部の組織が増殖し、キノコのように突き出た良性の腫瘍を指します。妊娠経験のある30~50代の女性に多く見られます。
通常時は痛みを感じませんが、ポリープ部分は出血しやすい状態です。性交時や排便時、または激しい運動などでポリープが刺激されると出血し、茶色いおりものが出ることがあります。性交痛を感じる場合もあります。
子宮頸管ポリープの主な症状
- 不正出血
- 性交痛
- 性交時の出血
- おりものの量が増える
病気(4)クラミジア感染症
「クラミジア・トラコマチス」という菌が病原体の、日本で最も多い性感染症です。
女性の約8割は無症状と言われていますが、気付かずに放置すると、子宮頸管炎や子宮内膜症を発症したり、お腹の中で癒着や炎症が広がって骨盤腹膜炎などを引き起こしたりします。不妊や異所性妊娠(子宮外妊娠)、流産や早産の原因にもなるため、できるだけ早い治療が必要です。
無症状の女性が大半ですが、初期症状として、おりものの増加、茶色いおりものが出る、生理痛のような下腹部痛や発熱、性交痛などが多く現れます。
性行為やオーラルセックスで感染するため、治療しないままコンドームをせずに性交渉をすると、相手の男性にうつしてしまう可能性があります。
おりものの異変や痛みなどの違和感が生じたときは、なるべく早く病院を受診し、パートナーや感染している可能性のある相手との性交渉は避けるようにしましょう。
クラミジア感染症の主な症状
- 不正出血
- おりものの量が増える
- 下腹部痛
- 発熱
- 性交痛
茶色いおりもので通院すべきサイン
出血量が増えている・鮮血が出る
生理周期と関係なく茶色いおりものが出る、生理の終わり頃に突然出血量が増える、おりものに鮮血が混ざるなどの場合は、何らかの異常が生じている可能性があります。
腟内に傷がある場合は、傷口から細菌感染を起こす可能性があります。炎症やびらん、がん、ポリープなどが発症していることも考えられます。
傷の度合いや細菌感染の有無、がんやポリープなどの病気が隠れていないか確認するためにも、まずは早めに婦人科を受診しましょう。
腹痛や腰痛がある
茶色いおりものが出ていて、さらに身に覚えのない慢性的な腹痛や腰痛があるときは、子宮筋腫やクラミジア、がんなどに罹患している可能性があります。
仮に生理前後だとしても、痛みを伴う不正出血を放っておくのは危険です。子宮筋腫や子宮内膜症など、症状が進むほど体への負担が増えていく病気も多いので、できるだけ早く病院で診察を受けましょう。
排尿痛や性交痛がある
不自然な茶色いおりものと排尿痛、または性交痛があるときも、クラミジアやがんなどの疑いがあります。慢性的な出血と排尿痛や性交痛が続く場合は、すぐに病院を受診しましょう。
性交痛のみであれば、潤い不足による摩擦が原因で出血している可能性があります。しかし、摩擦によってできた傷が細菌感染を起こすことも考えられるため、茶色いおりものが出たら婦人科への相談がおすすめです。
合わせて知りたい、茶色いおりものケア
ケア方法(1)デリケートゾーンは清潔に
おりものの汚れをケアせずに放置しておくと、雑菌が繁殖し、臭いやかゆみの原因となります。特に茶色いおりものが出ている時は、出血を伴っているため、さらに雑菌が繁殖しやすい環境が生まれます。
デリケートゾーン用のソープなど刺激の少ない石鹸を使い、日々清潔に保ちましょう。
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ケア方法(2)アンダーヘアを処理する
アンダーヘアが濃いとショーツ内が蒸れてしまい、雑菌が繁殖しやすくなります。おりものが多い時期や生理中は特に湿度が高くなり、より不快感が増すため、アンダーヘアをカットして整えておくと良いでしょう。
アンダーヘアを自己処理する場合は、ハサミや剃刀よりも、熱で毛を焼き切るヒートカッターがおすすめです。毛の切り口が丸くなり、チクチクとした不快感やショーツからの突き抜けが軽減します。
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ケア方法(3)性行為での潤い不足をケア
病気がないにも関わらず、性行為後に茶色いおりものが出やすい場合は、潤いが不足した状態での強い摩擦により、腟内が傷付いて出血しているのかもしれません。
挿入時に、腟内の潤いをサポートする潤滑ゼリーやローションを使用すると、潤い不足による摩擦や違和感を改善できる可能性があります。
傷口から細菌が入ることもあるため、痛みは決して我慢せず、無理をしないことが大前提です。補助的にサポートアイテムを活用し、挿入時の潤い不足をケアすると良いでしょう。
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茶色いおりものは出血が原因!違和感があれば病院へ
茶色いおりものが出る理由は、何らかの原因による出血だと考えられます。生理前後や排卵の時期であれば、過敏になる必要はありません。しかし、不自然なタイミングや慢性的な出血には、大きな病気が隠れている可能性があります。
ホルモンバランスの乱れも、不正出血が起こりやすい原因の1つです。疲れやストレスはその日の内に解消するように努め、できるだけ規則正しい生活を心がけてみましょう。
生理周期と関係なく茶色いおりものが出たら、特に長期間出ているときや痛みを伴うときは、迷わずクリニックを受診してください。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。