藤東クリニックお悩み相談室~濡れない悩みについて~
セックスで濡れないのは体がおかしい?
腟が濡れないという現象は珍しいことではなく、多くの女性が経験しています。腟が濡れにくい原因は、その日の体調や気候、ストレス、ホルモンバランスの乱れなど様々です。濡れること自体がデリケートな反応なので、決して自分だけがおかしいと思い悩む必要はありません。
セックスの経験が浅いために、慣れない緊張で濡れにくいこともあります。その場合、徐々に慣れてパートナーとの時間を楽しむ余裕ができてくると、いつの間にか自然と濡れるようになることも多いです。
濡れない悩みを病院で解決することはできる?
婦人科で原因を追究し、改善のためのアドバイスをすることは可能です。もし病院に行くことを迷っているようであれば、まずは自身で生活を見直してみても良いでしょう。
自律神経が大きく関わるため、睡眠をしっかり取る、規則正しい生活を送るなどで体調を整えたり、日頃からストレスの解消を意識したりなど、意識してみてください。水分を摂るといった物理的な方法も有効です。ちょっとした工夫だけでも濡れるようになる可能性がありますので、すぐにできそうなことを試してみると良いでしょう。
一方で「濡れやすい体作りをする」他に、「濡れないときはアイテムで潤いを補う」という解決方法もあります。自分に合った方法を選んびましょう。
もっと知りたい「濡れない悩み」について
腟が濡れるメカニズム
女性の腟は、性的興奮や物理的な刺激によって、潤滑や体の防衛のために濡れる仕組みになっています。濡れない原因を理解するために、まずは腟が濡れるメカニズムを知っておきましょう。
~女性の腟が濡れる仕組み~
- 性的な興奮により「オキシトシン」が分泌される
- 下半身に血流が流れ込み、腟壁周辺の毛細血管が広がる
- 腟壁の血管の隙間から潤滑液が滴り落ちる
腟を濡らす潤滑液の主な成分は、血液の液体成分である「血漿」です。腟が濡れる仕組みや潤滑液の成分から、腟が濡れるためには血流が重要であることが分かります。
また、「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシンは、ホルモンバランスが乱れていると分泌されにくくなります。これも、濡れない原因に繋がる要素です。
セックスで濡れない理由
緊張、セックスへの抵抗感がある
初体験や数回目など、セックスの経験がまだ浅い方は、抵抗感や緊張で濡れにくいことがあります。緊張や恐怖を感じていると性的興奮が高まらず、オキシトシンが分泌されにくくなるためです。
また、一度セックスでの痛みを経験すると「また痛いかもしれない」と体に力が入り、受け入れる気持ちになれないことから、濡れない場合もあります。
何らかの要因でセックスに対して嫌悪感や拒絶反応が出てしまうようであれば、その元となる不安因子を取り除くことから始めましょう。
加齢やホルモンバランスの影響
更年期は、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下することで、腟内の乾燥や腟の委縮が起こりやすく、濡れにくいと感じる場合があります。
妊娠や出産によってホルモンバランスが変化する時期にも、以前より濡れなくなるケースがあります。産後については一時的であるケースが多いので、ホルモンバランスが落ち着けば濡れるようになるでしょう。
その他に、生理前もエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が低下するため、腟内が濡れないことがあります。急激なホルモンバランスの変動が原因だと考えられている「月経前症候群(PMS)」は、イライラしたり、何事にも集中できなくなったりといった気持ちの面での不調が現れます。この症状が影響し、セックスをする気分になれずに濡れにくくなるという可能性もあります。
体質
体質的に濡れない女性も一定数います。
腟が濡れるためには、血液循環が重要です。体質的に過度の冷え性で血行不良があると、性器周りの毛細血管も収縮しているため、濡れにくい可能性があります。
また、普段から水分摂取をしないことも、濡れにくさの原因となります。人間の体は約6割が水でできています。血液の循環を改善するには十分な水分量が必要で、慢性的な水分不足になっていると、やはり血行不良のために濡れなくなってしまうのです。
気持ちが乗らない
腟内を濡らすには、キスやボディタッチなどにより分泌する「オキシトシン」という幸せホルモンが、性器を充血させる過程が必要です。パートナーに対して愛おしさを感じていない場合、オキシトシンが分泌されず、濡れにくくなります。
普段は好きな気持ちがあっても、疲れていたりストレスを抱えていたりすると、セックスをする気分になれず、濡れなくなる可能性があります。
気分が乗らないときに無理を押してセックスをすると、自身の気持ちに負荷が掛かってしまいます。濡れないほど気持ちが乗らないときは、セックスを断ることも1つの選択肢です。
愛撫のやり方が適していない
濡れるためには、「気持ちいい」と感じることでオキシトシンが分泌される必要があります。つまり、快感ではない刺激が続くことが濡れにくさに繋がるのです。
愛撫の仕方が好みでない、痛みがあるなど違和感があると、交感神経が優位になります。すると血管が収縮し、腟内が濡れにくくなるのです。気持ちよくないセックスを続けることは、精神的な我慢や腟内の痛みなど、腟・心・体全てを傷付けることに繋がります。早い段階で、パートナーに適切な愛撫の仕方を伝えましょう。
セックスで濡れないことによる問題点
問題(1)痛みを感じやすい
腟が濡れていない状態で挿入すると、愛液による潤滑効果が薄れるため、動いたときに摩擦で腟の痛みが発生する可能性があります。
外陰部も、愛液がない状態で強く触れると、擦れて痛みを感じることがあります。
藤東クリニックお悩み相談室~性交痛について~ 相談者 彼氏と初めてセックスをしてからしばらく経つのですが、正直痛いです。何回か経験を積めば自然と痛くなくなるのかと思ったのですが、あとどのくらい我慢すれば痛くなくなるのでしょう[…]
問題(2)性器が傷付きやすい
オキシトシンの分泌により性器が充血すると、ペニスを受け入れる準備が始まります。愛液が分泌されるだけでなく、性器がふっくらし、伸縮性が出てきます。
しかし、その反応がないと性器周りは硬いままで、指で触れたときやペニスを挿入したときの激しい動きに対応できないことがあります。摩擦で腟壁が傷付くだけでなく、強く引っ張られると裂傷などの怪我に繋がりかねません。濡れていない状態での無理なセックスは、性器を傷付けてしまう可能性が高いのです。
問題(3)セックスへの抵抗感が増える
痛みを感じると、セクシャルな気分がしぼんでしまい、濡れなくなればなるほど不安が募るでしょう。痛さそのものだけでなく、濡れていないことをパートナーに指摘される不安や、セックスを中断しなければならないことへの申し訳なさも相まって、さらに気持ちが落ちてしまいます。
これが何度も続くと、「またセックスが途中でできなくなってしまうかもしれない」「痛みが出たらどうしよう」という心配に繋がり、セックスに対して抵抗感が生じてしまいます。さらに無理に続けると、その不安からまた濡れなくなり、痛みが発生してセックスができない…という悪循環に陥りかねません。
性交痛があるときは、セックスをするときにどうしたら良いのかパートナーに相談し、話し合うことが大切です。
セックスで濡れない悩みの解消法
解消法(1)潤滑ジェルを使う
濡れないものを無理に濡らすことは、当然難しいものです。「濡らさなきゃ」と思うとプレッシャーになり、余計にセクシャルな気持ちから離れてしまいます。
濡れにくいときは自身で頑張ろうとせず、潤滑ジェルを使って、セックス時の動きをサポートしましょう。十分に濡れていない状態で無理に挿入し動かすと、腟に傷が付く可能性があるため、セックスの早い段階で潤滑ジェルを使うのがおすすめです。
解消法(2)自分で気持ちいい場所を知る、感度を磨く
セックスに慣れていない、愛撫をされても気持ちよくなれない方は、まず自分で感じる場所を知っておくことが大切です。どう触れれば濡れるのかが分かっていれば、パートナーの愛撫の仕方をフォローしたり、自分から感じるように動いたりできます。
感度が磨かれることで、セックスに対する感情がポジティブになり、セクシャルな気持ちが高まって、濡れやすくなるかもしれません。指や挿入するタイプのラブグッズを使い、感度磨きにチャレンジしてみましょう。
解消法(3)水分を意識的に摂る
血行を改善するためには、水分が不可欠です。水分が不足していると、血液循環が滞り濡れにくくなるため、普段から水分をしっかり摂ることを意識しましょう。
目安は1日2リットル。水分を摂ると代謝が上がり、むくみなども改善されますので、健康のためにもしっかりと水分を摂ることをおすすめします。
解消法(4)ビデオなどで気持ちを盛り上げる
セックスのときの腟の潤いは、精神面の影響がとても大きいです。マンネリやストレスで気分が乗らないときは、気持ちを盛り上げる工夫をしてみましょう。
例えば、セクシーな動画や漫画で気分を高めたり、パートナーと一緒にネットでセクシャルなアイテムのお店を見てみたり。セックスに対しての興味が湧くような、自分なりのスイッチが見つかると、気持ちが盛り上がって濡れやすくなるかもしれません。
濡れない悩みにおすすめのアイテム
(1)ジェルたっぷりのコンドーム
最初は濡れていても挿入の最中に乾いてしまう方は、ジェル付きのコンドームの使用がおすすめです。温かく感じるタイプのジェルであれば、挿入がより気持ちよく感じられるでしょう。
また、コンドームの素材が合わないと、不快感によって濡れなくなることがあります。ゴムのきしむ感触が苦手であれば、ポリウレタン製のコンドームや素肌に近い触り心地の商品を選ぶなど、少しでも違和感のないものを探してみましょう。
自分に合うコンドームを選ぶことで、自然と潤いが続くようになるかもしれません。
(2)潤滑ジェル
ジェル付きコンドームだけで不足を感じるのであれば、さらに潤滑ジェルをプラスしてみましょう。必要に応じて足しながら使えるため、行為中の乾燥に都度対応することができます。
コンドームと併用する場合、水溶性の潤滑ジェルを選ぶことが重要です。油性のジェルの場合、コンドームが破れてしまう可能性があります。
パートナーがジェルを使うことに抵抗があるようであれば、気付かれずに自身にこっそり付けられる、潤滑サポートのための美容液もあります。くれぐれも無理をせず、潤滑アイテムを上手く利用しましょう。
また、初めての性行為で「潤滑ジェルを使いたい」と言い出すことが恥ずかしい方もいるかもしれません。そのような場合には、彼に伝えることなく内緒で使えるタイプの潤滑アイテムを用いる方法もあります。
(3)ベッド用美容液
自然に濡らしたい方は、「ベッド用美容液」で感じるところをマッサージして、気分を高めてみましょう。
柔らかいテクスチャーの美容液を敏感なところに適量塗布し、ゆっくりマッサージすると、温かくなって気持ちが高まり、いつもと違う快感が得られるかもしれません。
自分で塗布しても良いですし、パートナーに渡しても良いでしょう。塗り込む行為によって自然と愛撫が充実し、快感が高まれば濡れやすくなります。いつものセックスや愛撫にマンネリを感じて濡れにくくなっている場合は、こういったアイテムを活用するのもおすすめです。
(4)ラブグッズを使う
普段の愛撫で気分が盛り上がらない場合は、ラブグッズを使って刺激する方法もあります。男性が、自分の体ではないパートナーの気持ちいい場所を的確に探し当て、快感を与えるのは難しいことです。指よりもラブグッズのほうが多彩な刺激が可能ですので、ラブグッズを使った刺激を取り入れることで、もっと確実に快感を得られるかもしれません。
ラブグッズを前戯に取り入れると、行為自体がいつもより刺激的であることに興奮度が高まり、濡れやすくなる可能性もあります。マンネリの解消にも役立つでしょう。
濡れない痛みを我慢しないことが大切
腟が濡れない背景には、体質やホルモンバランス、心身の調子など、様々な要因があります。短期的な対策として、潤滑ジェルやコンドームなどを取り入れましょう。まずは痛みを我慢し続けないことが大切です。
そして長期的な対策は、濡れない原因を追究し改善を図ることです。日頃の疲れが抜けていない、またはストレスが溜まっているのであれば、日常生活の見直しが必要です。健やかな心身を目指すことで、濡れにくさの改善に繋がるでしょう。
どうしても原因が分からない、濡れない不安が拭えないときは、クリニックを受診し、医師に相談することもできます。自分の心と体を守るためにも、無理をしないことが一番重要です。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。