緊急避妊薬とは?仕組みや注意点を解説

藤東クリニックお悩み相談室~緊急避妊薬について~

相談者
彼とセックスをしたらコンドームが破れてしまいました。セックスの後でも服用すれば避妊ができる「緊急避妊薬」というものがあると聞いたのですが、どこで買えますか?
藤東先生
今回は緊急避妊薬について解説しましょう!

緊急避妊薬って、何?

緊急避妊薬とは、コンドームの破損などによって避妊効果がない、もしくは避妊しないで性交した場合に、緊急的に使う避妊薬です。アフターピル、モーニングアフターピルとも呼ばれます。緊急避妊薬は性行為後、72時間(3日)以内に服用しなければなりません。

ただ、緊急避妊薬を服用しても、0.7%は妊娠を防止できないと言われており、100%妊娠しない訳ではありません。

緊急避妊薬の入手方法は?ドラッグストアや薬局で買える?

2022年9月現在、緊急避妊薬は医師が処方する薬で、薬局やドラッグストアでは手に入りません。必ず婦人科や産婦人科を受診する必要があります。

2023年11月28日より、全国の145店舗の薬局・ドラッグストアで「モーニングアフターピル」の試験販売が開始されました。これにより、条件に合致する方は該当の店舗で通院や処方箋がなくても緊急避妊薬を購入することが可能となりました。

「条件に合致する方は」と記載した通り、すべての方が薬局で緊急避妊薬を購入できるわけではありません。薬局で購入できるのは「16歳以上の緊急避妊を必要とする本人」などいくつかの条件があります。

緊急避妊薬を薬局で購入できる条件やかかる費用

薬局での緊急避妊薬の購入には、下記のような条件が設けられています。

  • 16歳以上の緊急避妊を必要とする本人
  • 16~17歳の未成年者は、保護者等の同意がある者(薬局に保護者同伴で購入に来ること、また保護者が身分証明書を提示できること)
  • 緊急避妊薬試験販売の研究について理解し、同意書に同意する者
  • 必要な身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、健康保険証等)を持参している者
  • スマートフォンや送受信が可能なメールアドレス(参加同意やアンケートで使用)を持っていること

例えば男性や、女性であっても16歳未満の方や代理人、すでに妊娠が判明している方、妊娠の可能性がある性交から72時間以上経過している場合などは薬局で購入できないため注意が必要です。

薬局での購入は、突然薬局に行けば購入できるというわけではありません。必ず店舗に向かう前に、購入希望の薬局に電話で確認・相談するようにしましょう。

緊急避妊薬の金額は、基本的に7000~9000円くらいです。ただし薬局での購入時に妊娠検査薬での確認を求められることもあります。その場合追加で1000~1500円程度かかるため、余裕をもって1万2000円くらい用意しておくといいでしょう。なお購入後は、緊急避妊薬をその場で薬剤師の前で服用する形になります。

緊急避妊薬を購入できる条件や流れ、具体的な店舗については、下記サイトをご覧ください。

緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業(厚生労働省医薬局医薬品審査管理課委託事業)|公益社団法人 日本薬剤師会

緊急避妊薬はオンライン診察で処方を受けることも可能

また、最近では緊急避妊薬はオンライン診察での処方も可能になっています。オンライン処方の場合は、オンライン診察を実施している病院を受診すると、病院からFAXなどで薬局に処方せんが送付されます。その後薬剤師からオンラインで服薬指導があり、薬が自宅に送付されます。オンラインは手軽ではありますが、手に入れるまで少々時間がかかるため、72時間以内の服用が難しい時は、直接の受診がおすすめです。

なお、緊急避妊薬は自費診療となり、健康保険は適用されません。費用は1万円程度を想定しておくと良いでしょう。

もっと知りたい「緊急避妊薬」について

緊急避妊薬とは

緊急避妊薬の仕組みと効果

(1)排卵の抑制

緊急避妊薬を飲んだタイミングが、自身の月経周期のいつに当たるかによって、妊娠を防ぐ作用に違いがあります。

まず、妊娠が成立する仕組みを解説しましょう。精子が射精により子宮内から卵管に入り、排卵された卵子と出会って受精し、受精卵となります。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、子宮内へと移動し、子宮内膜に着床すると、妊娠となります。

もし、排卵する前に緊急避妊薬を服用した場合は、排卵を阻害する作用によって、妊娠を防ぎます。

(2)受精卵が子宮に着床するのを阻害

すでに排卵した後に緊急避妊薬を飲んだ時は、多量の女性ホルモンを投与することで、受精卵の着床を防ぎます。

着床するには、子宮内膜に厚みが必要です。しかし薬の効果で子宮内膜の増殖を抑制するため、薄い状態になり、授精していたとしても着床しにくくなるのです。

緊急避妊薬の種類

緊急避妊薬には、レボノルゲストレル(ノルレボ)とヤッぺ法、ウリプリスタール(エラ)の3種類があります。日本では主にレボノルゲストレルかヤッぺ法が主流です。どちらも作用は同じですが、内容や飲み方が異なります。

レボノルゲストレルは、黄体ホルモンを主成分とした薬で、性交渉の後72時間以内に1回の服用です。

一方、ヤッぺ法は卵胞ホルモンと黄体ホルモンを内服する方法で、72時間以内に2錠服用し、その後12時間後にさらに2錠内服します。

エラワンは海外で主流になっているアフターピルで、ウリプリスタル酢酸エステルを主成分としています。他の緊急避妊薬よりも服用可能な期間が長く、120時間以内に内服すれば高い確率で妊娠を阻止できます。ただ、エラワンはまだ日本では未承認なので、取り扱っていない病院が多いでしょう。

緊急避妊薬と低用量ピルの違い

アフターピルと呼ばれる緊急避妊薬と低用量ピルは、同じピルでも効果や使用する場面が異なります。

低用量ピルは経口避妊薬とも呼ばれ、毎日の服用で避妊効果を発揮します。薬に含まれる黄体ホルモンと卵胞ホルモンによって、体を排卵後と同じ状態にすることで、排卵を止めて妊娠を阻止します。正しく服用すれば、ほぼ100%避妊できます。

また低用量ピルは避妊以外にも、生理痛の軽減やPMS(月経前症候群)の緩和、生理不順を整えるといった不調改善の効果もあります。そのため、症状によっては保険適用が可能なこともあります。

副作用には、吐き気や頭痛、むくみの他に、血栓症のリスクもあります。

一方、緊急避妊薬は、性交後72時間以内に服用するだけで妊娠を阻止します。避妊率は低用量ピルほど高くなく、タイミングによっては間に合わないこともあります。また緊急避妊薬には不調改善の効果は期待できず、保険適用外です。

そして作用は似ていますが、低用量ピルでは緊急避妊薬の代用はできません。緊急避妊薬は、病院で改めて処方してもらうようにしましょう。

緊急避妊薬の注意点

(1)病院で処方してもらう

緊急避妊薬は病院で処方してもらう必要があります。ドラッグストアや薬局など市販での購入はできません。

モーニングアフターピルは自費診療となるため、事前に病院に電話などの問い合わせをして、取り扱いや価格について聞いておくと安心です。

ただ、緊急避妊薬は避妊に失敗した性行為から72時間以内に服用しなければならないため、病院が休みになりやすい土日は注意が必要です。困った時のために、土日も開院しているクリニックを探しておくと良いでしょう。

なお、新しく導入された薬局での試験販売は、土曜でも対応可能なケースが多いです。数は少ないですが、日曜に対応している薬局もあります。営業時間外の相談対応が可能として、電話番号を掲載している薬局もあります。各薬局によって対応可能な曜日や時間が異なるため、必ず場所だけでなく時間も確認して選ぶといいでしょう。営業時間や電話番号は、下記のサイトから閲覧できる薬局リストに記載されています。

緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業(厚生労働省医薬局医薬品審査管理課委託事業)|公益社団法人 日本薬剤師会

ちなみに、海外のサイトなどから個人で輸入するのは危険です。薬自体、日本で承認されていないものもあり、安全性の保障がありません。必ず病院で処方してもらうようにしてください。

(2)正しい服用方法を守る

緊急避妊薬は、72時間以内の服用が必要です。しかし、正しい飲み方をしなければ、効果を十分に得られない可能性があります。そもそも、緊急避妊薬の妊娠阻止率は100%ではありません。だからこそ、医師や薬剤師の指導を守り、正しく服用しましょう。

また、72時間以内の服用が必須ですが、12時間以内であればさらに高い効果が期待できます。処方され、薬を受け取ったらすぐに指定の飲み方で服用するように心がけましょう。

(3)緊急避妊薬の副作用

主に吐き気や頭痛などが、緊急避妊薬の副作用と言われていますが、基本的に24時間以内に収まります。服用から2時間以内に嘔吐してしまうと効果に影響が出るため、吐き気止めを合わせて処方する病院もあります。もし2時間以内に吐いてしまった時は、処方してもらった病院に相談しましょう。

緊急避妊薬は体への負担が大きく、さらに100%妊娠を阻止できる訳ではありません。セックスをする段階で、しっかり避妊をするのがベストです。「失敗しても後で緊急避妊薬を飲めばいい」と安易に考えず、普段から確かな方法で避妊をする方法を考えましょう。

あわせて知りたい避妊についての知識

(1)コンドームの保存方法に気を付ける

コンドームを正しく使っても、コンドーム自体が劣化していると、正しく装着できなかったり、破損の原因になったりします。機能を果たせなければ避妊効果を得られず、緊急避妊薬が必要となる機会が増えるかもしれません。

寝室の引き出しなど、常温で直射日光の当たらない場所で、箱やコンドームケースに入れたまま保管しましょう。財布などの狭く衝撃の多い場所や、クローゼットなどの防虫剤の近くに置くのは、劣化が進むので避けてください。

(2)サイズの合ったコンドームを使用する

コンドームの破損の原因として、サイズの合わないコンドームを使用することで空気が入ったり、無理に装着したりすることが挙げられます。

コンドームは長さではなく、直径で選びます。目安として、トイレットペーパーの芯よりも太い場合は、LかLLサイズを選ぶようにしましょう。逆に、トイレットペーパーに隙間ができるほど細い場合はS~Mサイズとなります。

(3)潤滑ジェルを使用する

挿入中に、十分に潤いがないと、腟内に擦れる痛みが出るだけでなく、コンドームの滑りが悪くなり破損のリスクが高まります。

潤滑ゼリーや、あらかじめジェルがたくさん塗布されたコンドームを使って、スムーズな動きをサポートしましょう。不快感も軽減し、精神的な負担も軽くなるはずです。

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(4)低用量ピルを日常的に服用する

低用量ピルを毎日服用すれば、万が一コンドームが破損したりはずれたりしても、妊娠を防ぐことができます。

ただし、低用量ピルは飲み始めてすぐ効果が出る訳ではありません。最低1週間ほど服薬し続けることで避妊効果が得られるようになるので、それまでの間はコンドームなどで避妊をするようにしましょう。

また、もし低用量ピルを飲み忘れた、嘔吐や激しい下痢で避妊効果が得られていない可能性がある場合は、緊急避妊薬の併用が可能か、ピルを処方している病院に相談してください。自己判断したり、低用量ピルをたくさん飲んだりなどの行為は、絶対しないようにしましょう。

緊急避妊薬の効果や注意点を事前に知って、万が一に備えよう

さまざまな避妊法がありますが、いつでも成功するとは限りません。もし避妊に失敗し、妊娠を望まない時は、できるだけ早く病院を受診して緊急避妊薬の服用をしましょう。

行きつけの病院が休みということも考えられるので、あらかじめ薬局での購入方法や手順の知識を得ておいたり、入手可能な病院を確認したりしておくことも大切です。

緊急避妊薬が処方され、手元に届いたら、すぐに正しい方法で服用するようにしましょう。飲んでから薬や症状に不安がある時は、迷わず病院に相談してくださいね。

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※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。

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