藤東クリニックお悩み相談室~骨盤底筋(骨盤底筋トレーニング)について~
骨盤底筋って、何?
骨盤底筋とは、名前のとおり骨盤の底に位置し、骨盤内にある臓器を支えている筋肉の総称です。恥骨・尾骨・坐骨に、ハンモックのように付いています。
骨盤内には、子宮や膀胱、直腸などの臓器が収まっています。骨盤底筋は、これらの臓器を正しい位置に保ち、尿道や肛門を締めて排泄をコントロールするなど、重要な役割を担っている筋肉です。
骨盤底筋が緩むとどうなる?
骨盤底筋群が緩んでくると、膀胱が下がり、尿道を締める圧力がかかりにくくなるため、尿漏れしやすくなります。また、弱った骨盤底筋が臓器を支え切れず、腟から子宮が飛び出す「子宮脱」という病気になってしまうこともあります。
女性の骨盤底筋は、男性に比べると長さがあり、薄く弱いことが特徴です。さらに、出産や加齢によって筋肉が傷んでダメージを受けたり、弾力性が低下したりしやすいのです。骨盤底筋トレーニングをすることで、筋力を維持・回復することができます。
骨盤底筋トレーニングには、どんな効果があるの?
骨盤底筋トレーニングで筋肉を鍛えることで、骨盤内の子宮や膀胱、直腸などの臓器を正しい位置に保持することができるようになります。尿漏れや子宮脱の予防だけでなく、血流の正常化による冷え性やむくみの改善にも繋がるでしょう。
また、骨盤底筋はインナーマッスルですので、鍛えることで腹部の引き締めができるほか、産後の筋肉へのダメージの回復、ひいてはホルモンバランスの安定などにも期待できます。
年齢を重ねると筋肉が弱り、体の負担が大きくなります。骨盤底筋も、早い内からトレーニングすることがおすすめです。
もっと知りたい「骨盤底筋(骨盤底筋トレーニング)」について
骨盤底筋とは
骨盤底筋群の構造
骨盤の底に位置する骨盤底筋群は、一番外側の表層である「会陰膜(えいんまく)」、中間層の「骨盤隔膜(こつばんかくまく)」、内側の深層「内骨盤筋膜」の3層で構成されています。
骨盤底筋群の表層である会陰膜は、骨盤底の一番下にあり、中間層の骨盤隔膜を左右から支える部分です。
中間層である骨盤隔膜は、恥骨から尾骨にかけて、骨盤底の中央に位置します。尿道・腟・直腸が通過する穴が開いており、3層の中でも最も強靭な部分です。骨盤隔膜は、腕や脚などと同じ「横紋筋」という鍛えられる筋肉でできているため、骨盤底筋トレーニングで鍛えることが可能です。
そして深層の「内骨盤腹膜」は、骨盤内臓に通る血管や神経の通路として存在しています。深層内にある「肛門挙筋」には、子宮や膀胱を固定する役割があります。肛門挙筋は、さらに細かく見ると「恥骨直腸筋」「恥骨尾骨筋」「腸骨尾骨筋」の3つの筋群でできており、主に臓器の固定や弛緩による排泄の制御を担っています。
骨盤底筋群の役割
骨盤底筋群は、主に3つの重要な役割を担っています。
内臓を支える
骨盤内にある膀胱・子宮・直腸などの臓器を支え、正しい位置に保ちます。
排泄の制御
尿や便の排出制御機能があります。筋肉の緊張・弛緩により正常な排泄をコントロールする、重要な役割を担っています。
腹膜内の圧力調整
腹腔内の圧力を調整する役割があります。排便時などに腹部に力を入れた際に直腸に腹圧を伝えたり、排泄時に圧力が掛かった腹膜を下から支えたりしてくれるのです。
骨盤底筋が緩む・衰える原因
骨盤底筋が緩む、または衰える原因は、主に妊娠・経腟分娩の出産、加齢、運動不足や肥満が挙げられます。
原因(1)妊娠、経腟分娩の出産
妊娠すると、3kg程までに成長する胎児に子宮が常に圧迫されるため、骨盤底筋にも負荷がかかります。さらに経腟分娩の出産時には、胎児が腟を通過する際の圧迫だけでなく、会陰切開などにより筋肉に直接ダメージが与えられることもあります。
原因(2)加齢
骨盤底筋群も、腕や脚など他の筋肉と同様に、筋肉自体が年齢を重ねることで衰え、支える力が弱くなっていきます。
原因(3)運動不足、肥満
骨盤底筋の筋力も、使われなければ衰えていきます。運動不足により肥満が進むと、脂肪によって腹部が圧迫され、下で支える骨盤底筋に負荷がかかり、骨盤底筋自体がダメージを受けます。
骨盤底筋は筋肉ですので、ダメージを受ければ緩んだり衰えたりします。しかし、逆に考えれば、他の部位の筋肉と同じように、トレーニングによって機能の回復や筋力の維持ができるということです。骨盤底筋を正常に機能させるために、トレーニングを習慣化してみましょう。
骨盤底筋トレーニングとは
骨盤底筋トレーニングとは、腕立て伏せや腹筋運動のようないわゆる「筋トレ」と同様、骨盤底を支える筋肉を収縮させて鍛えることを指します。骨盤底筋トレーニングを行うことで、内側の筋肉を正しく機能させることができるようになり、尿漏れや子宮脱などの予防、冷え性やむくみの改善などに繋がります。
骨盤底筋を鍛えると、周辺の筋肉も刺激され、お腹周りのシェイプアップも期待できます。さらに、腟回りの筋肉の力が高まることで、性行為時に腟内が締まり、お互いに挿入時の密着感が得られるでしょう。
骨盤底筋トレーニングの効果
効果(1)尿漏れ・便秘の改善
骨盤底筋を鍛えると、尿道の開け閉めをコントロールする筋肉が正常に機能するようになります。尿道を締める力の維持により、尿漏れの予防・改善に繋がります。
また、腹圧をかけても下でしっかりと支えられるため、力みやすく排便がスムーズになったり、便秘の緩和に繋がったりといった効果も期待できます。
藤東クリニックお悩み相談室~尿漏れについて~ 質問者 最近、くしゃみをしたときや重いものを持った瞬間など、尿漏れをするようになってしまいました。尿漏れなんてもっと先の高齢者になってからの事だと思っていたのに、30~40代で尿[…]
効果(2)産後のダメージ回復
骨盤底筋は、妊娠中に胎児を支え、出産により強い圧がかかり、大きなダメージを受けます。出産後は、子供を抱えたり授乳したりなど負荷の掛かる姿勢となることで、腰痛を訴える女性も少なくありません。
骨盤底筋を鍛えることで、骨盤底筋そのもののダメージが回復できるだけでなく、出産によって開いた骨盤を戻しやすくなります。さらに、インナーマッスルである骨盤底筋を鍛えることは、産後の腰痛改善にも繋がります。
ただし、出産時に会陰切開をしている場合は、傷の回復が最優先です。くれぐれも無理なトレーニングを行わないよう注意しましょう。
効果(3)冷え性の改善
骨盤底筋を鍛えると、骨盤内の臓器が正しい位置に固定されることで、骨盤まわりの血流が良くなります。血行が改善することで、冷え性緩和の一助となることも、骨盤底筋トレーニングの有益な効果の1つです。
さらに、骨盤内の血流が改善することで卵巣機能が向上するため、ホルモンバランスが整う効果も期待できます。末端などの冷えに悩む方や、生理痛・更年期障害などに悩んでいる方は、骨盤底筋を鍛えることをおすすめします。
骨盤底筋トレーニングの方法
方法(1)椅子に座って行うトレーニング
椅子とタオルまたはクッションなど、家にあるもので手軽にできる骨盤底筋トレーニングの方法です。座ったまま行えますので、テレビやスマホを観ながら・本を読みながらでも骨盤底筋を鍛えられます。
- 骨盤を立てた状態で、椅子に浅く腰かけます
- 太ももの内側に、タオルやクッションなど、柔らかく10センチ程度の厚みがあるものを挟みます
- 太腿に挟んだ物を落とさないよう、肛門・腟・尿道を締めるように力を入れ、10秒キープしましょう
イメージはパンツのファスナーを恥骨で上げる感じです。下腹部にも力を入れるとより負荷がかかりトレーニングの効果が上がります。
方法(2)立ったまま行うトレーニング
壁さえあれば、道具が不要でどこでも手軽にできるトレーニング方法です。家事や仕事の合間など、ちょっとした時間に取り入れてみましょう。
- 壁に背を当てて、足を閉じてまっすぐ立ちます
- 息を吐きながら、骨盤底筋をキュッと締めます
- ゆっくりと呼吸しながら、締めたり緩めたりを繰り返してみましょう
体が反ったり前傾したりしないよう、腰を壁から離さず、あごを引いて行うことがポイントです。骨盤底筋を締める感覚が分からない方は、排尿時に尿を止めるイメージを持つと良いでしょう。
方法(3)横になって行うトレーニング
起床時やリラックスタイムなどに、横になったまま道具不要で手軽に行えるトレーニング方法です。
- 仰向けになり、膝を90度に曲げます
- 片足を軽く浮かせながら、息を吸います
- 息を吐きながら、浮かせた方の脚を、5秒かけて外側へ開きます
- 息を吸いながら、開いた脚をゆっくりと元の位置に戻します
ゆっくりとした呼吸と動作で、股関節の動きを意識すると、より効果的です。左右の足で10セットを目標に、少しずつ頑張ってみましょう。
方法(4)歩きながら行うトレーニング
日常生活の中でも、骨盤底筋を鍛えることができます。歩くとき、骨盤をまっすぐに立て、お尻の穴や内腿に力を入れることを意識するだけです。骨盤を立てるイメージが湧かない方は、次の3つのポイントを意識してみてください。
- 尾てい骨またはお尻の穴を下に向け、下腹部を引き上げる
- タイトなボトムスの腰部分の縫い目が、地面と垂直になる
- 骨盤の真上に頭頂部がある
骨盤底筋トレーニングになるだけでなく、姿勢も美しく見えます。腹筋と背筋も同時に鍛えられ、腰痛の改善やシェイプアップにも役立ちます。
骨盤底筋トレーニングにおすすめのアイテム
(1)インナーボール
腟の圧力を高める「腟トレ」も、骨盤底筋を鍛える方法の1つです。腟トレグッズである「インナーボール(ケーゲルボール)」を使って、効果的に骨盤底筋トレーニングをしてみましょう。
インナーボールの使い方は、ボールの形を感じながら腟に力を入れたり緩めたりするだけです。腟内が締まった状態を意識しやすく、効果的に腟トレを行えます。初めの内は軽く横になるなど、楽な姿勢で挿入すると良いでしょう。
藤東クリニックお悩み相談室~腟トレについて~ 質問者 出産してから、尿漏れやお風呂のお湯が腟に入るなどが気になっています。腟トレで改善できるのでしょうか? 藤東先生 今回は腟トレについて解説しましょう! 腟トレって[…]
(2)インナーボールの挿入をサポートする潤滑ジェル
インナーボールを使って腟トレを行う場合は、スムーズに挿入できるよう、潤滑ジェルも用意すると良いでしょう。ジェルをインナーボールに塗布し、ゆっくり腟に入れていきます。
潤滑ジェルは、性交時にも使用できます。挿入の際の、腟の潤い不足による違和感に悩んでいる方にもおすすめです。
(3)インナーボールを清潔に保つクリーナー
インナーボールは、デリケートな腟に入れるものですので、清潔に使用・保管する必要があります。水洗いができるものであれば水洗いし、よく乾かした後、埃などで汚れないよう清潔なケースに入れて保管します。
手軽に衛生的に保つために、ラブグッズ用のクリーナーを使用するのもおすすめです。特に、ガイド機能付きのインナーボールなど水洗いが出来ない場合は、ラブグッズ用のクリーナーを活用し、しっかりと清潔に保ちましょう。
骨盤底筋トレーニングを生活に取り入れよう
女性は骨盤底筋が薄い上に、妊娠や出産などの負荷もかかるため、骨盤底筋がダメージを受けやすいことを知っておきましょう。骨盤底筋トレーニングを行うことで、骨盤内の臓器を正しい位置に保持できるようになり、尿漏れ・便秘・子宮脱などの改善や予防、冷え性の改善、卵巣機能が向上しホルモンバランスが整うなど、様々な効果が期待できます。
女性の場合、閉経とともに女性ホルモンの分泌が減少します。骨盤底筋を鍛えることは、更年期障害や閉経後骨粗しょう症など、女性ホルモンの低下によるトラブルの予防にも繋がります。骨盤底筋は、自宅でも外出先でも、手軽に鍛えられる筋肉です。日常生活で意識したり、トレーニングを習慣化したりなど、少しずつでも取り入れてみましょう。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。