藤東クリニックお悩み相談室~尿漏れについて~
女性の尿もれは病気の予兆?
女性の尿漏れにはいくつか原因がありますが、そのほとんどが骨盤底筋の緩みによるものです。女性は構造的に、骨盤底筋の支えによって、膀胱と尿道のコントロールをしています。
また、女性は尿道が短く直線的です。一方で、男性は尿道が男性器を通っていて長いため、比較的女性の方が尿漏れしやすい傾向にあります。
ただ、過活動膀胱などの病気による尿漏れも存在します。症状や生活に支障が出るほど悩むときは、一度クリニックを受診しましょう。
女性の尿漏れは治る?
骨盤底筋の緩みによる尿漏れは、筋肉を鍛えることで緩和する、または治る場合があります。尿意をコントロールしている筋肉を鍛え、常にギュッと力を入れられるようにすることで、尿漏れを防ぎます。
病気が原因である場合は、骨盤底筋のトレーニングと共に、水分摂取量などの生活指導や投薬治療をすることにより、改善を目指します。
30~40代なのに尿もれはおかしい?
尿漏れの原因となる骨盤底筋の緩みの原因は、加齢だけではありません。妊娠・出産によって骨盤が開き、筋肉が傷付いて伸びてしまう場合と、30代や40代の女性でも尿漏れしやすくなることはあります。
また、尿漏れの原因には機能的な問題だけでなく、トイレがない場所に行くと不安になり尿意をもよおす、緊張するとトイレに行きたくなるなど、精神的な要因があるケースもあります。
尿漏れの原因は様々です。若くても尿漏れに悩む女性は、決して少なくありません。
もっと知りたい「尿漏れ」について
尿漏れとは
尿漏れは、医学的には「尿失禁」という症状です。おしっこが漏れることをコントロールできない状態を指します。国際尿禁制学会の定義では、コントロールできない状態とは「無意識あるいは不随意な尿漏れであり、それが社会的にも衛生的にも問題となる状態」とされています。
つまり、自分が想定していない行動やタイミングで尿が漏れてしまう困った事態を、「尿失禁」「尿漏れ」と位置付けます。
尿漏れの原因
尿漏れの原因(1)骨盤底筋のゆるみによって起きる
尿漏れの原因の多くは、骨盤底筋の緩みです。子宮など骨盤内の臓器を支える筋肉を総称して「骨盤底筋群」と呼びますが、その中の恥骨尿道靱帯や仙骨子宮靱帯などの膀胱や尿道を支える靱帯が弱くなると、尿意のコントロールができなくなってしまいます。
尿漏れの原因(2)妊娠
妊娠すると、子宮が大きくなり、さらに胎児の重みで骨盤底筋がたわんでしまい、コントロールができずに尿漏れを起こしやすくなります。くしゃみをしたり大声で笑ったりすると、お腹に力が入って膀胱を圧迫し、うっかり尿漏れしてしまうことがあります。
産後、たわんだ骨盤底筋が元に戻れば妊娠中の一時的な症状で済みますが、出産により骨盤が開いたことで筋肉が伸びてしまうと、その後も尿漏れに悩む場合があります。
尿漏れの原因(3)精神的な要因
精神的な緊張や不安など、心因性の頻尿によって起こる尿漏れもあります。膀胱や尿道に異常がないにもかかわらず、尿意をコントロールできないときは、何か精神的な原因がある可能性があります。
過度の緊張、不安やうつなど、ストレスが原因になることが多く、過去の排泄に関する失敗などのトラウマから、トイレに間に合わなくなるような尿意が発生することもあります。
もし体に異常がないのに、常に尿漏れが気になり、日常生活に支障が出たり行動に制限をかけたりしなければならない場合は、精神的な原因を追究する必要があるかもしれません。
骨盤底筋がゆるむ原因
骨盤底筋がゆるむ原因(1)加齢
男女問わず、年を重ねていくと全身の筋力が低下していきます。骨盤底筋も筋肉ですので、意識して鍛えていないと、緩みが発生します。
女性の場合は、閉経によってエストロゲンという女性ホルモン濃度が低下することでも、骨盤底筋が緩みやすくなります。
また、加齢により基礎代謝が落ちると、肥満になることもあります。肥満が原因で骨盤底筋の緩みに影響が出る場合もあるでしょう。
骨盤底筋がゆるむ原因(2)出産
出産も、骨盤底筋の緩みの大きな原因の1つです。
出産により骨盤が開くと、骨盤底筋が圧迫されたり傷付いたりすることでたわんでしまいます。また、出産直後で子宮が大きいまま膀胱が圧迫され続けていたり、分娩時のいきみにより骨盤底筋に大きな負担がかかってしまったりということも、骨盤底筋の緩みを引き起こす原因となります。
尿漏れの種類
尿漏れの種類(1)腹圧性尿失禁(SUI)
尿漏れのタイプで多く見られる症状の1つが、腹圧性尿失禁です。お腹にグッと力を入れ腹圧をかけたときに、尿漏れを起こしてしまいます。
主に、咳やくしゃみなどの生理的な動作や、重たい荷物を持つ、大きな声で笑うなど、一気に強い腹圧がかかる行動によって腹圧性尿失禁が起こります。
また、走ったり、坂道や階段の上り下りをしたりといった激しい動きもお腹を刺激しやすいため、尿漏れすることがあります。
尿漏れの種類(2)切迫性尿失禁(UUI)
尿意がとても敏感で、急に「トイレに行きたい」と激しい尿意を感じたとたんに間に合わず、漏れてしまうタイプが切迫性尿失禁です。
体質的に膀胱が小さめな方や、膀胱炎などで一時的に過敏になっている場合も、切迫性尿失禁が起こることが多いです。
例えば、水仕事や歯磨き中などに水の流れる音を聞く、寒さを感じるといった日常的な刺激に、我慢できないほどの強い尿意を感じます。
尿漏れの種類(3)過活動膀胱(OAB)
字の通り、膀胱が活動しすぎてしまう状態のことです。膀胱が過敏になり、尿が十分に溜まっていないにも関わらず、意思と関係なく膀胱が収縮してしまいます。
尿を溜めることができないため、突然尿意をもよおしたり、トイレに行ったばかりでもすぐにトイレに行きたくなったりすることがあり、コントロールできずに尿漏れしてしまいます。
過活動膀胱と診断された場合、骨盤底筋のトレーニングだけでなく、抗コリン薬による投薬治療で膀胱の収縮を抑えます。ただし、口が渇く、便秘、めまいなどの副作用があり、閉塞隅角緑内障の方も使用できないため、心配な方は医師と相談して処方を決めましょう。
尿漏れ対策におすすめのアイテム
ライナー
尿漏れを手軽にケアしたいのであれば、専用の吸水ライナーの使用をおすすめします。生理用ナプキンでも代用は可能ですが、尿漏れ用の吸水ライナーの方が水分をしっかり吸収し、表面をサラサラにしてくれるので、できれば専用のものを使う方が良いでしょう。臭いに関しても、吸水ライナーはアンモニア臭をしっかり吸収してくれます。
吸水ライナーの種類は、着け心地の軽いものから、夜用の生理ナプキンのような大きなものまで様々です。尿漏れの量や生活スタイルによって、適したものを選びましょう。
吸水パンツ
吸水ライナーの使用に違和感がある方は、吸水機能の付いたショーツが使いやすいでしょう。吸水パンツは、吸水性のある布を何層も重ねて作られていて、速乾性や防臭、一番外側には防水機能の布が使用されています。うっかり尿漏れしてもショーツはサラサラで、外にも漏れにくく、臭いも気になりにくくなっています。
使用感だけでなく、ライナーのように使い捨てではないので、ゴミが減り環境に優しく、さらに経済的です。吸水パンツもライナーと同じく、ショーツによって吸水量が異なるため、自分の尿漏れの頻度や量を想定して選びましょう。
腟トレボール(インナーボール)
尿漏れ対策で最も大切なのが、骨盤底筋のトレーニングです。肛門括約筋を締めるような動きを、1日に数十回行います。
とはいえ、現代人は忙しく、なかなか落ち着いて筋トレができない方も多いでしょう。そんな時は、腟トレボールを使った「腟トレーニング」がおすすめです。
腟トレとは、腟の引き締めをケアする骨盤底筋トレーニングのことです。尿道や膀胱の動きをコントロールする骨盤底筋は、腟の緩急にも作用します。つまり、腟トレの動きは尿漏れのトレーニングにも効果があるのです。
腟トレ用のアイテム「インナーボール」は、腟内に挿入し、抜けないよう下腹部にキュッと力を入れて使います。1日10~15分のトレーニングにより、少しずつ骨盤底筋を鍛えることができます。
藤東クリニックお悩み相談室~腟トレについて~ 質問者 出産してから、尿漏れやお風呂のお湯が腟に入るなどが気になっています。腟トレで改善できるのでしょうか? 藤東先生 今回は腟トレについて解説しましょう! 腟トレって[…]
尿漏れの原因は様々!膣トレで改善できる可能性も
尿漏れは、人に言いにくい悩みだけに、気になるけれどどうケアしたら良いのかわからない女性も少なくありません。しかし、20代以上の女性の2人に1人が尿漏れの経験があるという調査結果もあり、どんな女性でも起こりうる症状で、決して恥ずかしいことではありません。尿漏れに悩んでいるものの、対策の仕方が分からない方や病気の不安がある方は、クリニックで医師に相談してみてください。
また、骨盤底筋のトレーニングは、尿漏れや腟の締まり対策だけでなく、下腹部のシェイプアップにも役立ちます。自分磨きの1つとして取り組んで、モチベーションを上げながら、楽しく取り組んでみましょう。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。