藤東クリニックお悩み相談室~妊活について~
妊活ってどういうこと?定義は?
妊活とは、妊娠するためにする活動のこと。妊娠に向けて、体と環境を整えて行動する準備のことを意味します。
具体的には、パートナーと子どもについて話し合い、食事や生活習慣によって妊娠しやすい体質へと改善させ、産婦人科で現在の体の状態をチェックし、必要であれば不妊治療を始めます。
ちなみに、日本産科婦人科学会は不妊の定義を「妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性交をしているにもかかわらず、ある一定期間(1年間)妊娠しない状態にあること」としています。
結婚してすぐ妊活を始めるのは早い?
妊活を始めるタイミングは、その夫婦やカップルの考えによるものですので、いつ始めても問題はありません。
ただ、避妊をやめたからといって、必ずすぐに妊娠できるとは限りません。そのときの2人の体の状態や年齢などによって、妊娠のタイミングは自分たちの想定と変わってしまう可能性が大いにあります。
特に、年齢を重ねていくほど妊娠率が下がる傾向にあり、閉経に向けて月に1回のチャンスがどんどん減っていくため、子どもが欲しいのであれば、できるだけ早く妊活を始めることが望ましいです。
経済的な問題や環境的な不安がないのであれば、結婚してからすぐに妊活を始めても「早すぎる」ことはないでしょう。
妊活はお金がかかる?
妊活自体は病院に行かず自身でできることもあるため、「妊活をする人は全員高額なお金をかけている」という訳ではありません。
日常的に体を冷やさないようにしたり、バランスの良い食事を心掛けたりといった身近な生活環境を整えることも、妊活の1つです。また、定期的に生理が来ていて、基礎体温を計っているのであれば、ある程度自分でも排卵の時期を見定めることができるため、病院に通わずとも「タイミング法」を試みることはできます。
本格的にお金がかかるとすれば、通院して不妊治療の段階が上がってからです。とはいえ、助成金が適用になるケースや、2022年4月より43歳未満の女性であれば保険適用も開始されます。
もっと知りたい「妊活」について
妊娠の仕組みと妊活
妊活しないと妊娠できない?
妊娠は、必ずしも妊活を経なければならない訳ではありません。20代であれば、自然妊娠できる確率は30~50%と言われています。
ただ、当然ではありますが、妊娠はセックスによって「卵子と精子が受精する」ことで初めて発生する現象です。ペッティングなど挿入を伴わない行為や、セックスレスの夫婦では、妊娠する確率はほぼ0%になってしまいます。
妊活の種類とステップ
妊活(不妊治療)の方法は、大きく分けて3つあります。ここでご紹介するのは、基本的に産婦人科に通って行う医学的な方法です。
~妊活の方法の例~
- タイミング法
- 人工授精
- 体外受精
タイミング法
妊活開始時に、多くのカップルが最初に取り組むのが「タイミング法」です。基礎体温や超音波検査などを用いて、医師による指導のもと、妊娠しやすい時期を狙って性交渉をします。
タイミング法の対象となるのは、体内での自然妊娠が可能なカップルです。女性であれば卵管や排卵に異常がない、男性は精液検査に異常がない状態であることが条件となります。
排卵誘発剤を用いて成熟した卵子を排卵に導くなどの治療はありますが、体力的なリスクは少なく、比較的シンプルな方法です。
人工授精
動きの良い精子を集め、排卵の時期に合わせて、子宮内の受精が行われる「卵管膨大部」に精子を注入する方法です。人為的に精子を入れ込むこと以外は、自然妊娠と同じ過程を辿ります。
人工授精は、タイミング法を一定期間実行して妊娠に至らなかった、もしくは勃起障害・射精障害などでセックスができないカップルに適応されます。また、精子に不妊の因子がある場合も、人工授精の適応条件となります。
タイミング法よりもより高い精度で妊娠を望めますが、人工授精は排卵のタイミングに合わせた受診が必要となり、受診の数時間前に男性の精液の採取も必須となるため、男女共に時間と体力的・精神的な負担が発生する可能性があります。
体外受精
女性の卵子を取り出し、パートナーの精子と体外で受精させ、受精卵を女性の子宮に戻し着床を促します。タイミング法や人工授精を経ても妊娠に至らず、ステップアップを望んだ場合に適応となります。
治療の方法は、まずホルモン薬を用いて卵胞の発育を誘発し、排卵日の前日に成熟した卵子を取り出します。その日に精子も搾取し、シャーレ上で受精させます。精子の動きが悪い場合は、顕微鏡下でガラス管を用いて受精させます。受精卵を培養し、数日後に子宮内に戻します。着床率を高めるため、必要であれば黄体ホルモン補充の治療をしつつ、約2週間後に妊娠判定となります。
現在は、体外受精は保険適用になっておらず、実費での治療です。ただし助成金が適用になる場合もあるので、治療する前に病院で確認すると良いでしょう。
人工授精よりも妊娠確率は高まりますが、リスクとして卵巣刺激剤や排卵誘発剤を使用することで起こる副作用や、ごくまれに採卵時に腹腔内出血・膀胱出血などが起こる可能性が挙げられます。また、何度も通院する必要があり、特に女性側に多くの体力的・精神的負担がかかりやすい所がデメリットになります。
妊活の成功率は?
1年以上自然妊娠しなかったカップルがタイミング法によって妊娠するのは、1周期ごとに5%程と言われています。また、人工授精の場合は10%未満とされています。
体外受精については、2019年の日本産科婦人科学会の最新データでは、体外受精で最も一般的に行われる「胚移植」による妊娠率では23.1%、顕微鏡での授精(顕微授精)は18.7%となっています。
ただし、年齢が上がるごとに妊娠の確率は下がります。40~44歳では10~20%台となり、45歳以上では1桁まで落ちて行きます。
妊活を始めるにはどうしたら良い?
STEP1.ブライダルチェックや予防接種を受ける
婦人科に限らず、自覚症状のない病気もあります。自分の健康状態を知るためにも、結婚が決まった時点で、健康診断やブライダルチェックを受けておくと安心です。生理が不順、生理痛が酷いなど、普段から婦人科系で気になる症状がある方も、この機会にクリニックに通い始めると良いでしょう。
また、麻疹や風疹など、妊娠中に罹患すると危険な病気も存在します。安全に妊娠を継続するためにも、妊活を始める前に、まず母体を病気から守ることが大切です。
妊活を始めると決めたら、いつ子供を授かっても良いように準備しましょう。
STEP2.基礎体温をつける
妊娠のためには、排卵の時期を見極めるためにも、自分の生理周期を知る必要があります。そのためには、基礎体温の情報がとても重要です。
基礎体温は、一般的な体温計の数値よりも細かく測る必要があるため、基礎体温計を用いて確認しましょう。毎朝起床時に舌下にて体温を測定し、グラフに記載します。基礎体温計によっては、グラフまで自動で登録されるものなどもあるため、継続できそうなものを選んで購入すると良いでしょう。
産婦人科を受診するときも、基礎体温の記録の提示を依頼されることがありますので、きちんと記録しておくと安心です。
STEP3.タイミングを合わせて性行為をする
妊娠は、排卵され、セックスにおいて卵子と精子が受精して成立します。つまり、妊娠の確率が高まるのは、排卵日の数日前です。
基礎体温をつけておくとおおよその排卵日が分かるため、その時期に合わせて性交渉をすることになります。生理が正常にきている場合は、ある程度自分で排卵期を判断できるため、自身で挑戦することも可能です。しかし、より確実に妊娠を目指すなら、病院で検査をして医師の判断のもとに時期を見極める「タイミング法」が良いかもしれません。
自身で実施する場合は、排卵検査薬などを使うと、より正確に排卵日を狙いやすくなるでしょう。
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妊活で起こりがちなトラブル
(1)セックスをしたい気持ちが起きなくて行為を苦痛に感じる
妊活においてセックスは不可欠ですが、排卵日が決まっていることもあり、事前に「この日にする」とスケジューリングされてしまいます。回数を重ねる内に性行為が義務化したり、作業のように感じたりなど、マイナスなイメージを抱きがちです。自然に発展するセックスに比べて、ムードも落ち気味になるかもしれません。
2人の子どもを作るための行為であるにもかかわらず、気分が乗らない状態でセックスをするのは本末転倒です。できるだけお互いで、楽しくセックスできるような工夫をすると良いでしょう。
例えば、ラブシーンの多い映画を夫婦で一緒に観たり、ラブローションやラブグッズなどこれまで使ったことのないアイテムを使ったりなど、刺激になる要素を加えてみると、性行為に新しい楽しさが芽生えるかもしれません。
(2)夫が勃起しなくなってしまい、性行為ができない
排卵日を指定され、セックスが義務化することで、萎えてしまう男性も少なくありません。女性としては焦る気持ちもあるかもしれませんが、男性を責めずに一緒に手立てを考え、寄り添いながら妊活を進めていきましょう。
まずは旅行に行って環境を変えてみる、美味しいものを食べに行くなど彼が望むことを優先し、普段から男性の精神的負担を減らす方法を探ってみると良いかもしれません。
また、人工授精など性行為をせずに妊娠する方法もあります。男性がマスターベーションでなら射精できるのであれば、病院で相談してみると良いでしょう。
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(3)飲み会や仕事でタイミングが合わない
妊娠は月に1回しかチャンスがなく、タイミングをずらす訳にいきません。妊娠の確率が高い時期に限って帰宅が遅くなったり、急な出張に当たってしまったりすると、その月の機会を失うことになります。
事前に2人で予定を共有し、急な予定が入らないようにしておく必要があるでしょう。また、排卵日の通知機能がある妊活アプリもあるため、夫婦で利用してみると良いかもしれません。
妊活に役立つアイテム
潤滑ジェル
女性は、体調や気分によって潤い不足になることがあります。性交痛があると、妊活にマイナスなイメージを持ってしまう可能性もありますので、潤滑ゼリー等のアイテムを使用し、できるだけ快適にセックスができるよう工夫すると良いでしょう。
もしパートナーに潤滑ゼリーを使うことを提案しづらい、ゼリーを使うときの雰囲気が気まずいなどの精神的負担があるのであれば、こっそり事前に塗っておけるモイスチャー美容液の使用がおすすめです。
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香水
いつも自宅のベッドでセックスをしていると、妊活中でなくてもマンネリ化してしまうものです。とはいえ、毎回違う環境を作るのも、忙しい毎日を過ごしていると難しいでしょう。
そんなときに使えるのが、香りの変化です。いつも使っているシャンプーや柔軟剤の香りとは違う、セックスのときだけに香る特別な香りを取り入れると、気分を盛り上げるスイッチになりやすいです。
セックスをする前に、イランイランなど、性的な気持ちが高まりやすい香り成分の入った香水やお香を使って寝室を演出すると、いつもと違う雰囲気で気持ちが盛り上がってくるはずです。
マンネリ防止になるローションなどのグッズ
香り以外にも、グッズを取り入れるとマンネリしにくくなります。妊活が長く続くと出口が見えず、精神的に苦しくなりがちです。いかに妊活中のセックスを楽しいものとするかという所も、長く挑戦し続けるためのコツになります。
例えばローションを使って、夜の時間をレクリエーション化させてみましょう。ローションの入浴剤でトロトロした感触を味わいながらスキンシップをする、ベッドではマッサージでローションを使ってみたり、食べられるローションでオーラルを楽しんだりなど、アイテムや楽しみ方は様々です。
性行為そのものも大切ですが、2人の気持ちが一番大事です。できるだけ愛情表現としてセックスを楽しめるよう、アイテムで工夫してみましょう。
様々なアイテムを取り入れながら、長期戦の妊活にも対応していこう
結婚し、環境的に子どもを育てられる状態で、夫婦が子どもを望むのであれば、妊活はできるだけ早めに始めることが望ましいです。必ずしも病院に通う必要はありませんが、自分とパートナーの体を知り、より効率良く妊活をするためにも、まずは産婦人科で診察してもらうと安心です。
費用については、助成金や2022年4月以降からの保険適用実施などもあるため、自身が受ける治療と条件が合うかどうか、治療を決める前に医師に相談をすると良いでしょう。
妊活は先が見えず、長く続き治療が進むと、時間や肉体面だけでなく、精神的にも負担がかかることもあります。排卵日のセックスが負担になることもあるかもしれません。とはいえ、妊活で夫婦で亀裂が入ってしまうのは本末転倒です。つらいときは家事や仕事の無理をせず、お互いが寄り添い合い、工夫をしながら妊活を進めていくことを意識してみましょう。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。