藤東クリニックお悩み相談室~腟の臭いについて~
腟の臭いが気になる…臭くなる原因って?
腟内部に強い悪臭を感じる場合、主な原因は感染症などの病気であると考えられます。
一方、汗や排泄物の蒸れによる雑菌の繁殖、酸化した経血、体質としてすそわきがの傾向がある場合など、外陰部(デリケートゾーン)の臭いによって「腟が臭い」と感じている可能性もあります。
病気は治療が必要ですが、それ以外の原因による腟の臭いは日頃のケア方法や習慣を見直すことである程度予防や改善が可能です。
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腟が生臭いのは病気なの?
明らかに不自然な、魚が腐ったような腐敗臭や生臭さを感じた場合は、細菌性腟炎やトリコモナス腟炎といった病気に罹っている可能性もあります。
もし腟の臭いとともにかゆみや痛みも感じるのであれば、すぐにクリニックを受診して検査を受けてください。
もっと知りたい「腟の臭い」について
腟の臭いの原因とは
原因(1)汗や排泄物の酸化や雑菌の繁殖
正常な腟は、基本的に無臭またはわずかに酸っぱい臭いがする程度で、ほとんど気にならないことが多いです。
腟の臭いの多くは、汗・皮脂がおりものや雑菌と混ざり、酸化することで発生します。そもそも腟口は、尿道や肛門が近く、排泄物が付着し臭いが生じやすい場所です。特に生理中は、排出された経血が空気に触れて酸化し、さらに雑菌の繁殖を促進してしまうこともあります。
腟周りが不衛生な状態になればなるほど、臭いが発生しやすくなるのです。
原因(2)すそわきが
すそわきがとは、デリケートゾーンからわきがのような独特の臭いがする症状のことを指します。アポクリン腺という汗の出る腺から出た汗を、皮膚にいる常在菌が分解することで、臭いが発生します。
アポクリン腺は、腟内ではなく外陰部に存在します。すそわきがの場合、腟内の臭いではなく、デリケートゾーンから生じる臭いであると考えて良いでしょう。
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原因(3)細菌性腟炎などの病気
細菌性腟炎や性感染症などの病気によって、腟内に強い臭いが発生することもあります。細菌によって腟内が炎症を起こすことで、臭いおりものが排出され、腟が異臭を生じるのです。
強い臭いだけでなく、おりものの色が黄緑色になったり、形状が水っぽくなったり、量が増えたりしているときは、腟炎や性感染症などの病気が疑われます。さらにかゆみや痛みなどを伴う場合、病気の可能性がかなり高いです。自己判断をせず、すぐに病院で検査を受けましょう。
腟の臭いを生じる主な病気
病気(1)細菌性腟炎
腟から強い悪臭を感じ、水っぽく色が灰色または黄色いおりものが増えた場合は、細菌性腟炎であると考えられます。
細菌性腟炎の症状には、腟の臭いやおりもの以外にも、デリケートゾーンのかゆみやかぶれ、痛み、熱感などが挙げられます。
腟内では、常在菌が酸を作り出し、悪い菌が増えないようバランスを保っています。しかし、ストレスや疲れ、腟内の洗い過ぎ、抗生剤の服用などにより免疫力が低下すると、腟の自浄作用が弱まり炎症が起こってしまうのです。また、性交時に腟内に雑菌が侵入し、炎症を起こすこともあります。
細菌性腟炎は、婦人科や感染症内科で腟の分泌液を採取し、検査・診断を行います。腟錠の挿入や外用薬の塗布、薬の服用などで治療し、通常1週間程度で治癒します。
病気(2)トリコモナス腟炎
トリコモナス腟炎は、トリコモナス原虫による性感染症です。感染経路はセックスが主ですが、下着やタオル、トイレの便座や浴槽などからも感染することがあります。
特徴的な症状の1つが、魚が腐ったような強い悪臭を伴う、黄色または黄緑色の泡状のおりものです。おりものの量が増えることもあります。また、デリケートゾーンに発疹が出たり、かゆみや排尿痛・性交痛などが生じたりもします。
自覚症状が現れない方もいますが、治療をせずにいると進行し、血の混じったおりものが出て、腟内にブツブツとした出血班が現れます。さらに進行すると、卵管まで炎症が広がり、不妊や流産、早産のリスクが生じる可能性もあります。
トリコモナス腟炎は、ニトロイミダゾール系原虫薬を10日間服用することで治癒します。
病気(3)淋病
淋病の正式名称は「淋菌感染症」です。強い悪臭を伴う、膿のような黄緑色のおりものが増えます。不正出血や下腹部痛、排尿痛、外陰部のびらんなどが主な症状です。
自覚症状が出ないことも多く、気付かずに放置してしまう女性も少なくありません。しかし、放っておくと卵管炎や子宮内膜炎、腹膜炎などに繋がる恐れがあります。
淋病は、性行為によって性器にうつるだけでなく、オーラルセックスによって喉に感染することもあります。また、淋病に感染した状態で出産すると、生まれた子供にも感染する可能性があります。
淋病と診断された場合は、抗生剤の服用による治療を行います。淋病に罹った方の3割程度がクラミジアを併発しているため、念のためクラミジアの検査もしておくと良いでしょう。
腟の臭いの改善・対策方法
方法(1)腟周りを正しく洗う
腟は、常在菌により自浄作用が働いているため、基本的に中まで洗う必要はありません。排泄物と触れたり汗や皮脂が発生したりして汚れやすい外陰部(デリケートゾーン)を、清潔な状態に保ちましょう。
しかし、洗浄力の強いボディソープで洗うと常在菌のバランスが崩れ、雑菌が増殖し、臭いが生じる可能性があります。デリケートゾーンを洗うときは、肌への刺激が少ない石鹸をしっかりと泡立て、擦らずに優しく洗うよう心がけましょう。
方法(2)生活習慣を見直す
腟内の常在菌のバランスを保つためには、規則正しい生活やストレスの解消を心がけ、体の抵抗力を維持することも大切です。
また、肉類や油分、香辛料やニンニクなどの臭いが強い食べ物を過剰に摂取すると、腟の臭いも強くなる傾向があります。ご飯などの炭水化物や野菜・海藻などを一緒に摂るようにし、食事のバランスを意識してみましょう。
その他に、喫煙している女性は細菌性腟炎の発症率が高くなる傾向があります。煙草の煙に含まれる化合物が、腟内の常在菌に悪影響を与えるためです。腟の臭いが気になるのであれば、この機会に禁煙することをおすすめします。
方法(3)性交時にコンドームを着用する
妊娠を希望していない方は、トリコモナス腟炎や淋病などの性感染症を防ぐためにも、セックス時に必ずコンドームを使用しましょう。粘膜接触により感染するため、挿入するタイミングからコンドームを装着してください。
オーラルセックスで感染することもありますので、性感染症の疑いがある方や事前情報がない相手との性行為は避けましょう。
性感染症を見逃さないためにも、日頃から自分のおりものの状態や体調の変化などをよく観察し、変化に気付くことが大切です。
方法(4)病院で診察を受ける
腟の臭いの異変だけでなく、かゆみや痛み、おりものの変化に異常を感じるのであれば、自己判断をせずに、なるべく早く婦人科や感染症内科を受診しましょう。
市販の性病検査キットで検査することもできますが、キットごとに対応している感染症が異なるため、病院で検査をする方が確実です。
性感染症や病気を放っておくと、症状がひどくなったり、不妊などに繋がったりすることもあります。できるだけ早い受診をおすすめします。
腟の臭いの予防・ケア方法
ケア(1)アンダーヘアを処理する
アンダーヘアを処理すると、デリケートゾーンに汚れが残りにくい環境となり、臭いの軽減に繋がる可能性があります。
特に腟口周りのIラインの毛は、尿や経血が付着しやすい部分です。専用のガード付きシェーバーや、熱で毛先を丸く切るヒートカッターで処理するだけでも、デリケートゾーンを清潔に保ちやすくなるでしょう。
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ケア(2)デリケートゾーンを清潔に保つ
腟口周辺におりものや尿などの排泄物が残っていると、雑菌が繁殖しやすく、臭いを生じてしまいます。デリケートゾーンを清潔に保つことで、腟の臭いの軽減に繋がります。
腟口周辺におりものや尿などの排泄物を残さないよう、デリケートゾーン用のウェットシートや拭き取りムースを活用し、臭いの元となる汚れを拭き取ると良いでしょう。
ケア(3)陰部の蒸れを防ぐ
生理中や、排卵期などのおりものが多い時期、汗をかきやすい夏などは、デリケートゾーンが蒸れて雑菌が繁殖しやすい環境になります。通気性の良い下着やボトムスを選び、臭いの原因となる蒸れを減らしましょう。
生理時の蒸れが気になる方は、タンポンや月経カップを使用すると、デリケートゾーンの通気性が改善できます。自分に合った生理用品やケアアイテムを活用し、デリケートゾーンの環境をできるだけ悪化させないよう心がけましょう。
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腟の臭いを正しいケアで予防!気になる方は病院へ
腟の臭いは、デリケートゾーンを正しく洗う、ショーツ内の蒸れを防ぐ、健康的な生活を送るなど、生活習慣を見直すだけでも、ある程度軽減できます。また、性感染症を避けるためにも、性交時はコンドームを使用しましょう。
しかし、明らかに普段と違う悪臭やおりものの変化、かゆみや痛みなどの異常がある場合は、性感染症などの病気に罹っている可能性があります。できるだけ早く、病院で相談してください。
健康な女性でも、多かれ少なかれ腟の臭いを感じることはありますので、神経質になり過ぎる必要はありません。おりものや体調の変化を日頃から観察・記録することで、病気のサインを見逃しにくくなるでしょう。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。