ピルは血栓リスクがある?危険な条件や低リスクの新薬について

藤東クリニックお悩み相談室~ピルの血栓について~

 
質問者

もうすぐ40代ですが、避妊のためにピルを検討しています。しかしピルには血栓のリスクがあると聞きました。ピルで血栓ができるとどのように危険なのでしょうか。

 
藤東先生
今回はピルの血栓リスクについて解説しましょう!

ピルには血栓リスクがある?

ピルには血栓症のリスクがあることは事実です。ただし、その確率は決して高いものではありません。

一般女性の血栓症発症率は、年間1万人あたり1〜5人程度とされています。一方、低用量ピルを服用している女性の場合は1万人あたり3〜9人ほどと報告されています。つまり、ピルを服用することで血栓症のリスクはやや高くなりますが、発症自体は比較的まれな副作用です。

また、妊娠中の女性では1万人あたり5〜20人、出産後には40〜65人とされており、実はピルより妊娠・出産の方が血栓症リスクは高いというデータもあります。

そのため、医師の診察を受けて適切に服用していれば、過度に恐れる必要はありません。

血栓とは?できたらどうなる?

血栓とは、血液が固まってできた血のかたまりのことです。血管の中に血栓ができると、血流が妨げられ臓器に酸素や栄養が届かなくなります。

血栓ができる場所によって症状は異なります。たとえば以下のような病気を引き起こすことがあります。

  • 深部静脈血栓症:足の静脈に血栓ができる
  • 肺塞栓症:血栓が肺に詰まる
  • 脳梗塞:脳の血管が詰まる

特に注意が必要なのが、足の静脈にできた血栓が血流に乗って肺に到達するケースです。これは命に関わる可能性があるため、早期発見が非常に重要になります。

血栓の予兆はある?

血栓症には初期症状があります。血栓症は早期に発見して適切な処置を受ければ、重症化を防ぐことができます。

医師や製薬会社が共通して提示している「ACHES(エイシス)」という重要なサインがあります。以下の症状が一つでも現れた場合は、すぐに服用を中止して救急外来や処方医を受診してください。

~血栓症の予兆「ACHES」~

英語の頭文字 症状の内容 疑われる部位
A (Abdominal pain) 激しい腹痛 腸管や肝臓の血管
C (Chest pain) 激しい胸痛、息切れ、咳 肺(肺塞栓症)
H (Headache) 激しい頭痛、めまい、失神 脳(脳梗塞)
E (Eye problems) 見えにくい、視野が欠ける 眼底(網膜血栓)
S (Severe leg pain) ふくらはぎの痛み・腫れ・赤み 足(深部静脈血栓症)

特に血栓は足の静脈にできることが多く(深部静脈血栓症)、それが血流に乗って肺に飛ぶと命に関わります。足に関しては以下の変化に注意してください。

  • 左右差がある: 片方の足だけがパンパンに腫れる、赤くなる。
  • 歩くと痛い: 筋肉痛のような痛みだが、マッサージしても治らない。
  • 熱感: 触るとその部分だけ熱い。
  • 見た目の変化: 足の血管が浮き出て見えたり、皮膚が変色したりする。

上記のような予兆を感じた際は、必ずピルの処方を受けているクリニック等に相談しましょう。

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もっと知りたい!ピルの血栓について

ピルで血栓ができるメカニズム

ピルで血栓ができやすくなる最大の理由は、成分に含まれる「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が肝臓に働きかけ、血液を固める力を強めてしまうからです。

本来、私たちの体には「出血を止める機能(凝固)」と「固まった血を溶かす機能(線溶)」のバランスを保つ仕組みがありますが、ピルはこのバランスを少しだけ「固まる側」に傾けてしまいます。

具体的なメカニズムは下記の通りです。

要因(1)肝臓での「凝固因子」の増加

経口摂取されたピルのエストロゲン成分は、腸で吸収されたあと「門脈」を通ってまず肝臓に運ばれます。この際、肝臓を刺激して血液を固めるタンパク質である「凝固因子」(プロトロンビンなど)の合成を強力に促進します。

本来は出血時にのみ働くこの止血システムが、血管内に傷がない状態でも常に「固まりやすいスタンバイ状態」になるため、血流の淀みなどが重なると誤作動を起こして血栓が生じやすくなります。

要因(2)「血を溶かす力」の低下

血液には血栓を溶かす「線溶系」という仕組みがあります。しかしピルの影響でこの働きが弱まり、できた血栓が溶けにくくなることがあります。

要因(3)血管の壁への影響

エストロゲンは血管の内側にある「血管内皮細胞」にも影響を与えます。この細胞は本来、血液がスムーズに流れるよう調整する役割を担っていますが、その働きが変化すると血小板が付着しやすい状態になります。

血小板が集まりやすくなることで血栓形成のきっかけが増え、特に血流が滞りやすい部位ではリスクが高まります。このように血管の状態変化も血栓形成に関与しています。

血栓のリスクが高い条件

(1)35歳以上で喫煙している

喫煙は血管を収縮させ、血液の流れを悪くするだけでなく、血管の内側を傷つける作用があります。さらに血液の粘度を高めるため、血栓ができやすい状態を引き起こします。

特に35歳以上で喫煙習慣がある場合、ピルによる血栓リスクが大きく上昇するとされ、多くの医療機関で処方が制限されます。健康リスクを避けるためにも、ピル服用を検討する際は禁煙が強く推奨されます。

(2)肥満

肥満の状態では、体内で慢性的な炎症が起こりやすく、血管や血液の状態にも悪影響を及ぼします。また脂肪が増えることで血流が滞りやすくなり、特に下半身では血液がうっ滞しやすくなります。

こうした環境は血栓形成のリスクを高める要因となります。さらに肥満は高血圧や糖尿病など他のリスクとも関連するため、複合的に血栓症の発症リスクを押し上げる点にも注意が必要です。

(3)高血圧・糖尿病などの持病

高血圧や糖尿病といった生活習慣病は、血管に慢性的なダメージを与えることで知られています。血管の内側が傷つくと血小板が集まりやすくなり、血栓が形成されやすい状態になります。

また血流の調整機能も低下するため、血液の滞りが起こりやすくなります。これらの持病がある場合、ピルの服用によって血栓リスクがさらに高まる可能性があるため、事前に医師へ相談することが重要です。

(4)長時間同じ姿勢でいる

長時間座りっぱなしや立ちっぱなしの状態が続くと、足の筋肉が使われず血液を心臓へ戻すポンプ機能が低下します。その結果、下半身の血流が滞り「うっ血」と呼ばれる状態になりやすくなります。

この血流の停滞は血栓形成の大きな要因となります。デスクワークや長距離移動の際は、こまめに足を動かしたりストレッチを行うことで、血流を促すことが予防につながります。

血栓リスクの高いピル、低いピルとは

血栓リスクの低いピル(ミニピル)

ミニピルは黄体ホルモン(プロゲスチン)のみを含むピルで、血栓リスクに関与するエストロゲンを含まない点が特徴です。そのため血液を固める作用への影響が少なく、従来の低用量ピルと比較して血栓リスクが低いとされています。

喫煙者や35歳以上の方、エストロゲンの使用が難しい体質の方でも処方できる場合があり、近年は安全性を重視した選択肢として注目されています。

比較的血栓リスクのあるピル(低用量ピル)

一般的な低用量ピルは、エストロゲンと黄体ホルモンの両方を含むことで高い避妊効果や月経周期の安定化が期待できます。一方で、エストロゲンが血液の凝固機能に影響を与えるため、血栓リスクがわずかに上昇する可能性があります。

ただしリスクは低く、医師の診察のもと適切に服用すれば過度に心配する必要はありません。体質や生活習慣に応じて選択することが大切です。

血栓リスクを下げる生活習慣

(1)こまめな水分補給

体内の水分が不足すると血液が濃縮され、粘度が高まることで血栓ができやすくなります。特にピル服用中は血液がやや固まりやすい状態になるため、意識的な水分補給が重要です。喉の渇きを感じる前にこまめに水を飲む習慣をつけることで、血流をスムーズに保つことができます。カフェインの多い飲み物は利尿作用があるため、水やノンカフェイン飲料を中心に摂取するとよいでしょう。

(2)こまめに足を動かす

長時間同じ姿勢でいると、下半身の血流が滞り血栓ができやすくなります。特にデスクワークや移動が多い方は、意識的に足を動かすことが大切です。かかとの上げ下げや足首の回転など簡単な運動でも、血液を心臓へ戻すポンプ機能を助ける効果があります。

1時間に一度は立ち上がるなど、小さな習慣を積み重ねることで血流改善につながり、血栓予防に役立ちます。

(3)血流改善をサポートする食事を心がける

血栓リスクを下げるためには、血流をサポートする栄養素を意識した食事も重要です。青魚に含まれるEPA・DHAは血液をサラサラに保ち、血小板の凝集を抑える働きがあります。

また納豆に含まれるナットウキナーゼは血栓を分解する働きを助け、玉ねぎやにんにくのアリシンは血流改善をサポートします。これらをバランスよく取り入れることで、体内環境の改善が期待できます。

EPA・DHA(オメガ3脂肪酸)
  • 働き

血小板が固まるのを抑え、血液の粘度を下げます。血管をしなやかに保つ効果も高いです。

  • 多く含む食品

サバ、イワシ、サンマなどの青魚

ナットウキナーゼ
  • 働き

納豆特有の酵素で、できた血栓を溶かす(線溶)働きを助けます。

  • 多く含む食品

納豆

アリシン
  • 働き

血液をサラサラにする効果があり、血流を改善します。

  • 多く含む食品

玉ねぎ、にんにく、長ネギ

血栓以外にも!ピルの副作用と対策アイテム

(1)肌荒れ、ニキビ

ピル服用初期にはホルモンバランスの変化によって肌荒れやニキビが出ることがあります。肌への刺激を減らすために、低刺激の石鹸に変えるなどスキンケアを見直すことも一つの方法です。

低刺激の石鹸の例。写真は『LC’Sジャムウ・ハーバルソープ(ラブコスメ)

(2)潤いが不足する

ピルによってホルモン環境が変化すると、デリケートゾーンの潤いが不足することがあります。性交痛が気になる場合は、潤滑ジェルなどを使用すると快適さを保ちやすくなります。

無香料・無着色でみずみずしい使用感の潤滑ジェルであれば、デリケートな部位にも使いやすく、自然なうるおいをサポートしてくれるでしょう。

無香料・無着色の潤滑ジェル例。写真は『ラブスライド(ラブコスメ)

また、ホルモンバランスの変化に伴い、性欲の低下を感じる人もいます。パートナーとコミュニケーションを取りながらタイミングを調整したり、気分を高める工夫を取り入れることも大切です。そういった場合は、気分が高まったタイミングで香りで相手に伝えることで、タイミングのずれを無くすという方法もあります。

香りでタイミングを合わせたい時に活躍する香水の例『リビドー ベリーロゼ(ラブコスメ)

ピルの血栓リスクは正しく理解することが大切

ピルには血栓症という副作用のリスクがありますが、発症率は低く、医師の指導のもとで服用すれば過度に心配する必要はありません。特に喫煙や肥満などのリスク要因がある場合は注意が必要ですが、生活習慣を整えることでリスクを下げることも可能です。

ピルを安全に使用するためには、自分の体質や生活習慣に合った種類を選び、異常を感じた場合は早めに医療機関に相談することが重要です。

※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。

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