藤東クリニックお悩み相談室~色素沈着について~
色素沈着の原因とは?
色素沈着は、何らかの刺激によって発生したメラニン色素が、皮膚の内部に蓄積することで起こります。色素沈着は、日焼けや摩擦、皮膚への負担がかかる行為など、ちょっとした生活習慣によって発生しやすくなります。
肌の黒ずみの主な原因は、色素沈着です。ただし、黒ずみは必ずしも色素沈着とは限らず、別の要因で生じることもあります。
色素沈着とその他の黒ずみの見分け方はある?
色素沈着とその他の黒ずみを見分けるのは難しいでしょう。もし古い角質のケアをしても黒ずみが改善できない時は、色素沈着を起こしている可能性が高いです。
色素沈着による黒ずみって病気なの?改善できるの?
色素沈着や、それによる黒ずみは、病気ではありません。原因を排除すれば、予防や改善も可能です。
色素沈着を改善するには、セルフケアによる予防と、皮膚科や形成外科で治療する方法があります。特化した方法での治療になるため、病院での治療の方が、より改善効果が高いです。
もっと知りたい「色素沈着」について
色素沈着とは
色素沈着の仕組み
色素沈着が起こるのは、ターンオーバーの乱れが原因です。
肌は、最下層の「基底層」という部分で作られています。通常、約4週間をかけて古い肌細胞が排出され、上へと押し上げられた新しい肌細胞と入れ替わります。これが「ターンオーバー」です。
紫外線、加齢、ホルモンバランス、摩擦などの外部刺激が起こると、メラニン色素が生成されます。メラニンとは、肌や毛髪、瞳の色を構成する黒色の色素で、本来は紫外線や外部刺激から皮膚の細胞を守る役割があります。
正常なターンオーバーができていれば、メラニン色素は古い肌細胞とともに排出されます。ところが、ターンオーバーが乱れると、生成されたメラニン色素を正常に排出できず、表皮内に過剰に蓄積され、色素沈着が起こるのです。
色素沈着の特徴
色素沈着の範囲や色味の均一さは、その原因によって大きく異なります。日焼けや摩擦などの刺激によって起こった色素沈着は、該当部位やその周辺のみに起こります。場合によっては、痛みやかゆみを伴うこともあるでしょう。
一方、薬やがんなどの病気によって発生する色素沈着は、広範囲に現れることが多いです。
色素沈着の種類と原因
(1)炎症後色素沈着
ニキビや怪我などの傷が炎症を起こし、その刺激によってメラニンが生成され、色素沈着を起こすケースです。やけどのような炎症を起こすほどの日焼けをした際も、同様の症状が起こることがあります。
脱毛のためにピンセットで無理に毛を抜き続けた場合にも、この色素沈着が起こりやすくなります。脇やVラインの黒ずみは、誤ったムダ毛処理方法も一因です。
身近なことでは、全身のゴシゴシ洗いや、きつい下着の着用による摩擦や跡も、炎症後色素沈着を起こす原因となります。
(2)日光性黒子(老人性色素斑)
長年紫外線を浴び続けることで肌がダメージを受け、色素沈着を起こします。いわゆる「シミ」と呼ばれるもので、年齢を重ねるごとに増えていきますが、早い人は20代でも出現します。
くっきりと形がわかりやすく、既にあるものは年数を重ねるうちに濃くなっていくことが特徴です。
(3)肝斑
「肝斑(かんぱん)」は、女性ホルモンのバランスが乱れたときに顔に出現する、境界線がはっきりせずもやもやと薄く広がる色素沈着です。頬骨周りに出る点と、左右対称に近い形になることが特徴です。
肝斑は、ホルモンバランスが安定すると薄くなることがあります。
(4)そばかす(雀卵斑(じゃくらんはん))
そばかす(雀卵斑)は遺伝により発生し、直径1~5ミリほどの斑点が鼻や頬に広がるように現れます。
子どもの頃からあることが多く、思春期を過ぎると消えたり薄くなったりする傾向があります。ただ、紫外線によって濃くなってしまうケースもあります。
色素沈着の予防法と治療法
(1)刺激を少なくする
紫外線
紫外線は、季節や天気に関わらず降り注いでいます。日焼けによる色素沈着を防ぐ為に、真夏など日差しが強い季節だけでなく、1年中紫外線対策をするよう心がけましょう。
外出の時間帯を調整できるなら、紫外線の強い時間帯を避けると良いでしょう。日焼け止めクリームを塗り、さらに日傘や帽子、サングラスなどを併用してください。特に、ニキビや怪我などの炎症がある時は、紫外線の刺激により色素沈着のリスクが高まりますので、万全の対策が必要です。
摩擦
摩擦は、皮膚にとって大きな刺激になります。ゴシゴシ擦って洗ったり拭いたりする行為や、コットンで強めに化粧水を押し付けるなどの何気ない動作も摩擦となり、肌を刺激しメラニン色素生成の原因となります。
お風呂で体を洗う際に、ナイロンタオルやボディブラシでゴシゴシ洗ってしまうのは、非常に強い刺激となります。顔も体も、常に肌には優しく触れることが大切です。
衣服や靴も、過度な摩擦を起こさないよう、体のサイズに合ったものを選びましょう。特に、サイズの小さな下着や靴は摩擦を起こしやすく、色素沈着の原因となりやすいです。
(2)保湿する
肌の保湿は、正常なターンオーバーを促進します。肌が乾燥していると、紫外線や外気の雑菌などの刺激から肌を守る「バリア機能」が低下した状態になります。肌をしっかり保湿することで、肌のバリア機能を保持することができるのです。
化粧水や乳液などのスキンケアアイテムで、しっかりと保湿するようにしましょう。また、化粧水や乳液などでの保湿ケアの際は、摩擦刺激を与えないよう、指の腹を使って優しく撫でるように塗布します。
(3)薬を使用する
皮膚科で処方される薬で、色素沈着を治療することができます。
色素沈着の治療には、漂白作用のある「ハイドロキノン」が含まれる薬が処方されることが多いです。ハイドロキノンには、メラニンを合成する酵素の働きを弱める作用や、メラニンを作るメラノサイトの数を減らす働きがあります。
内服薬による治療を行うケースもあります。例えば、「トラネキサム酸」の内服薬は、メラニンの生成やメラノサイトを活性化させる物質、皮膚の炎症を抑える効果があります。メラニンを合成する酵素の働きを抑え、濃くなったメラニンを薄くする作用があるビタミンCの、美白成分が含まれる飲み薬を処方されることもあります。
ただ、外用薬も内服薬も即効性はなく、効果が出るまで時間が必要です。
(4)レーザー治療を受ける
皮膚科や形成外科では、沈着したメラニン色素をレーザーで破壊し、色素沈着を治療する治療方法もあります。
レーザーにもさまざまな種類がありますが、老人性色素斑やそばかすなどを除去する際は、短い時間で高いエネルギーを与える「Qスイッチヤグレーザー」を使用します。メラニン色素部だけにダメージを与えられるため、健康な肌へのダメージを抑えながら治療できることが特徴です。
濃いシミや肝斑などには、肌への負担が少ない「ピコレーザー」を使います。ダウンタイムが少なく、短期間で効果を実感しやすい傾向があります。
その他にも、均一に照射できる「レーザートーニング」や、肌全体の透明感を上げる「フォトフェイシャル」などのレーザー治療もあります。それぞれの特徴とリスクを理解し、症状や生活リズム、予算に適した治療方法を選びましょう。
ただし、レーザー治療による刺激によって、炎症後色素沈着を起こすこともあります。その場合は、合わせて治療を続ける必要があります。
色素沈着以外の黒ずみを引き起こすNG習慣
(1)毛穴の汚れを洗い流せていない
色素沈着ではなくても、毛穴に酸化した皮脂などの汚れが溜まると肌が黒ずんで見えることがあります。肌の乾燥による皮脂の過剰分泌や、メイク汚れが主な原因ですので、日頃からスキンケアを丁寧に行い、毛穴汚れを防ぎましょう。
特に顔などの繊細な部分を洗うときは、肌に負担をかけないよう、刺激の少ない石鹸を選ぶと良いでしょう。デリケートゾーンなどにも使える石鹸であれば、全身まとめてケアすることができます。
(2)誤ったムダ毛ケア
誤ったムダ毛ケアをすると、肌ダメージを受け、黒ずみが生じる可能性があります。剃刀で自己処理をする際は、肌の負担が大きい逆剃りは避け、毛の流れに沿って少しずつ剃りましょう。シェービングジェルなどを活用し、肌への負担を減らすことも大切です。
ムダ毛処理後や肌のポツポツ感が気になるときは、保湿ジェルで肌の表面にしっかりと潤いを与えましょう。肌の保湿によって埋没毛も予防できるといわれています。
(3)制汗剤の使い過ぎ
デオドラントスプレーなどの制汗剤に含まれる薬剤や配合成分、またはデオドラントシートによる摩擦が刺激となり、黒ずみの原因となる炎症が起こる可能性があります。
普段から制汗剤やデオドラントシートを使っている方は、使用頻度や用量を見直しましょう。肌にやさしい低刺激のアイテムを選ぶのもおすすめです。
色素沈着が起こる原因を知って、黒ずみの対策をしよう!
色素沈着は、生活習慣の見直しや病院での治療により改善できますが、症状によって原因や対処法は異なります。まずは自身の色素沈着の原因を知り、取り除くことが大切です。
黒ずみの原因が、必ずしも色素沈着によるとは限りません。セルフケアによる予防法を試し、改善が見られないようであれば、皮膚科や形成外科での治療を検討してみると良いでしょう。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。