藤東クリニックお悩み相談室~コンドームの付け方について~
コンドームの正しい付け方って?
コンドームは女性器内に精子が入り、妊娠が成立するのを防ぐ避妊具です。男性器に被せて使用するタイプが一般的ですが、女性側に装着するコンドームもあります。つけるタイミングや装着の仕方にはポイントがあり、正しい付け方をしないと避妊効果が低減します。
また、一言でコンドームといっても、サイズや形状、付ける方法などメーカーによってさまざまな特色があるので、好みや使いごこちによって選ぶとより快適に使用できます。
コンドームを正しく付けないとどうなるの?
日本産科婦人科学会の2017年12月の資料によると、コンドームの避妊失敗率(使用開始1年間の失敗率)は理想的な使用方法で2%、一般的な使用方法で15%と記載されています。つまり、理想的な使用をすれば98%の避妊成功率があるにもかかわらず、正しいつけ方・使い方ができていないことで13%も妊娠の確立が下がってしまう傾向があるということになります。
実際「コンドームを付けていても妊娠する」と話されるケースには、正しい付け方ができていなかった状況も多く含まれます。また、性行為の最中に抜けてしまう、破れてしまうというアクシデントもあり得ます。
いずれの場合も、まずは正しく装着することが避妊成功率を高める大きなポイントです。
参考文献(外部サイト):2017年12月日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)」(P5.表1 各種避妊法使用開始1年間の失敗率(妊娠率))
もし、コンドームの使用を誤ったり、思わぬアクシデントが起きて避妊に失敗してしまったりなどの可能性がある時は、72時間以内に婦人科や産婦人科を受診し、モーニングアフターピルを処方してもらってください。
もっと知りたい「コンドームの付け方」について
コンドームの選び方
(1)コンドームのサイズと測り方
確実に避妊をするためには、まず適したサイズのコンドーム選びが大切です。
コンドームのサイズはS、M、L、LXといったバリエーションがあり、男性器の直径で分けられています。サイズはメーカーによって基準が異なります。箱やネットの表示で詳細のサイズをよく確認し、購入するようにしましょう。
ただし、サイズの目安はありますが、服や靴と同じように、実際に付けてみないとフィットするかどうかはわからないかもしれません。迷った時は実際に使用するデートの日よりも前に、一人で装着してみるのもいいでしょう。
サイズを測る時は、コンドームを使用する状況と同じように、十分に勃起させた状態で行います。メジャーで一番太い部分の長さ(円周)を測り、円周率(3.14)で割れば、直径の長さを出すことができます。
(2)コンドームの種類
コンドームは、まず大きく分けて男性用と女性用があります。一般的に「コンドーム」と呼ばれる男性器にかぶせるタイプは、男性用コンドームになります。男性用コンドームに使われる素材は、ラテックスやイソプレンラバー、ポリウレタンがあります。感触や伸縮性に違いがあるため、使用感にも好みがあるでしょう。
また、時として男性がコンドームの装着を断る際に「ラテックスアレルギーである」ことを理由として挙げることがあるようです。しかしポリウレタンやイソプレンラバーのコンドームはラテックスアレルギーでも使用が可能です。
アレルギーだからコンドームを装着できないということはないので、アレルギー反応の起きない別の素材のコンドームを使用するようにしましょう。
ラテックス製
ラテックス製とは、いわゆる「ゴム」でできたコンドームです。最もポピュラーな素材で、使用感は伸縮性がありフィットしやすいです。特有のゴムの臭いが気になる方がいるかもしれません。
ラテックス(天然ゴム)アレルギーがあると、男女問わずかゆみやじんましんなどが出る、呼吸に違和感が生じることがあります。ラテックス製のコンドームを使用して体調に異変が出た場合は、ラテックスアレルギーの可能性があるので、ポリウレタンなど別の素材のコンドームを使用するようにしましょう。
ポリウレタン製
プラスチック製のコンドームのことで、ラテックスほどの伸びはないですが、0.01mmなどの薄さを実現できる素材です。使用感はシャカシャカとビニールのような感触があります。伸びがない分、フィット感は感じにくいかもしれません。 ラテックスアレルギーがある方は、ポリウレタン製のコンドームを使用すると良いでしょう。
イソプレンラバー製
ゴムでもなくポリウレタンでもない、新しいコンドームの素材です。こちらもラテックスアレルギーの方が使用できるコンドームです。 伸縮性があり柔らかい素材のため、フィット感は高めです。感触も人の肌に近く、お互いの体温を感じやすいでしょう。ただ、まだ種類が少ないので、店頭ではなくネットで購入する必要があるかもしれません。
女性用コンドーム
女性器に装着するコンドームも存在します。外陰部と膣腟内を覆うようにして使用し、精子の侵入や感染症を予防します。
女性自身で身を守ることができる利点はありますが、男性用のコンドームよりも装着にコツが必要で、時間もかかるため、日本ではまだ主流の避妊方法ではないかもしれません。 また、日本で製造しているメーカーは今のところなく、現状手に入れるには海外製を購入することになります。ただし基本的に海外製コンドームは医療機器の認証がされておらず、安全性が不確実です。日本で女性が医療機器認証のあるコンドームを使用するには、男性用コンドームでの避妊が必要となっているのが実情です。
コンドームの正しい付け方と外し方
(1)コンドームを傷付けないように袋から出す
コンドームを装着するタイミングは、性器や体液を接触させる前が適切です。男性器が勃起して刺激が高まると分泌される、カウパー腺液にも精子は含まれています。指などに付いた状態で膣腟に触れるだけでも、妊娠の可能性は発生します。より避妊成功率を高めるためには、男性器が勃起した段階でコンドームを装着しましょう。
コンドームの包装を開ける時は、傷をつけないようにコンドームを指で端に寄せて開封します。取り出す際も傷を防ぐため、袋に触れないように指でつまんで取り出します。爪でつまむと傷がついて破れの原因になるので、指の腹で持つようにしましょう。
(2)精液だまりを摘まみ、空気を抜く
コンドームには、精液だまりという突起があります。文字通り、射精した際に精液を溜める部分です。 装着する時は、裏表をしっかり確認し、精液だまりの突起を指の腹でつまみ、男性器へのせます。ここに空気が溜まったまま装着してしまうと、出し入れした時に圧力がかかり、破裂の原因になります。
(3)勃起した男性器に被せる
精液だまりをつまんだまま、コンドームをゆっくり引き下ろして男性器に被せます。うまく下ろせない時は裏表を誤っている可能性があります。もし表にして男性器にのせてしまった時は、破棄して新しいコンドームを使いましょう。カウパー腺液などが付着していた場合、逆にしてそのまま使用すると精子が腟内に入ってしまう可能性があります。
引き下ろす時は、しっかりと根元まで下ろしましょう。浅いと抜けてしまうかもしれません。また、男性の陰毛の巻き込みは痛みが出たり抜けやすくなったりするので、毛の状況も注意しながらゆっくり装着してください。
(4)コンドームを外す
コンドームを装着し、性行為を行い射精したら、すぐに男性器を腟膣から抜きましょう。射精したあとの男性器はサイズが小さくなるので、コンドームが抜けやすくなります。コンドームの根元を押さえながらゆっくり抜くようにしましょう。
コンドームをはずしたら、破れていないかを確認してください。この時コンドームが破れていて精液が漏れ出る状態であれば、避妊を正しく得られていない可能性が高いため緊急避妊が必要になります。外したコンドームは精液が漏れないように出口を縛り、地域のごみ分類の指定(一般的には可燃ごみであることが多い)に従って破棄しましょう。
コンドーム使用時の注意点
(1)使用期限を守って使う
コンドームには使用期限があります。使用期限が切れたコンドームは、素材の劣化により破損する可能性が高いので、絶対に使用しないようにしましょう。
また、多くのコンドームの使用期限は箱に記載されているため、個包装だけでは使用期限が判断できないということもあります。パートナーがずっと持っていたいつ購入したかわからないコンドームは、使用期限が切れている可能性もあり危険です。コンビニやドラッグストアなどで、新しいものを購入して使用しましょう。
(2)保管に気を付ける
使用期限に関わらず、保管環境などによって劣化が早まることがあります。直射日光の当たらない、清潔で涼しい場所にしまうようにしましょう。ただし、近くに防虫剤があると劣化する可能性があるため、クローゼットにしまう際は注意してください。 持ち歩く時は、財布など不衛生で衝撃のある環境に個包装のまま入れておくと、中で劣化している可能性があります。外に持ち出す時は箱に入れたままなど、圧のかからない状態で清潔な環境を意識すると良いでしょう。
(3)繰り返して使わない
コンドームの使用回数はセックス1回につき1個です。射精していなくても、一度はずしたものを再度使用するのは絶対にやめましょう。衛生的に良くないことと、伸びてしまった状態で装着するため、空気が入り破裂する可能性もあります。
はずした時は、毎回新しいものを装着し直すようにしましょう。
(4)コンドームが破れたらアフターピルを服用する
性交渉中にコンドームが破れる、外れるなど何らかの理由で適切な使用ができなかった場合、避妊の効果は得られません。避妊に失敗した時は、セックス後の72時間以内に病院を受診し、モーニングアフターピル(緊急避妊薬)を服用してください。病院で処方する薬のため、街の薬局では買うことができません。婦人科か産婦人科で事情を話し、処方してもらってください。
モーニングアフターピルは、ホルモンの作用で子宮内膜を剥がし、受精卵の着床を防ぎます。1回のみの服用のものと、12時間後に2回目を服用するものがあり、副作用の予防のために、吐き気止めと一緒に処方されることがあります。72時間以内とされていますが、避妊に失敗したと判断した時点で、できるだけ早い方が良いでしょう。
ただ、モーニングアフターピルはあくまでアクシデントのための緊急対処法です。一度に多量の女性ホルモンを取り入れるため体への負担は大きく、さらに保険が摘要されないため全額自費となり、経済的にも負担が大きくなります。「後でピルを飲めばいい」と当てにせず、セックスの段階でしっかりと避妊をすることがベストです。
避妊や性感染症予防に役立つアイテム
(1)ゼリー付きコンドーム
挿入時に痛みや違和感がある方は、潤滑ゼリーが塗布されているコンドームを使用してもいいかもしれません。挿入時の摩擦を軽減し、スムーズな動きをサポートしてくれます。
ゼリーの種類も、温感や冷感など、感覚を楽しめるタイプもあります。パートナーとともに選ぶと、よりセックスや避妊を前向きに考えられるかもしれません。
(2)水溶性潤滑ジェル
ラテックス製のコンドームは、油性のローションとの相性が悪く、共に使うと破損することがあります。コンドームとローションを併用したいときは、水溶性のものを選ぶようにしましょう。
コンドームの正しい付け方を知って確実な避妊を
コンドームは、正しく使えば高い避妊率を期待できるアイテムです。また、安価で手軽に使用できることもあり、取り入れやすい避妊方法でもあります。避妊だけでなく、性感染症の予防にも効果的です。リスクをできるだけなくせば、愛する人とのセックスを心から楽しめるはずです。
もし、性行為の最中にコンドームが抜けてしまったり、破れてしまったりした時は、早急に病院を受診し、医師に相談してください。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。