藤東クリニックお悩み相談室～ペッティングについて～
彼との会話の中に「ペッティング」という言葉が出てきましたが、具体的にどういうことなのかわかりません。挿入はなく、妊娠や性病感染の心配はないと考えていいのでしょうか？
ペッティングの定義とは
ペッティング（petting）とは、キスや愛撫を通じてパートナーと身体的な親密さを共有する行為の総称です。英語の「pet（愛撫する）」が語源となっており、手や口を使って相手の身体に優しく触れることを指します。
一般的に、軽いキスやハグから始まり、胸部や性器への愛撫まで幅広い行為が含まれます。セックス（性交）とは区別され、性器の挿入行為を伴わない愛撫行為として定義されています。セックスに至る前の段階として位置づけられ、カップルが徐々に関係を深めていく自然な過程の一部とされています。
古くは「恋愛のABC」などという言葉もありました。「恋愛のABC」とは、カップル間の親密さの段階を表現した言葉で、A（キス）、B（ペッティング）、C（セックス）の順に進むとされていて、ペッティングはキスとセックスの中間のBにあたります。
現代では、この「ABC」の概念は必ずしも順番通りに進むものではなく、カップルそれぞれのペースや価値観によって異なります。重要なのは、お互いの同意とコミュニケーションを大切にしながら、無理のない範囲で関係を築いていくことです。ペッティングは、パートナーとの信頼関係を深める大切なコミュニケーションの一つといえるでしょう。
ペッティングで妊娠の心配はない？
基本的にペッティングは性器の挿入を伴わない行為であるため、妊娠のリスクは低いとされています。しかし「ゼロ」ではありません。たとえば、以下のような状況では妊娠の可能性が生じることもあります。
- 性器同士が接触し、精液が腟口付近に付着した場合
- ペッティング中に相手が性的に高まり、性行為に移行してしまうケース
こうしたリスクを避けるには、「ペッティングだけ」という明確な合意がある場合でも、相手がそれを尊重してくれる信頼関係が不可欠です。また、相手の欲望の高まりをコントロールできない場面では、自衛の意味で事前に線引きをしておくことが大切です
より安心してペッティングを楽しむためには、コンドームやデンタルダムといった避妊・感染予防具の使用を検討しましょう。
デンタルダムは、薄いラテックス製またはポリウレタン製のシートで、口でのペッティング（オーラルセックス）時に使用される感染予防用グッズです。主に女性の外陰部や肛門に当てて使用し、粘膜同士の直接接触を防ぎます。
なお、射精前でもコンドームを使用することで、妊娠と性感染症のリスクを大きく下げることができます。
ペッティングで性感染症の心配はない？
「挿入がなければ感染しない」と思っている方もいますが、それは誤解です。性感染症（STI）は、体液や粘膜を介して感染します。ペッティングに含まれるオーラルセックスや性器周辺の愛撫でも、以下のような感染リスクが存在します。
- ヘルペス
- 淋病
- 梅毒
- HPV（ヒトパピローマウイルス）
感染リスクを下げるためには、お互いの健康状態について事前に話し合い、定期的な性感染症検査を受けることが重要です。特に口内に傷がある場合や、口唇ヘルペスなどの症状などが見られる場合は、症状が完全に治まるまで口を使った愛撫は避けましょう。パートナーの健康を守ることは、自分の健康を守ることにもつながります。
もっと知りたい！ペッティングについて
ペッティングに含まれる行為と、セックスとの境界線
（１）軽めのペッティング行為
～軽めのペッティング行為の例～
- 軽いキスから舌を絡めるディープキス
- 服を着た状態での首筋や肩への優しいタッチやキス
- 背中や腰回り、素肌の太ももを優しく撫でる
- 衣類の上から胸や尻を揉む
上半身のペッティングは、軽いキスから始まり、徐々に深いキスへと発展させていきます。首筋や肩への優しいキス、耳たぶへの愛撫なども効果的です。胸部への愛撫では、まず服の上から優しく手のひら全体で包み込むように触れ、相手が心地よく感じているかを確認しながら進めます。
（２）より親密なペッティング行為
～より親密なペッティング行為の例～
- 全身への口づけ
- 素肌の状態で胸や尻を揉む
- 素肌の状態で全身を撫でる
- 服の上から性器に触れる
始めは服の上からだった胸への愛撫で直接肌に触れる際は、指先で円を描くように優しく撫でる、手のひらで温かさを伝えるなど、様々なタッチを組み合わせましょう。乳首への刺激は特に敏感な部分なので、最初は軽く触れる程度から始め、相手の反応に合わせて強さや方法を調整することが大切です。
下半身のペッティングでは、太ももの内側や腰回りから始めて、徐々に性器周辺へとアプローチしていきます。手を使った愛撫では、まず外側から優しく撫でることから始め、相手の反応を見ながら圧力や動きを調整します。女性の場合は、外陰部全体を優しく愛撫してから、クリトリスや腟口周辺へと進みます。男性の場合は、陰茎の根元から先端に向かって様々な握り方や動きを試してみましょう。
（３）さらに進展したペッティング行為
～さらに進展したペッティング行為の例～
- 指やバストを口に含んで刺激する
- 性器への手や口による直接刺激や愛撫
- 女性器への指の挿入
- 射精や潮吹きに至る愛撫
男性の場合は、陰茎の根元から先端に向かって様々な握り方や動きを試してみましょう。口を使った愛撫では、息遣いや舌の動きで様々な刺激を与えることができます。
女性の性器の愛撫では、特に歯で傷つけないよう注意します。舌を使った優しい刺激が基本となります。息を吹きかけることから始め、軽いキスから徐々に舌を使った愛撫へ進みます。舌先で軽く触れる、舌全体でゆっくりと舐める、唇で優しく吸うなど、様々な方法を組み合わせましょう。手を使った愛撫では、十分に興奮してから腟口周辺を指先で優しく撫でます。潤滑が不十分な場合は、無理をせずに時間をかけるか、潤滑剤の使用を検討しましょう。
また、指の挿入もペッティングに含まれます。最初は1本の指から始め、内部の敏感な部位（Gスポットなど）への刺激へステップアップしていきましょう。
男女どちらの場合も、清潔さを保ち、相手が心地よく感じる強さやリズムを見つけることが重要です。
（４）ペッティングとセックスとの境界線は？
ペッティングは「挿入を伴わない性的接触全般」を指すため、性器同士をこすり合わせるような行為もその範囲に入ります。これには、いわゆる「素股」や「ドライハンピング」、「アウターコース」と呼ばれる行為が含まれます。
素股とは、挿入せずに性器や太もも、外陰部の周辺などを擦り合わせる行為です。一般的な例には以下が含まれます。
～ペッティングに含まれる素股行為の具体例～
- 男性器と女性の外陰部をこすり合わせる
- 太ももやお尻の間での摩擦
- 下着の上からの接触
- 下着を脱いで肌を直接こすり合わせる
このような行為は、性交（セックス）と区別されるものの、強い性的刺激や密接な接触を伴うため、ペッティングの中でもより高度な段階に位置づけられます。
ペッティングの注意点とポイント
（１）相手の様子を見ながら進める
心地よいペッティングのためには、まず相手の身体の反応をよく観察することが大切です。息遣いの変化、身体の緊張や弛緩、表情などから相手の感じ方を読み取りましょう。同じ動きを続けるのではなく、強弱をつけたり、リズムを変えたりして変化をつけることで、より豊かな体験になります。
また、言葉によるコミュニケーションも重要で、「どこが気持ちいい？」「もっと強く？優しく？」などと聞くことで、お互いの好みを知ることができます。時には休憩を挟んで会話を楽しんだり、違う部位に移ったりすることで、長時間にわたって楽しむことも可能です。最も重要なのは、テクニックよりも相手への思いやりの気持ちです。
（２）清潔な手で触れる
ペッティングを安全に楽しむためには、基本的な衛生管理が欠かせません。行為の前後には必ず石鹸で手をよく洗いましょう。特に手や口を使った愛撫では、細菌の感染リスクを避けるため、事前のシャワーや入浴も推奨されます。口の中を清潔に保つため、歯磨きやマウスウォッシュの使用も効果的です。
（３）NGの境界線を事前に明確にする
健全な関係を築くためには、お互いの境界線を明確に設定し、尊重することが不可欠です。境界線とは「ここまではOK、これ以上はNG」という個人的な基準のことで、人によって大きく異なります。事前に「胸への愛撫は大丈夫だけど、下半身はまだ早い」「口を使うのは抵抗がある」など、具体的に話し合いましょう。
境界線は固定的なものではなく、関係の深まりや気分によって変化することもあります。そのため、定期的に確認し合うことが大切です。また、境界線を越えそうになった時は、すぐに気づいて修正する姿勢が重要です。相手の境界線を尊重することで、信頼関係が深まり、より安心して親密な時間を過ごすことができます。
（４）嫌なことがあったらしっかり伝える
ペッティング中に嫌だと感じたり、不快に思ったりした時は、遠慮なくはっきりと伝えることが大切です。「やめて」「痛い」「今日はここまでにしたい」など、明確な言葉で意思表示をしましょう。相手を傷つけたくないという気持ちから曖昧な表現を使うと、意図が伝わらない可能性があります。
断る時に理由を詳しく説明する必要はありませんが、「疲れた」「気分が乗らない」「痛みを感じる」など、簡単な理由を伝えると相手も理解しやすくなります。また、完全に中止するのではなく、「別のことをしたい」「違う部位にしてほしい」など、代替案を提示することも可能です。大切なのは、自分の気持ちを正直に伝え、無理をしないことです。
ペッティングのために用意しておきたい準備
（１）爪を切る
爪が長いと、爪の間に雑菌がたまりやすく、衛生的ではありません。また、長い爪は相手の体、とくに繊細な腟の粘膜を傷つけてしまうおそれもあります。傷ができると痛みだけでなく、そこから雑菌が入り込む原因にもなるため注意が必要です。
（２）コンドーム
挿入がなくても、オーラルセックスや精液が目・口などの粘膜に触れることで性感染症に感染するリスクがあります。そのため、ペッティングの際もコンドームを使用し、コンドームをかぶせた状態で愛撫することが望ましいです。
コンドームのラテックス特有のにおいや味が苦手な場合は、食べられるローションや香り付きコンドームを試してみましょう。
（３）指用コンドーム（フィンガーグローブ）
「指用コンドーム」や「フィンガーグローブ」と呼ばれるアイテムを取り入れるのもいいでしょう。指を覆うことができるので、指で性器を愛撫する際、より衛生的に行うことができます。性感染症予防や清潔さを保つためにもおすすめです。
（４）ティッシュ、ウェットティッシュ
ウェットティッシュは、プレイ前に手指を清潔にする目的や、愛液など体液をふき取る際に便利です。とくにデリケートゾーンを愛撫した後はにおいが残りやすいため、におい対策成分を含んだウェットティッシュが活躍します。
一方、男性の精液をふき取る場合は、吸収力のある乾いたティッシュのほうが適しているため、どちらも用意しておくと安心です。
（５）日頃からデリケートゾーンを洗う
ペッティングの際、初めて相手のデリケートゾーンのにおいに触れることも少なくありません。キレイに洗えていない場合、においが強く感じられることがあり、精神的な相性が良くても、その印象によって苦手意識を持たれてしまう可能性もあります。
日頃から丁寧に洗って、清潔な状態を保つことが大切です。とくにデリケートゾーンは繊細な部位なので、香りの強い石けんや化学物質を多く含む製品は避け、刺激の少ない自然素材のアイテムを選びましょう。
ペッティングは、お互いの気持ちと準備が大事
ペッティングは挿入を伴わない分、軽く考えられがちですが、相手への思いやりと衛生面の配慮はとても大切です。爪や指先のケア、コンドームやウェットティッシュの準備、そして日頃からの清潔習慣が、快適で安心できる時間をつくります。心地よいスキンシップのために、しっかり準備して、お互いにとって気持ちのいいペッティングを楽しみましょう。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。
