藤東クリニックお悩み相談室~月経カップについて~
月経カップを使ってみたいのですが、購入してみて使えなかったらどうしようと思って躊躇しています。誰でも使えるものなのでしょうか?注意点はありますか?
月経カップとは?
月経カップは、生理時の経血を受け止める医療用シリコン製の器具で、腟内に直接挿入して使用します。経血を12時間程度溜めることができるため、頻繁な交換が不要という特徴があります。
従来のナプキンやタンポンと比べて経済的で、1つのカップを数年間使用できることから、環境への配慮やSDGSの観点からも注目されています。
月経カップは誰でも使える?
使用時には指で折りたたんだカップを腟内に挿入する必要があり、サイズは直径30〜45mm程度と、タンポンより大きめです。そのため、腟内への挿入に心理的な抵抗を感じる方、特に性交経験のない方にとっては、使用を躊躇する要因となることがあります。
ただし、正しい入れ方を覚え適切なサイズを使用していれば、違和感をほとんど感じることなく装着できるとも言われています。月経カップにはとても沢山の種類があります。形やサイズ、素材によって使用感が大きく異なるので、自分に合ったものを選んで購入することも、うまく使いこなせるかに大きく関わってきます。
一方、月経カップは使い捨てのナプキンと異なり、月経カップを清潔に保つ衛生管理が必要となります。衛生管理が苦手な方、面倒に感じる方は使い捨てナプキンのほうが適しているでしょう。
月経カップの魅力やメリットとは?
前述のとおり、生理用ナプキンとの一番の違いは、繰り返し使うことができて毎月のコストがかからない点です。医療用シリコン製の月経カップは、適切なケアを行えば2〜3年以上使用できるため、使い捨ての生理用ナプキンに対し家計の負担を大きく軽減できます。
また、カップ内に溜まった経血量を目視で確認できるため、自身の経血量を把握することができます。
さらに、月経カップは腟内で経血を受け止めるため、ナプキン使用時によく経験する蒸れなどのトラブルを解消できます。外陰部が経血に触れる機会が少なくなることで、かゆみや不快感を軽減できます。特に暑い季節や運動時には、この利点が際立ちます。
加えて、1回の装着で最大12時間使用できるため、仕事や学業に集中したい時でも頻繁な交換の心配がありません。防水性も高いため、水泳などのスポーツでも安心して使用できます。
もっと知りたい「月経カップ」について
月経カップの形や構造
(1)月経カップの形や種類ごとの違い
月経カップは主に「カップ」と「ステム」の二つの部位から構成されています。ブランドにより、それぞれ計上に差や特徴があります。
カップ(本体)の違い
V字(円錐型)

上部から下部にかけて徐々に細くなる形状です。最も一般的な形状で、装着時の位置調整がしやすく、取り出しやすいのが特徴です。初めて月経カップを使用する方に適していると言われています。また、腟の形状に自然にフィットしやすく、活動的な方にも向いています。
ベル型(釣り鐘型)

上部が広がっており、下部に向かって急激に細くなる形状です。上部が広いため、より多くの経血を受け止めることができます。経血量が多い方や、長時間の使用を必要とする方に適しています。ただし、初めての方にとっては折りたたみや挿入がやや難しい場合があります。
ボール型

全体的に丸みを帯びた形状で、装着時の圧迫感が比較的少ないのが特徴です。腟壁への圧力が分散されるため、使用時の違和感を感じにくい方もいます。ただし、形状によっては取り出しにやや慣れが必要な場合があります。
持ち手(ステム)の違い
棒タイプ

最も一般的な形状です。長さがあるため掴みやすく、初めての方でも取り出しやすい特徴があります。ただし、長すぎると違和感を感じる方もいるため、必要に応じてカットして長さを調整できるように設計されています。
ボールタイプ

小さな球体が連なった形状で、指でつまみやすく、滑りにくい特徴があります。腟の長さが短めの方や、スポーツをする方に人気があります。ただし、球状の突起が気になる方もいます。
リングタイプ

輪っか状の形状で、指を引っ掛けて取り出しやすいのが特徴です。力を入れやすく、コントロールしやすいため、取り出しに不安のある方に適しています。一方で、やや太めの形状のため、違和感を感じる方もいます。
タブ型

薄く平たい形状で、違和感が少ないのが特徴です。ステムが短く、体に合わせやすい反面、慣れないうちは掴みにくく感じる場合があります。経験者や、より自然な装着感を求める方に向いています。
また、カップのふちを「リム」と呼びます。この部分にも、ブランドごとの違いがあります。
リムの違い
シングルリム

一重の縁取りで構成された最もシンプルな形状です。この形状は全体的に柔らかく、装着時の圧迫感が少ないのが特徴です。初めて月経カップを使用する方や、圧迫感に敏感な方に適しています。ただし、展開力(開きやすさ)はダブルリムと比べるとやや弱くなります。
ダブルリム

二重の縁取りを持つ形状です。展開力が強く、装着時に確実に開きやすい特徴があります。また、より強い密着性が得られるため、経血漏れのリスクが低減されます。ただし、リムが硬めで圧迫感を感じやすい場合があり、慣れるまで時間がかかることもあります。
フレアリム

上部が外側に向かって広がる形状です。装着時により広い面積で腟壁に密着するため、安定性が高く、漏れにくい特徴があります。特に経血量の多い方に適していますが、折りたたみや挿入時にやや技術を要する場合があります。
強化リム

リムの部分だけ硬度を上げた設計です。カップ本体は柔らかいままで、リム部分の展開力を高めることで、装着時の快適性と確実な密着性を両立しています。ただし、製品によって硬さの程度に差があるため、自分に合った硬さを選ぶことが重要です。
(2)月経カップの容量とサイズの選び方
月経カップの容量の違い(各生理用品の経血対応量(吸収量)の比較)
月経カップの容量は各社メーカーの商品ラインナップによって大きな差があります。最大で50mlまで対応できる製品も存在します。また、最大容量までためることは推奨されておらず、7〜8割程度で交換することが望ましいとされています。
得に多い日の夜用ナプキンが15~20mlの吸収量があることを考えると、15mlのSサイズの商品を一番多い日の夜に使用するのは、避けた方がいいかもしれません。

~月経カップ~
- S:15~30ml(最大昼用ナプキン3~6枚分)
- M:25~35ml(最大昼用ナプキン5~7枚分)
- L:35〜45ml(最大夜用ナプキン2~3枚分)
- XL:45〜55ml(最大夜用ナプキン3~4枚分)
~使い捨てナプキン~
- 通常の昼用ナプキン:約5ml
- 夜用ナプキン:約10〜15ml
- 特に多い日用の夜用ナプキン:約15〜20ml
~タンポン~
- レギュラー(普通)タイプ:6〜9ml程度
- スーパー(多い日用)タイプ:9〜12ml程度
- スーパープラス(特に多い日用)タイプ:12〜15ml程度
~布ナプキン~
- 昼用タイプの布ナプキン:5〜8ml程度
- 夜用タイプの布ナプキン:10〜15ml程度
一番最初に購入するのであれば、25~35mlの容量の月経カップがいいでしょう。
もし腟内にものを入れることに不安がある方であれば、20ml程度のSサイズのものを選び、生理中の全期間使用するのではなく、4日目以降など終わりかけの時期の使用から始めてみることをおすすめします。
月経カップの直径の違い
選ぶときに大切なのは、容量だけではありません。自分に合ったものを選ぶためには、「直径」や「全長」も比較することをお勧めします。
ブランドごとのサイズ別の直径の差は、下記のようになっています。

~Sサイズ~
より小さめのSサイズ:35〜38mm標準的なSサイズ:38〜41mm
やや大きめのSサイズ:40〜42mm
~Mサイズ~
より小さめのMサイズ:40〜42mm標準的なMサイズ:41〜44mm
やや大きめのMサイズ:43〜45mm
~Lサイズ~
より小さめのLサイズ:43〜45mm標準的なLサイズ:44〜47mm
やや大きめのLサイズ:46〜48mm
~XLサイズ~
標準的なXLサイズ:47〜49mm大きめのXLサイズ:49〜51mm
男性経験のない方は、直径が40mm以下のサイズがお勧めです。
また、出産経験がない場合は45mm以下のサイズから試すことをお勧めします。
一方出産経験のある方は45mm以上のサイズも違和感なく使用できることが多いでしょう。
月経カップの全長の違い
月経カップは長ければ長いほど、奥まで挿入が必要となります。そのため、直径が狭くても長さが長い点が違和感につながる方もいるでしょう。
ブランドごとのサイズ別の全長(ステムを含む)の差は、下記のようになっています。

~Sサイズ~
比較的短いSサイズ:55〜60mm標準的なSサイズ:60〜65mm
やや長めのSサイズ:65〜70mm
(本体のみは一般的に45〜50mm)
~Mサイズ~
比較的短いMサイズ:63〜65mm標準的なMサイズ:65〜70mm
やや長めのMサイズ:70〜72mm
(本体のみは一般的に50〜55mm)
~Lサイズ~
比較的短いLサイズ:68〜70mm標準的なLサイズ:70〜75mm
やや長めのLサイズ:75〜77mm
(本体のみは一般的に55〜60mm)
~XLサイズ~
標準的なXLサイズ:75〜78mmやや長めのXLサイズ:78〜82mm
(本体のみは一般的に55〜60mm)
リングタイプでない場合、体形に合わせてステムの長さをカットして調節できることが多いです。調節をして快適な長さにするといいでしょう。
(2)月経カップの素材
月経カップの素材は、基本的にシリコーンもしくはTPE(熱可塑性エラストマー)でできています。
医療用シリコン
医療用シリコン製は、最も一般的な素材です。柔軟性が高く、アレルギー反応が起きにくいのが特徴です。耐久性があり、適切なケアをすれば2〜3年以上使用できます。また、無臭で清潔さを保ちやすく、体温で柔らかくなるため、装着時の快適性も高いです。温度変化による変形も少なく、消毒にも強い特性があります。
ただしシリコーンとだけ記載されている場合、「医療用グレード」ではなく、より安価な「食品グレード」の素材が使われている場合があるので注意が必要です。食品グレードの素材の場合は、臭い移りや色落ちが気になるという声も聞かれます。明記されていない場合は、メーカーに素材について問い合わせるといいでしょう。
TPE(熱可塑性エラストマー)
TPE(熱可塑性エラストマー)製は、医療用シリコンより柔らかい素材です。体温で更に柔らかくなるため、挿入や取り出しがしやすく、初心者にも扱いやすい特徴があります。ただし、シリコン製と比べると耐久性はやや劣り、使用期間は1〜2年程度が目安とされています。また、温度変化による変形が起きやすい点にも注意が必要です。
特に触り心地の違いは、挿入のしやすさや違和感の有無に影響します。本来であれば直接挿入感を試せたらいいのですが、月経カップの場合はそうはいきません。店舗で実際に手で触って確かめたり、口コミを参考にするといいでしょう。
(3)月経カップの必要個数
月経カップは様々な種類がありますが、1個持っているだけでも十分に使用できます。ただし、複数持ちのメリットもあります。

経血量が多い方の場合、交換時に1つを洗浄している間、もう1つを使用できるため、より衛生的で快適に過ごせます。特に外出先での交換時は、個室で十分な洗浄ができない場合があるため、予備があると安心です。
生活スタイルによっては、会社用と自宅用など、使用場所で分けて持つことで、持ち運びの手間を省けます。また、ジム通いなど運動をする方は、運動用に別のカップを用意することで、より活動的に過ごせます。
ただし、複数持ちは必須ではありません。1個でも適切なケアと使用方法を守れば、十分に対応できます。消毒用の専用ウォッシュや携帯用ウェットティッシュを併用することで、1個での運用も十分可能です。
また、月経カップは2〜3年程度使用できるため、使用期限を考慮して2個目を購入するのも一つの方法です。この場合、新しい製品に慣れる期間を設けることができ、スムーズな切り替えが可能です。
(4)月経カップの交換頻度
経血量は個人差が多く、最初はこまめにトイレに行くようにして、どの程度たまっているかをチェックするといいでしょう。そのうちにどのくらいの期間で交換が必要かをつかむことができます。
ただし、トキシックショック症候群を避けるために12時間を超えないようにする必要があります。
- Sサイズ(20〜25ml) 経血量の少ない方であれば、1日2〜3回の交換で対応可能です。
- Mサイズ(25〜35ml) 通常の経血量の方であれば、1日2回程度の交換で十分です。
- Lサイズ(35〜45ml) 経血量の多い方でも1日1〜2回の交換で対応できます。
- XLサイズ(45〜55ml) 容量が大きいため、1日1〜2回の交換で対応できます。
月経カップの使い方
(1)月経カップの折りたたみ方
月経カップは入れるときに、まず折りたたんだ状態で入れる必要があります。この時の折り方は主に5種類あります。
Cフォールド(Uフォールド)

最も基本的で簡単な折り方です。カップを半分に折って「C」や「U」の形を作ります。初心者でも扱いやすく、確実に開きやすいのが特徴です。ただし、折りたたんだ際の直径が他の折り方より大きくなるため、挿入時に抵抗を感じやすい場合があります。
パンチダウンフォールド

カップの上部を内側に押し込んで折りたたむ方法です。折りたたんだ際の直径が小さくなるため、挿入時の抵抗が少なく、装着が比較的スムーズです。ただし、開きにくい場合があり、慣れが必要です。
7フォールド

カップの縁を7の形に折る方法です。挿入時の直径が小さくなり、スムーズに入れやすいのが特徴です。また、確実に開きやすく、初心者から上級者まで幅広く使用されています。
ダイヤモンドフォールド

まずCフォールドをしてから両端を内側に折り、ダイヤモンド型にする方法です。最も直径が小さくなる折り方の一つで、挿入がスムーズです。ただし、やや複雑な折り方のため、慣れるまで練習が必要です。
トライアングルフォールド

縁を三角形状に折る方法です。直径を小さくできる上、比較的開きやすい特徴があります。パンチダウンフォールドが上手くいかない方の代替として人気があります。
これらの折り方は、個人の好みや体の特徴によって最適なものが異なります。初めは基本的なCフォールドから始めて、徐々に他の折り方も試してみることをお勧めします。
(2)月経カップの入れ方
まず、月経カップを挿入する前の準備として、手を清潔に洗いましょう。その後月経カップを取り出して、手に持ちます。初めて使用する場合は、事前に月経カップを煮沸消毒しておきましょう。

次に、リラックスできる装着姿勢をとります。
主な装着姿勢には以下があります。
- しゃがみ姿勢:最も一般的で、自然に腟が開きやすい姿勢
- 片足を上げる姿勢:トイレや浴室で取り入れやすい姿勢
- 座位:便座に座った状態での装着
カップは、選択した折り方(Cフォールドやパンチダウンフォールドなど)で折りたたみます。折りたたんだ状態をしっかり保持することが重要です。挿入時は、以下の点に注意します。
- Step1:腟の角度は後ろ斜め下向き(約45度)にして、無理な力を入れず、ゆっくりと挿入する
- Step2:カップを腟内で開かせる際は、指で軽く回転させたり、底の部分を押す
- Step3:カップが完全に開いているか確認する(カップの周りを指で触れて確認
正しく装着できているかについては、下記の点を確認するようにしてください。
- ステムが腟口から極端に出ていないか
- 違和感がないか
- カップを軽く引っ張って、吸引力が働いているか
装着後は、軽く動いてみて違和感がないか確認します。慣れるまでは鏡を使って確認するのも効果的です。なお、初めて使用する場合は、生理開始から2〜3日目など、経血量が適度にある日に試してみることをお勧めします。また、最初は自宅で練習することで、リラックスして装着方法を習得できます。
(3)月経カップの取り出し方
まず、手をよく洗い清潔にしてから、トイレットペーパーを2枚程度切り取って取り出した月経カップを置ける場所を用意しておきましょう。
足を広げて便座に座ります。自宅であれば、しゃがむ姿勢や片足を上げる姿勢をとってもいいでしょう。力を入れすぎず、自然な状態を保つことが重要です。取り出しの手順は以下の通りです。
- Step1:腟の力を使って、カップをできるだけ下に下げます。これにより、つかみやすい位置までカップが降りてきます。
- Step2:吸引を解除することが重要です。カップの底の部分を指で軽く押して、吸引を解除します。この時、ステムを強く引っ張らないよう注意が必要です。
- Step3:吸引が解除できたら、カップを少し傾けながらゆっくりと引き出します。この時、カップを左右に少し動かしたり、軽く回転させたりすると、スムーズに取り出せます。
- Step4:経血をこぼさないように注意しながら取り出します。カップが腟口まで来たら、真っ直ぐに保ちながら慎重に引き出します。
- Step5:取り出したカップは、トイレに経血を捨て、洗浄します。次回の使用に備えて、しっかりとすすいでから保管します。
取り出すときの心得としては、下記のことを意識してみましょう。
- 焦らず、ゆっくりと行う
- ステムだけを強く引っ張らない
- 吸引を解除せずに無理に引き出そうとしない
- 取り出しにくい場合は、骨盤底筋を意識的にリラックスさせる
慣れるまでは時間がかかることもありますが、焦らず、自分のペースで習得していくことが大切です。
(4)月経カップのお手入れ(滅菌と保管)
月経カップのお手入れ方法について、使用時と保管時に分けて解説します。
使用時の基本的なお手入れ

経血を捨てた後は、必ずぬるま湯で洗い流し、無香料の専用洗剤や低刺激な石鹸で洗浄します。特に吸引穴は、詰まりやすいため丁寧に洗います。洗浄後は十分にすすぎ、清潔な布やペーパータオルで水気を拭き取ります。
生理期間中の毎日のお手入れ
1日1回は煮沸消毒か専用の消毒液での消毒が推奨されます。煮沸消毒の場合は、沸騰したお湯で3〜5分程度消毒します。この際、カップが鍋底に直接触れないよう注意が必要です。
生理期間終了後のお手入れ
最終日の使用後は、特に丁寧な洗浄と消毒が必要です。すべての経血や残留物を完全に除去し、煮沸消毒や専用の消毒液での消毒を行います。完全に乾燥させてから保管します。
保管時の注意点
清潔な布製の収納袋や通気性のある専用ケースに入れて保管します。密閉容器での保管は避け、風通しの良い場所で保管します。直射日光や高温多湿を避け、清潔な環境を保つことが重要です。
変色や劣化のチェック
定期的にカップの状態をチェックし、変色、劣化、破損などがないか確認します。特に吸引穴周辺や縁の部分は入念にチェックします。異常が見られた場合は、新しいものに交換することをお勧めします。
月経カップを使うときの注意点
(1)長くても12時間で取り出す
月経カップを12時間以上使用してはいけない主な理由は、健康上のリスク、特にトキシックショック症候群(TSS)の予防のためです。

TSSは、黄色ブドウ球菌が産生する毒素によって引き起こされる重篤な症状です。この細菌は通常、腟内に存在していますが、長時間同じ月経カップを使用することで、以下のような状況が生じる可能性があります。
- 細菌の増殖:温かく湿った環境が長時間続くことで、細菌が異常に増殖する可能性があります
- 毒素の蓄積:細菌が産生する毒素が体内に蓄積される risk が高まります
- 粘膜への刺激:長時間の装着により、腟粘膜への物理的な刺激が続き、微細な傷ができやすくなります
また、12時間以上の使用は衛生面でも問題があります。
- 経血の滞留による雑菌の繁殖
- 不快な臭いの発生
- カップからの経血漏れのリスク増加
このため、たとえ経血量が少なく、カップに余裕がある場合でも、12時間を超える使用は避け、定期的な交換と洗浄を行うことが推奨されています。
そして万が一自分で取り出せなくなった時は、12時間以内に婦人科を受診して取り出してもらうようにしましょう。
(2)生理期間外の練習はしない方がいい
生理期間に使うために、事前に月経カップの練習をしておきたくなる方も多いでしょう。しかし、生理期間外はむしろ月経カップの練習は推奨できません。

まず腟内環境への影響として、経血による自然な潤滑がない状態でカップを挿入すると、腟壁への摩擦が増加し、粘膜を傷つけるリスクが高まります。そして、乾燥状態での挿入は腟内の常在菌のバランスを乱す可能性があります。
装着感の違いについて、生理中と生理期間外では腟内の状態が異なります。生理中は子宮が下がり、腟の長さや角度が変化するため、生理期間外の練習では実際の装着感を正確に把握することができません。
感染リスクとして、乾燥状態での挿入は微細な傷を作りやすく、それにより感染症のリスクが高まる可能性があります。特に初めての方は、適切な挿入方法を習得できていない状態での練習は、このリスクをさらに高めることになります。
そのため、初めての使用は生理2〜3日目など、経血量が適度にある時期に試すことが推奨されています。
(3)性行為のときは必ず外してから
生理中に月経カップを付けたまま性行為をしようとするカップルはおそらくそう多くはないと思います。ただ、月経カップをつけたままなら避妊効果があるのではないか?と考え、あえてつけたまま行うという発想をすることがあるようです。
しかしこれは大きな誤りです。月経カップには避妊効果は全くありません。また、避妊できないだけでなく、女性の体に大きな負担がかかり、別の身体トラブルが起きる可能性もあります。
月経カップを装着したままの成功は、絶対にやめましょう。
月経カップの不安点
(1)入れることができなさそう
最初のうちは、なるべく時間に余裕があるタイミングを選んで自宅で装着するようにしましょう。月経カップは入れることができなくても無駄にはなりません。体調などによってうまく入れる感覚がつかめないこともあるでしょう。
そういう時は無理をせず、その日は別の生理用品を使い、また翌日や次の生理周期のときなどにチャレンジするといいでしょう。
(2)取り出せなくなりそう
月経カップがうまく取り出せなくなる原因は、主に下記のようなことが挙げられます。
- カップの吸着状態を解除できていない
- 奥に入りすぎてしまった
- 目で見て確認できないため、ステムの位置がうまく把握できない
月経カップが漏れずに経血を受け止めることができるのは吸着状態(真空状態)になっているためです。これを理解せずに抜き出そうとすると、うまく真空状態を解除できず、取り出せなくて焦ることになります。真空状態のまま無理やり引っ張って取り出すのは、痛みを伴うだけでなく子宮下垂の原因につながるリスクもあるのでやめましょう。
またこの吸着状態を解除するには「底を押す」ことが重要なのですが、取れないのは奥に入りすぎているせいだと判断し、奥に押すという行為が怖くてできないということもあります。しかし、奥に入りすぎてしまうことを心配するのではなく、勇気を出して底を押して真空状態を解除することが取り出すための第一歩になります。
ただし実際に月経カップが奥の方に移動してしまうこともあります。そうなったときはしゃがむ姿勢をとり、腹圧をかけることでカップを下げることができます。また、骨盤底筋をリラックスさせることも効果的です。
焦りや不安で筋肉が緊張すると、取り出しがより困難になります。深呼吸をしてリラックスすることが重要です。入浴中など、リラックスできる環境で試すのも効果的です。上記の方法を試しても取り出せない場合は、無理な操作は避け、医療機関を受診しましょう。医療従事者であれば安全に取り出すことができます。
(3)出し入れのときに手が血で汚れそう
月経カップの交換時、全く手が汚れないというのは難しいことです。しかし、月経カップを使用している時のデリケートゾーンは、基本的に経血がカップの中におさまっていくため、生理用ナプキンを使用しているときのように経血が沢山付着している状態ではありません。
そのため、月経カップのステムをつかむために指を入れても、血はほとんど付着しません。カップ内の血を捨ててティッシュペーパーやウェットティッシュで拭くとき、再挿入するときに血が付着することがあります。

手に付着した血はトイレットペーパーだと落ちにくいので、ウェットティッシュを自宅トイレに常備したり、外出時に持ち歩くといいでしょう。その際、なるべくノンアルコールのウェットティッシュを選べば、月経カップのふき取りにも使用することができます。
(4)漏れそう
月経カップの使用方法が適切であれば、月経カップは腟に吸着した状態になっているため漏れを心配する必要はほとんどありません。ただし慣れないうちはこの吸着状態がうまくいっていない可能性もあるため、おりものシートや昼用の小さめのナプキンを併用することをお勧めします。
サイズの大きいナプキンではないことや、沢山の経血がついている状態ではないことから、蒸れは通常の生理用ナプキンを単体で使用している時よりも大幅に軽減されます。
(5)入れたまま排尿はできる?
月経カップを装着したまま排尿することは可能です。月経カップは腟に入れて使用しますが、尿道は別の場所にあるため、カップが適切に装着されていれば、排尿に支障をきたすことはありません。
ただし、カップの位置が低すぎたり、サイズが大きすぎたりすると、尿道を圧迫して以下のような症状が起こることがあります。
- 尿の出が悪い
- 排尿時間が長くなる
- 残尿感がある
- 排尿時に違和感がある
このような症状がある場合は、以下の対処法を試してみましょう。
- カップの位置を少し高めに調整する
- ステムが尿道を圧迫している場合は、ステムを短くカットする
- 現在のサイズが大きすぎる可能性があれば、小さいサイズに変更する
また、排尿後にカップの位置がずれていないか確認することをお勧めします。もし違和感が続く場合は、装着位置やサイズが自分に合っているか、再検討する必要があります。
(6)長時間トイレに行けなかった時が不安
月経カップを使い始めたら必ず毎日月経カップを使わなければいけないということではないので、あらかじめ長時間トイレに行くことが難しそうなスケジュールが分かっているときは、最初から生理用ナプキンを使用するのも一つの手段です。
しかし、予想外にトイレに行く時間を取れないということは時々起こります。そういったときのために、次のような準備をしておくといいでしょう。
- 再装着のためのふき取り時間等を短縮するために、変えの月経カップを持ち歩く
- 再装着をすると時間がかかるので、ムーンパンツを履いておいて、月経カップを外すだけにする
- 月経カップを外すだけにして、再装着せずにナプキンを使用する(生理用ナプキンを持ち歩く)

12時間を超える装着はトキシックショック症候群のリスクがあり、危険です。とにかく外すタイミングだけでも確保するようにしましょう。
生理期間をより快適に過ごすためのアイテム
(1)デリケートウェット
生理期間中はデリケートゾーンをよりさっぱりと清潔な状態に保ちたいという方は多いことでしょう。デリケートゾーンにも使える低刺激のウェットティッシュを持ち歩けば、月経カップを外すときにデリケートゾーン周りに血がついてしまったときや、手が汚れたときもさっとふき取ることができます。

(2)ムーンパンツ
ムーンパンツはナプキン2~3枚分の液体の吸水力を持つ、サニタリー吸水ショーツ。
月経カップと併用することで、うまく月経カップが装着されていなかった時に起こる経血漏れなども安心できます。
(3)アンダーヘアケアセット
アンダーヘアが処理されていない状態だと経血が付着しやすく、付着すると綺麗にふき取るのが困難です。月経カップを出し入れするときも、アンダーヘアが処理されている状態だと、手元を確認しやすくなります。
IラインシェーバーやVライントリマーで長さを整えることで、より快適な生理期間を目指すことができます。

今の生理用品で不快感があるなら、月経カップを試してみよう
月経カップは初めて使用するのに勇気がいるかもしれませんが、慣れると非常に快適に生理期間を過ごすことができるようになったという声も多く聞かれるアイテムです。もし今、使い捨てナプキンやタンポンで不快感などのトラブルを抱えている場合は、一度チャレンジしてみてもいいでしょう。

最初の生理期間ではもしかしたらうまく装着ができないこともあるかもしれません。しかし月経カップは、一度購入したらなくなってしまうものではありません。うまく使えるようになるまで、じっくりコツをつかめるまで試してみるのもいいでしょう。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。