藤東クリニックお悩み相談室~更年期の性欲について~
更年期に入ってから、性欲が増したような気がしています。この年齢で性欲が増すということに恥ずかしさを感じています。どうやったら抑えることができるでしょうか。
更年期に性欲が増すのはおかしい?
更年期は、一般的に閉経前後の約10年間(閉経前5年、閉経後5年)とされています。閉経は平均して50~52歳頃に訪れます。したがって、多くの女性が40代後半から50代にかけて更年期を経験します。
更年期の女性は性欲の増加を感じる人が一定数いますが、これはホルモンバランスの変化の影響による自然な現象です。そのため、更年期に性欲が増したように感じてもおかしなことではありません。
一方で男性は加齢とともに男性ホルモンの分泌が減少し、体力の低下も合わさって、年とともに性欲の低下を感じる人が多いようです。
更年期の性欲を抑えるにはどうしたらいい?
性欲は健康な生理現象の一つです。特に更年期の性欲の増進は科学的なメカニズムに基づいたもので、恥ずかしく感じる必要はありません。「性欲を抑える」ために効果的な方法というのは非常に個人差が大きく、確実な方法はまだ詳しくわかっていません。 無理に抑えようとするよりも、他者に影響のない範囲で発散していくことがいいでしょう。
もっと知りたい「更年期の性欲」について
更年期に女性の性欲が高まるメカニズムと解消法
更年期に性欲が高まるメカニズム
まず、更年期は卵巣機能の低下に伴いエストロゲン(女性ホルモン)の分泌が減少し、月経周期が不規則になり、最終的に月経が停止します。この時、ホルモンバランスの変化により、ほてりやのぼせ、発汗、不眠、気分の変化といった様々な身体症状が現れることがあります。
そして女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少することで、男性ホルモン(テストステロン)が相対的に多い状況になります。この男性ホルモンのテストステロンは、働きの一つに「性欲・性衝動の亢進」を持っています。
更年期はテストステロンの体への影響力が増すことで、性欲や性衝動を感じやすくなるという仕組みなのです。

更年期の性欲の解消方法
更年期に性欲の増加を感じた場合、パートナーがいるのであればパートナーを誘って性行為をすることが最もシンプルな解決方法です。日本では「子供を作るという目的ではない年齢で性行為をするのは恥ずかしいこと」と感じる女性も多いようです。しかし、2019年の厚生労働省研究班の調査では50代の女性の約半数、60代の女性の40%が性行為をしているというデータがあります。
50代以降の性行為について、人に話すことはあまりないでしょう。そのため年を重ねると性行為はしなくなるものだと錯覚している人が多いかもしれません。しかし実際は2人に1人近くの女性が性行為を行っており、決して珍しいことではありません。
一方で、パートナーがいなかったり、パートナーを性的対象としてみることが難しいということもあります。その場合一人で性欲を解消する方法があります。
たとえば最新のラブグッズはスマートフォンと接続してボイスや動画と連動するアイテムがあります。まるでパートナーと性行為をしているかのような時間が過ごせるという声が集まっています。

更年期の性行為で注意すべきこと
(1)避妊
更年期は月経が不規則になり、いつ閉経を迎えるか予測が難しい時期です。月経が1年以上ない状態を閉経と定義しますが、最後の月経から1年経過するまでは妊娠の可能性が残ります。特に、月経が数ヶ月途絶えた後に再開することもあり、その際に排卵が起こる可能性があります。
そのため、更年期の性生活では確実な避妊が必要です。「もう閉経している」と自己判断するのではなく、医師によって閉経の確認がされるまではコンドームの着用をしましょう。なお低用量ピルは血栓のリスクがあるため、更年期に使用することはできません。
特に更年期は、性的快感を得ていても潤いにくいという特徴があります。コンドームには温感ジェルがたっぷり塗布されていてスムーズな挿入をサポートしてくれるタイプのものもあります。避妊目的だけでなく、コンドーム選びによってより快適な時間を過ごせる工夫もできます。

(2)射精にこだわらない
女性のテストステロン(男性ホルモン)が相対的に優位になるのに対し、男性は加齢とともに男性ホルモンの分泌量が減少します。そのことにより勃起や射精に時間がかかったり、十分な状態に至ることができない頻度も増えてきます。
女性としては相手に快感を感じてもらいたいという考えから、なるべく男性側が射精に至れるようにしようと考えることでしょう。しかし射精にこだわりすぎると男性側にプレッシャーを与えてしまう可能性もあるため、そこをゴールにしない考えも大切です。
男性の中には、女性が快感を感じている姿に満足感を得る人もいます。女性自身が素直に快感に身をゆだね、互いに思い切り感じあえたら行為の目的は達成したと考えていくといいでしょう。
射精にこだわらない性行為では、行為そのものに新しい楽しみを取り入れることがおすすめです。例えば、お風呂のお湯がローションに代わる「ローションバス」を使ってみたり、相手の体がまるでデザートのように感じられる「食べられるローション」などもそういった楽しみを得られるアイテムの一つです。


(3)毎回性行為にこだわらない
男性の性欲や体力の低下は1回の行為の中での充実度以外にも、「頻度(回数)」に表れることもあります。つまり女性が求める回数が、男性の体力・性欲を上回ってしまう可能性があるということです。
人によっては疲れているのに求められることで、性行為自体に拒否感を持ってしまう可能性もあります。カップルの性行為の頻度は、基本的には「少ない方に合わせる」方が問題が起きにくいとも言えます。
とはいえ、性欲の多い方が我慢するばかりでは大変ですし、そのためにほかのパートナーを求めるのは理想的とは言えません。性欲の解消方法でもお話ししましたが、そういったときはパートナーとの性行為で性欲を発散するのではなく、一人でラブグッズ等を使って解消することを視野に入れましょう。例えば自分としては週に2回が理想的な回数である中で相手が週1回がベストだと考えているときは、1週間のうち1度は自慰行為で解消するといいでしょう。
グッズは音が気になって使用しにくいという場合は、コスメを使用する方法もあります。ベッド専用コスメの中には、適量を指にとってデリケートな部分をマッサージすることで普段とは違うじんわりとした快感を得ることができるタイプのジェルもあります。

更年期に性欲の高まりを感じている人におすすめのアイテム
(1)潤滑ジェル
女性は更年期に入ると、エストロゲン(女性ホルモン)の減少により、腟の粘膜が薄くなり、自然な潤いが低下します。潤いが不足すると、性交時の痛みや不快感、腟粘膜の傷つきやすさなどの原因となります。
性欲がありつつも行為自体は痛い、というのは満足感が得られにくくなってしまいます。腟の入り口や粘膜が傷ついてしまう恐れもあります。そのため更年期の性行為では、潤滑ジェルを取り入れることをお勧めします。水溶性の潤滑ジェルは、摩擦による不快感を軽減し、腟粘膜を保護することができます。
潤滑ジェルと混同しがちなアイテムに「ローション」が挙げられます。しかしローションは全身でとろとろとした肌触りを楽しむためのものであり、デリケートゾーンに使用するのには向いていません。水分を吸収する性質のある成分が含まれているものも多いため、ぬめりがあるからといって挿入時に使用するのは避けましょう。更年期の挿入のサポートを求める場合は、ローションではなく潤滑ジェルを選ぶようにしましょう。
潤滑ジェルの多くはより硬めのテクスチャのため、ローションのようにベッドに垂れて汚れる心配がないのも魅力の一つです。

(2)ラブグッズ
ラブグッズは男性の持続力に課題のあるカップルが一緒に使うことで、1回の性行為の満足度を向上させることができるアイテムでもあります。
今はスマホの遠隔操作ができるアイテムのほかカップルで使うことに特化したアイテム、逆に電池があればいつでも動かすことができる使いやすいバイブなど幅広く選ぶことができます。

(3)デリケートゾーンケアアイテム
今はデリケートゾーンのケアアイテムも充実しています。しばらく性行為に関心がなく避けてきたけれど、今再び性行為に関心があるという方についてはデリケートゾーンケアに興味を持ってみるのもいいかもしれません。
例えばデリケートゾーン石鹸は、毎日のお風呂の時間に泡パックをすることで、デリケートゾーンのにおいや角質の蓄積が気になる時に、臭いの元や汚れをすっきり洗うことができます。

更年期の女性であればデリケートゾーンの乾燥が気になるという方も多いかもしれません。デリケートゾーン用の保湿ジェルは、デリケートゾーンの乾燥の不快感をケアできるだけでなく、潤いを与えることで摩擦刺激による黒ずみから保護したり、ふっくらとした若々しい印象をサポートします。

そのほかにもデリケートゾーンケアに関心がある方は、ぜひ下記の記事も確認してみてください。
更年期の性欲は抑えるのではなく解消しよう
女性が更年期に性欲を感じるのは、ホルモンバランスの変化による影響でとても自然なことです。更年期の性欲は抑える方法を考えるよりも、ストレスなく発散するようにしましょう。50代の女性の約半数は性行為を行っているという厚生労働省の統計もあり、更年期での性行為は珍しいことではありません。
性欲の解消は性行為だけでなく、一人で行うこともできます。グッズやコスメ、潤滑ジェルなどを活用しながら、最も心地よく過ごせる生活パターンを探っていきましょう。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。