藤東クリニックお悩み相談室~コンドームをつけていても妊娠するのかについて~
コンドームをつけていても妊娠することはありますか?
コンドームをつけていても妊娠するの?
日本では、最もポピュラーな避妊方法と言えるコンドーム。実は、正しくつけていても避妊率は92%程度で、確実に避妊が成功するとは限りません。
コンドーム使用時の避妊率が下がる主な原因は、誤った保管方法や使い方による破損や劣化、行為中に外れてしまうなどです。避妊率を100%に近づけるには、破損の要因となる取り扱い方に注意し、正しくコンドームを着用することが大切です。
一方「低用量ピル」は、正しく服用できていれば、避妊率はほぼ100%です。しかし、日本は海外に比べて、低用量ピルの普及率が低いのが現状です。より妊娠を回避する確率を上げたい場合は、低用量ピルとコンドームを併用することをおすすめします。
避妊目的でピルを服用しているとしても、性感染症予防のために、性行為の際は毎回コンドームを着用することが望ましいです。
コンドーム以外の避妊方法はあるの?
コンドーム以外にも、先述した「低用量ピル」の服用など、複数の避妊方法があります。女性側が積極的にできる避妊方法もありますので、合わせて事前に確認してみましょう。
もし不慮の事態により避妊に失敗した場合は、早めに産婦人科を受診し緊急避妊薬を処方・服用することで、対処ができます。
もっと知りたい「コンドーム着用と妊娠の関係」について
コンドームをつけていても妊娠をする理由
コンドームで妊娠を防ぐことができるメカニズム
妊娠は、腟内に入った精液に含まれる精子が卵子と出会って受精し、細胞分裂を繰り返しながら子宮内膜に着床することで成立します。男性(または女性)の性器にコンドームを装着することで、腟内へ精液が侵入しないよう防ぎ、妊娠を回避することができます。
コンドームの避妊率は100%ではありませんが、正しく使用すれば約92%の避妊効果があります。しかし、誤った使用・脱着方法によって、妊娠の可能性が上がります。
妊娠に繋がるコンドーム装着前の失敗例
コンドームをつける前の段階で、避妊の失敗に繋がるポイントを確認してみましょう。
(1)コンドームをせずに素股をする
素股とは、男性器を腟内に挿入するのではなく、女性の太ももと女性器との隙間に挟んでこすりつける性的行為です。
男性が性的刺激を受けると、ペニスからは「カウパー液」という体液が出ます。この体液の中にもわずかな精子が含まれている場合があり、素股によって女性の外陰部にカウパー液が付着することで、精子が腟内に入ってしまう可能性があります。
(2)精液がついた指を腟内に入れる
上述したカウパー液や、すでに一度射精した際についた精液がついた指を腟内に入れる行為にも、思わぬ妊娠のリスクがあります。腟内に直接射精していなくても、精子が女性器の中に侵入すれば、妊娠してしまう可能性があるのです。
(3)射精直前だけ装着する
コンドームは、男性が勃起した時点でつけるのが正しい装着方法です。射精直前だけに装着するだけでは、カウパー液が指や女性の太もも、女性器などに付着するため、妊娠してしまう可能性があります。
妊娠に繋がるコンドーム装着後の失敗例
コンドームをつけた後も、正しい取り扱いをしなければ、避妊の失敗は起こり得ます。
(1)コンドーム自体に精液が付着する
精液やカウパー液がついた指でコンドームに触れたり、裏表を間違えて装着しかけてコンドームにカウパー液がついたにもかかわらず同じものを裏返してそのまま使用したりすると、腟内に精子が入り込む可能性があります。
(2)破れる
コンドーム自体が劣化している場合や、開封時や装着時にパッケージや爪などが引っかかると、コンドームが破損します。また、装着時に空気を抜け切れていなかったり、サイズの小さいコンドームを使用したりすると、ピストン時の空気圧によってコンドームが破れてしまうことがあります。
コンドームが破れれば、当然体液の侵入の恐れが高まり、妊娠の確率が上がります。
(3)外れる
オーラルセックスやローションなどによりペニスが濡れている状態でコンドームを装着する、大き過ぎるサイズのコンドームを使っているなどの場合、セックスの最中にコンドームが外れてしまう可能性があります。
(4)漏れる
射精後、ペニスは徐々に元の大きさに収縮していきます。すると、コンドームとペニスの間に隙間ができ、精液が漏れてしまうことがあります。女性器周りに精液が付着すれば、妊娠の可能性は高まります。
妊娠に繋がるコンドームのNG例と対策
(1)コンドームの選び方
コンドームによるトラブルを避けるためにも、必ず男性に合ったサイズを選ぶようにしましょう。コンドームが大き過ぎると外れる・漏れる可能性があり、小さ過ぎると破れてしまう恐れがあります。
また、日本国内の品質基準を満たしていない海外製のコンドームの中には、粗悪な品質のものも存在します。予期せぬ破損や漏れのリスクを回避するため、日本で販売しているコンドームの使用をおすすめします。海外旅行の土産品などで手に入れたコンドームも、注意が必要です。
(2)コンドームの保管方法
コンドームの外装箱には、使用期限が記載されています。期限切れのものは劣化しており、使用中に破損する恐れがあります。期限が切れた、もしくは5年以上前に購入したコンドームは、破棄するようにしましょう。いつ購入したか分からないものや、入手経路が分からないコンドームは、劣化や穴が開けられているなどのリスクがあります。これらは破棄し、自身が新しく購入したものを使用してください。
また、多くのコンドームはとても薄く繊細にできています。取り扱いの際は、本体はもちろんのこと、外装も爪などで傷つけないよう細心の注意を払いましょう。
さらに、コンドームは衝撃や油性のものにとても弱いです。箱から出して財布や化粧ポーチにそのまま入れたり、油性ペンで個装のパッケージに何か書いたりすると、コンドームの劣化や破損のリスクが高まります。持ち歩く時は缶などの硬いケースに入れ、油性のものや尖ったもの、硬いものに当たらないよう留意してください。
そして、コンドームの使用は1回の挿入に1つが鉄則です。一度使ったものは、射精していなかったとしても破棄しましょう。
(3)コンドームの装着・取り扱い
コンドームを使う際は、爪や外装袋の角などに気を付けて取り出しましょう。ちょっとした傷でも、コンドームを装着して伸ばすと破れる可能性があります。袋を開ける時は、コンドームを片側に寄せ、反対側からゆっくり開けてください。
誤ったつけ方をすると、抜けたり破れたりするリスクが高まります。コンドームを装着する時は、まず裏表を確認し、爪を立てずに指の腹で先端の精液溜まりをつまんで、十分に勃起したペニスに乗せ、空気を抜いた状態で根元まで下ろします。
コンドームの内部に空気が溜まっていたり、勃起が不十分な状態だったりすると、脱落や破裂の原因となります。また、コンドーム内に陰毛を巻き込むと、摩擦によって破れやすくなるため、コンドームを下ろす時は陰毛が絡まないようにも注意しましょう。
そして射精したら、コンドームの根元を押さえてすぐに腟から抜いてください。射精から時間をおくと男性器が収縮するため、漏れるリスクが高まります。
藤東クリニックお悩み相談室~コンドームの付け方について~ 質問者 お互いが初めてのセックスで、コンドームの付け方が分かりません。正しいコンドームの付け方を知りたいです。 藤東先生 今回はコンドームの付け方について解説しま[…]
コンドーム以外の避妊方法と避妊率
(1)低用量ピル
低用量ピルとは、女性ホルモン(卵巣ホルモンと黄体ホルモン)が配合されている薬で、ホルモンのバランスを整えたり、排卵や子宮内膜の増殖を抑制したりする効果があります。
排卵が抑制されるため、正しく服用できていれば、99.7%もの避妊効果が得られます。パートナーがコンドームによる避妊に協力的でない場合でも、比較的取り入れやすい避妊方法と言えるでしょう。
低用量ピルは、毎日1錠を忘れずに飲み続けることで高い避妊率が成立します。しかしながら、飲み忘れがあった場合や、胃腸の調子が悪く薬が上手く吸収できなかった場合、妊娠してしまうこともあります。
また、飲み始めて1週間程度は避妊効果を得られない可能性があるため、コンドームの併用を推奨します。もちろん、性感染症予防の観点では、ピルを服用していてもコンドームを併用することが望ましいです。
低用量ピルを服用することで生理周期が整えられますが、整うまでに2~3周期ほどかかるケースもあります。特に飲み始めの頃は生理不順が整っておらず、休薬期間中に生理が来ないこともあり、妊娠を疑う方もいます。生理周期や妊娠が不安な時は、処方された病院へ相談してみましょう。
(2)IUS(子宮内システム)
子宮内に器具を装着して、着床を防ぎ避妊する方法が「IUS(子宮内システム)」です。黄体ホルモンが付加されたIUSを子宮内に装着すると、薬剤が少しずつ放出されます。すると、黄体ホルモンによって子宮内膜の増殖が抑えられ、受精卵の着床を防げるのです。
病院で数分の処置で装着でき、一度装着すると最長5年間避妊効果があります。その避妊率は99.9%と非常に高いのが特徴です。
女性主体で避妊ができ、さらに子宮内膜が薄くなり生理の出血量が減ることから、月経時の貧血やだるさなどを軽減する効果も期待できます。
(3)IUD(子宮内避妊用具)
「IUD(子宮内避妊用具)」とは、IUSと同じく、子宮内に器具を装着して受精卵が子宮内膜に着床するのを防ぐ避妊方法です。銅付加の器具を子宮内に装着することで、精子の運動量を抑えたり、受精を妨げたりする効果があります。
こちらも95%と高い避妊率で、女性主体でできる避妊方法です。一度装着すると2~5年効果が続きます。基本的に、出産経験がある方(経産婦)の使用が推奨されています。
(4)緊急避妊薬
緊急避妊薬は、「アフターピル」とも呼ばれるホルモン配合剤です。避妊に失敗したと思われる性行為から72時間以内に服用することで、排卵の抑制や着床の阻害により妊娠を防ぎます。
緊急避妊薬の避妊率は約70%で、必ずしも妊娠を阻止できるとは限らないのが現状です。また、現時点では緊急避妊薬は病院でしか処方できないため、いかに早く受診できるかが鍵となります。
ただし、緊急避妊薬は保険不適用で、吐き気・頭痛・腹痛・眠気などの副作用が起きる可能性があります。身体的にも経済的にも負担が大きいので、緊急避妊薬はあくまで最終手段とし、日常的に自身に適した避妊方法を用いるように心がけてください。
知っておきたい!コンドームによる妊娠防止について
(1)コンドームと低用量ピルの併用で避妊率アップ
男性主体の避妊方法であるコンドームに対し、低用量ピルは女性主体で実施できます。コンドームは、正しく使用してこそ避妊効果が得られるものです。失敗することもあり得るので、より避妊効果を高めるには、コンドームと低用量ピルの併用が望ましいです。
ただし、先述のとおり低用量ピルには性感染症予防効果はありません。避妊の意味合いでなくても、コンドームは必ず使用しましょう。
(2)コンドームには種類が沢山ある
コンドームは、素材やサイズ、形状など、様々な種類が販売されています。
潤滑ジェルがたっぷり塗布されたものなど、潤い不足による性交時の違和感・不快感を軽減できるコンドームもあります。悩みやお互いの好みに合わせて選ぶことで、より前向きに性行為を楽しむことができるでしょう。
ラテックスアレルギー(ゴムアレルギー)の方は、ポリウレタン製やイソプレンラバー製のコンドームを選んでください。
(3)コンドーム破損などのトラブルには緊急避妊薬を
コンドームをつけていたにもかかわらず、望まない妊娠に繋がるようなトラブルが起こった時は、緊急避妊薬の服用を検討しましょう。
まずは産婦人科を受診し、緊急避妊薬の処方を相談してください。処方されたらすぐに服用しましょう。性交後72時間以内に飲む必要があります。
土日や夜間など、産婦人科が休診の場合もあります。不測の事態が起こる前に、お近くの病院の診察日・診察時間など、入手方法を確認しておくと良いでしょう。
藤東クリニックお悩み相談室~緊急避妊薬について~ 相談者 彼とセックスをしたらコンドームが破れてしまいました。セックスの後でも服用すれば避妊ができる「緊急避妊薬」というものがあると聞いたのですが、どこで買えますか? 藤東先[…]
コンドームをつけていても妊娠する可能性があるので、注意が必要
コンドームは、正しく装着できていても、避妊率は92%程度です。つける前と後のポイントを理解・実施していないと、思わぬミスやトラブルが起こる可能性があります。正しい知識を得て、正しく装着することで、コンドームによる避妊の効果は高まります。
より確実に避妊をしたいなら、コンドームとともに、女性主体でできる低用量ピルの服用と併用することが望ましいです。低用量ピルの使用を検討する際は、クリニックを受診し、医師にご相談ください。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。