藤東クリニックお悩み相談室~腟内射精障害について~
腟内射精障害って、何?
腟内射精障害とは、ペニスに刺激を与えて勃起はできるけれど、腟内に挿入すると射精できない症状です。性交渉ではできなくても、マスターベーションでは射精できるケースもあります。
腟内射精障害とEDの違いは?
ED(Erectile Dysfunction)とは、勃起機能の低下を表す言葉で、性機能障害の1つです。「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続、または再発すること」と定義されています。
腟内射精障害は「勃起はできるけれど腟内での射精ができないこと」を表すのに対し、EDは「勃起自体、もしくは勃起の維持が困難な状態」を指します。つまり、腟内射精障害は厳密にはEDではないですが、腟内で勃起が維持できず萎えてしまうようであれば、EDでもある可能性があります。
腟内射精障害だと妊娠できない?
勃起して、性的な刺激を受けると、ペニスからカウパー液という体液が分泌されます。この中にも精子が含まれますが、射精により排出される精液と比べると、精子の数はとても少ないです。
そのため、腟内射精障害の男性とのセックスで、カウパー液に含まれる精子が腟内に入ることがあっても、やはり腟内射精よりは妊娠の確率は低くなるでしょう。
もし妊娠を希望している方が腟内射精障害で、マスターベーションでなら射精できるのであれば、人工授精や体外受精を選択することができます。
もっと知りたい「腟内射精障害」について
腟内射精障害の種類
マスターベーションで射精できる
EDによる中折れ
EDは勃起不全だけでなく、維持が困難な場合も含まれます。腟内に挿入し、刺激をしても射精に至らず、勃起状態が維持できない、いわゆる「中折れ」してしまう場合は、腟内射精障害の一種になります。
遅漏
一方、勃起の維持が可能で、腟内に挿入し刺激をしても射精に至らないケースは、オーガズムに達するまで時間がかかる「遅漏」が考えられます。
「遅漏」の逆を表す「早漏」は、国際性医学会の定義によると「挿入前または挿入後1分以内に射精してしまうこと」とされています。しかし、遅漏には定義がなく、どのくらいの時間がかかれば「遅漏」とされるのかは、個人の感覚により違いがあるでしょう。
ただ、遅漏は「長時間勃起状態を保てる」という意味ではなく、「射精したいのにできない状態が続く」ということ。長時間腟内で刺激をしても射精できないようであれば、腟内射精障害に該当する症状と考えられるでしょう。
マスターベーションでも射精できない
無オルガズム症
無オルガズム症は、射精自体ができない症状を指します。
先天的な原発性と後天的な続発性があり、原発性の場合は、生まれてからオルガズムを経験したことがないケースです。生まれつきオルガズムに達する機能に問題がある場合もありますが、眠っている時に射精する「夢精」を経験している男性の場合は、心因的な原因が考えられます。
続発性では、糖尿病などの生活習慣病や薬の副作用で射精に至るまでの神経に支障があるケース、またケガや事故で脊髄損傷になった場合も神経に障害が発生し、射精できなくなることがあります。
無精液症
射精は、男性生殖器が神経により収縮し、精液が尿道に押し出されて起こります。
ところが何らかの原因でその収縮が起こらず、物理的に精液が射出されない場合は、無精液症が考えられます。
特徴として、オルガズムに達し、射精した感覚があるにもかかわらず精液が出ていない、もしくはわずかしか出ていないという症状が見られます。また、オルガズム後の尿に精子は見られません。
主に交感神経の障害が原因で、脊髄損傷、糖尿病などの後発的なものが要因ですが、稀に先天的なホルモンの異常から起こることもあります。
逆行性射精
無精液症と同じく、オルガズムや射精した感覚があるのに精液が出ない症状で考えられるもう一つが、「逆行性射精」です。
射精する時に膀胱へ精液が逆流してしまう症状で、本来は射精時に閉じている膀胱頸部が開いてしまうことが要因です。無精液症との違いとして、オルガズム後の尿に精子が含まれていれば、逆行性射精と考えられます。
糖尿病や骨盤内手術の合併症による神経障害、または前立腺手術によることも原因となります。
腟内射精障害の原因
(1)長年、不適切なマスターベーションを行っている
腟内射精障害の原因として多く見られるのが、不適切なマスターベーションによる習慣化された過度な感覚です。
不適切なマスターベーションとしては大きく3つあります。
まず、床にペニスを押し付ける「床オナ」。手を使わずにマスターベーションをすることで、腟内とは異なる感覚で射精する癖がついてしまっています。
また、ペニスを強く握って刺激する「強グリップ」も、誤ったマスターベーションの方法です。ペニスに与える刺激が実際の性交渉での刺激よりも強く、腟での刺激では射精できなくなってしまいます。
そして最後が足を伸ばした体勢で射精する「足ピン」です。ある一定の体勢でないと射精できない状態になってしまい、性交渉での体勢では射精できないのです。
このように、通常行っているマスターベーションの方法が腟内の刺激と異なるため、性交渉では感じることができなくなってしまいます。
(2)内服薬の副作用
服用している薬の副作用によって、腟内射精障害になってしまうこともあります。
特に、SSRIと呼ばれるセロトニンを増やすタイプのうち、パキシルやジェイゾロフトなどの一部の抗うつ薬を服用すると、性機能障害の副作用が見られることがあります。
原因としては、薬の服用により神経伝達物質のバランスが崩れ、性機能に影響を与えると考えられます。
(3)アルコール依存
緊張や不安などからアルコールに依存してしまうと、飲酒量が限度を超えてしまい、性欲の低下や勃起不全を招きます。
過度なアルコール摂取は、脳内の勃起中枢を妨げてしまいます。また心血管疾患や糖尿病のリスクもあり、慢性的な性機能障害になりかねません。
(4)心理的要因によるもの
物理的な身体的要因だけでなく、心の問題も腟内射精障害の原因になります。
特に思春期の性教育によるトラウマや、厳しい家庭環境、特殊な性癖、アダルト動画の過度な演出の影響、不妊治療によるプレッシャーなど、性交渉、または女性に対する不安や緊張、違和感などから、腟内射精障害に発展することがあります。
腟内射精障害の治療・改善方法
(1)カウンセリングを受ける
原因が心因性によるものであれば、専門家よるカウンセリングによって治療を進めていきます。
パートナーの協力が必要な時は、ともにカウンセリングを受けます。まずは腟内射精障害という症状をお互いに認識し、改善へと前向きに捉えて理解するよう、カウンセリングを進めていきます。
パートナーも腟内で射精できないことで傷ついているケースも少なくありません。お互いで状況を理解するところから、改善の方法を探っていきます。
(2)射精リハビリテーションをする
適切な刺激で射精できるよう、リハビリをします。特に不適切なマスターベーションで腟内射精障害になっている場合は、適切な方法へと修正する必要があります。
例えば、強い刺激でマスターベーションをしている方には、手に力を入れず弱い握力で射精できるよう訓練する、また、床などで行っている場合には、手を上下させて射精へと導けるようにします。
(3)薬物治療を受ける
腟内射精障害に直接作用する薬は今のところありませんが、中折れしてしまうなど、EDの可能性がある場合は、勃起を促すPDE5阻害薬を使用して治療を行うことがあります。
また、射精や勃起をサポートする漢方薬などを使用する場合もあります。
腟内射精障害の時のセックスの工夫
(1)射精にこだわらず触れ合いを楽しむ
パートナーが腟内射精障害で治療中の時、スキンシップの方法に悩む女性もいるかもしれません。腟内射精障害だからと言って、セックスそのものができない訳ではないので、あまり考えすぎずに二人の時間を楽しむのがいいでしょう。
妊娠を望んでいないのであれば、性行為に必ずしも射精を伴う必要はありません。腟内の射精にこだわらず、スキンシップそのものやオーラルでのセックスを楽しむ時間を作りましょう。
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2)ラブグッズを使用する
腟内射精障害の症状が中折れに近い場合、新しい刺激をプラスすることで気持ちが盛り上がり、勃起状態をキープできる可能性があります。
新しい刺激を性行為にプラスするには、ラブグッズや目隠しアイテムなどの刺激的なグッズを取り入れてみましょう。視覚的にも精神的にも興奮度が高まるかもしれません
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また、セックスはオーガズムにこだわらずコミュニケーションを取ることを重視し、自身の性感やオーガズムはラブグッズなどを用いてマスターベーションをする、と割り切るのも一つの考え方でしょう。
腟内射精障害の原因を知り、正しい対策をとろう
腟内射精障害は、女性側が自分を責めてしまうケースも見られますがその必要はありません。主な原因は習慣化した不適切なマスターベーションにあるケースが多数のため、もしパートナーが腟内射精障害の可能性がある時は、マスターベーションの改善が必要かもしれません。対策をすれば改善はできます。困った時は泌尿器科などの医師に一緒に相談してみましょう。
改善されるまでの間は、まずは射精を目的としないスキンシップなどを楽しむようにしてみると、お互いにリラックスできるかもしれません。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。