藤東クリニックお悩み相談~低用量ピルと副作用について~
低用量ピルとは?
低用量ピルは女性の避妊や生理痛、生理不順などの管理に使用される経口避妊薬(ピル)の一種です。女性ホルモンを経口摂取することで、排卵を抑制したり、子宮内膜が厚くなることを防いで着床しにくい状態に働きかけます。
重い生理痛や重度のPMSに処方される「中用量ピル」に比べ有効成分である女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の量が少なく調整されていることから、「低用量ピル」と呼ばれます。
低用量ピルに副作用はある?
低用量ピルは個人差がありますが、下記のような副作用が確認されています。
- 頭痛
- 不正出血や生理不順
- 情緒の変化
- 体重変化
- 性欲の変化
- 血栓のリスク
全ての副作用が一度に出るということではなく、人によってはいずれかの副作用が単一もしくは複数出るケースがあります。
しかし「ピルを長期間服用していると副作用で不妊になる」というのは根拠がない噂であり、直接的な関連性は証明されていません。
もっと知りたいピルの副作用について
低用量ピルの効果
(1)避妊効果
今回のテーマにもあるように、低用量ピルは避妊効果があります。低用量ピルに含まれるホルモンの働きにより卵子の排出を抑制し、子宮内膜の状態を変えることで、受精を防ぎます。
(2)生理痛やPMSの軽減
生理痛は主に子宮内膜がはがれる際に生じます。低用量ピルは子宮内膜が厚くなるのを防ぐ効果があるため、生理痛を軽減することができます。またピルに含まれるホルモンは子宮筋層の収縮を抑制する効果も報告されています。そのため、子宮の周囲の筋肉が収縮する際の痛みがピルの服用によって減少すると言われています。
(3)月経不順の改善
月経不順は主にホルモンバランスが乱れることによって起こります。低用量ピルを服用すると、低用量ピルに含まれるホルモンの作用により月経の周期が整いやすくなります。
(4)鉄欠乏性貧血の予防
月経では、経血と一緒に子宮内膜が排出されます。月経時の子宮内膜が厚くなると、それだけ月経時の出血も増えます。低用量ピルは子宮内膜が厚くなるのを防ぐため、月経時の出血を減少させ、出血による鉄欠乏性貧血を防ぐことができます。
(5)卵巣がん、子宮体がんの発症リスク低下
卵巣がんは、排卵の回数が多いほど発症リスクが高くなると言われています。低用量ピルはホルモンの働きにより排卵を抑制するので、ピルの服用期間が長いほど排卵の回数が減少し、卵巣がんの発症リスクが低下するのではないかと考えられています。
また子宮体がんは、エストロゲン値が高いと子宮内膜増殖症になり、その後子宮体がんを発症することが分かっています。
低用量ピルに含まれるプロゲステロンのホルモンは、子宮内膜の成長を抑制します。低用量ピルの働きにより子宮内膜が正常な厚さに保たれ、過剰な増殖や異常な細胞成長が抑制され、子宮体がんのリスクが低減される可能性があります。
ピルで妊娠を防ぐことができるメカニズムについて
妊娠は女性の排卵した卵子と性行為等で体内に入った精子が卵管で出会って受精したあと、子宮に移動して子宮内膜に着床することによって成立します。受精卵が着床するには、子宮内膜に十分な厚さが必要です。
ピルは原則的に生理の初日(月経開始日)から飲み始めます。ピルを服用することで女性ホルモンのエストロゲン、プロゲステロンが供給されます。ピルの服用で女性ホルモンが供給されている間は、卵巣の活動が停止し、排卵だけでなく卵胞の成長(成熟)も起きません。
一般的なピルでは、飲み始めて(月経開始日から)22日目~28日目は、休薬期間もしくはプラセボ錠(ホルモン成分を含んでいない偽薬)の服用期間となります。この期間はピルからホルモンの供給が無いため、卵子の活動が再開し子宮内膜への働きも無くなります。
ホルモンが供給されていないと排卵が起きてその期間に妊娠してしまうのでは、と思うかもしれませんがその可能性はきわめて低いとされています。卵巣で卵胞が成長し排卵されるまでには、およそ14日間かかります。そのため7日間の休薬期間で卵子が成長して排出される心配は基本的にありません。
また低用量ピルで排卵自体を抑制するだけでなく、排卵しても子宮内膜の増殖を抑制してあることで着床しにくい状態が作られています。また休薬期間から1週間以内に子宮内膜が剥離する消退出血が起こり、万が一着床してもその際に排出されてしまう可能性は高いです。
このように低用量ピルは、多重に妊娠しにくい身体の状態を作り出しています。
ピルの副作用で不妊にはならない理由
ピルの服用を中止すると基本的には1周期、長い人で3周期ほどで排卵が回復します。また子宮内膜も、ピル服用時と異なり厚くなります。
ピルを長期間服用していると、その避妊効果が持続し、将来子供を希望したときに妊娠できなくなってしまうのではないかと心配する人がいるようです。しかしピルの効果は、毎日決まった時間にホルモンを供給することによって初めて得られるので、毎日錠剤を飲む使用方法になっています。
そのため、服用をやめればその供給が絶たれ、ホルモンの効果は長くは持続しません。このことから、ピルの副作用として排卵が回復しなかったり、子宮内膜が厚くならなくなってしまうのではという心配をする必要はありません。
むしろ何らかの理由で月経が来なくなってしまったり、無排卵月経の状態を放置していた方が将来の不妊へのリスクが高く、ピルを使用して身体のリズムを整えることで、治療することもあります。
もしピルの服用を中止しても排卵や生理が回復しない場合は、速やかにレディースクリニックに相談するといいでしょう。
ピルと一緒に使いたいアイテム
(1)コンドーム
ピルは妊娠を防ぐのに効果的な方法の一つですが、性感染症を防ぐことはできないという欠点もあります。性感染症を防ぐには、コンドームが効果的です。
コンドームを使用することで、ピルだけを使用した場合よりも避妊確率も上がります。望まない妊娠を防ぐ場合は、ピルとコンドームの併用がおすすめです。
(2)潤滑ジェル
避妊薬が唯一の原因であるとは言い切れないものの、ピルを服用している女性は腟が濡れにくい傾向があるという研究結果があります。腟が濡れにくいと、性交時に痛みや不快感を感じることも少なくありません。
参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6421036/
もし性行為で濡れにくさを感じていて不快感があるようであれば、解決方法としてピルをやめるのではなく、潤いをアイテムで足すことも一つの手段です。
低用量ピルには副作用はあるが、不妊の影響はない
以上のように、低用量ピルには副作用がありますが、それは頭痛や倦怠感、血栓症のリスクが高まるなどであり、不妊につながるというのは根拠のない噂です。低用量ピルが妊娠を防ぐことができるメカニズムを知れば、事実でないことがより分かりやすいことでしょう。
むしろ、低用量ピルは女性の生理周期の治療に使用されることもあります。低用量ピルの処方は病院で受けることができるため、不安な点は気兼ねなく医師に相談し、納得して使用していくといいでしょう。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。