藤東クリニックお悩み相談~クーパー靭帯について~
【イラスト解説】クーパー靭帯とは?どこにある?
バスト(乳房)の中には、様々な組織があります。
バスト全体を形作る「乳房脂肪組織」の中で、乳頭から乳管が放射状に延びて乳腺小葉がつながっており、その乳腺小葉と皮膚や大胸筋をクーパー靭帯がつないでいます。
クーパー靭帯が切れると胸が垂れるって本当?
クーパー靭帯はバストと皮膚や大胸筋をつないでいる組織の為、その支えが伸びたり切れたりすれば、それだけバストを支える力は弱くなり下垂しやすくなります。つり橋のロープが短くピンと張った状態と長くたるんだ状態をイメージするとわかりやすいかもしれません。
クーパー靭帯は主にコラーゲンでできています。収縮する機能は持っていないため、強く引っ張る力などが加わると伸びたまま元に戻りません。また修復機能もないため、一度切れると切れたままです。
ただし、バストの形を保っているのは靭帯だけではありません。近年ではバストの垂れにはクーパー靭帯だけでなく、皮膚の張りや大胸筋なども関連していることが分かってきています。
もっと知りたい!クーパー靭帯について
クーパー靭帯が切れる、伸びる原因
(1)加齢
先ほども解説した通り、クーパー靭帯の主成分はコラーゲンです。コラーゲンは年齢とともに減少し、生成されるコラーゲンの質も低下します。
コラーゲンが加齢によって減少する理由は一つではありません。
まず、細胞の数が減ったり、細胞自体が老化して様々な成分を合成する働きが低下することでコラーゲンの生成量が少なくなります。そして、コラーゲンの合成を促進する働きのある女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少することも影響しています。体内のコラーゲン合成量が減少すれば主成分がコラーゲンであるクーパー靭帯も細くなり、加わる力の影響を受けやすくなってしまいます。
また、コラーゲンは新陳代謝により分解と生成が繰り返されていますが、加齢によってこのサイクルが滞り、古くて質の良くないコラーゲンになることもクーパー靭帯に影響します。適切なサイクルが保たれているコラーゲンは弾力がありしなやかですが、劣化したコラーゲンが増えるとコラーゲン全体も硬くなってしまいます。硬いコラーゲンは断裂しやすいため、クーパー靭帯も切れやすくなってしまうのです。
(2)激しい上下運動
クーパー靭帯はとても細く、刺激に弱い性質を持っています。例えば激しい上下運動や間違ったマッサージなどで、普段はかからないような強い刺激が与えられると、クーパー靭帯が伸びる要因となります。
この激しい上下運動の刺激は、ブラジャーである程度抑えることができます。つまり、ノーブラ生活をしているとクーパー靭帯は常にふとした上下運動による刺激を受け続けるので、クーパー靭帯が伸びる原因となります。
また、ブラジャーをしていてもサイズが合っていない場合、刺激を抑える力が不足して本来の効果が発揮できないこともあります。自分のブラジャーのサイズが合っていると思っても、意外と間違っていることも多いものです。しっかり下着店でフィッティングして、プロのアドバイスを受けながらサイズの合ったものを購入しましょう。
(3)間違ったバストマッサージ
また、日常生活を送っていて偶然起きる刺激以外にも、良かれと思って行った「バストマッサージ」が原因でクーパー靭帯が伸びてしまうこともあります。バストマッサージには様々なやり方が紹介されていますが、その中には必要以上に強い力をかけてバストを刺激するようなものもあります。
バストマッサージ自体は、バストの血行不良を改善するという意味ではバストケアとして効果的です。そのため、バストマッサージはエビデンスのしっかりした専門書を読み、肌に負担がかからないようにジェルなどを使って優しい力で行いましょう。
(4)大胸筋の衰え
バストはクーパー靭帯だけでなく、皮膚と大胸筋によって支えられています。大胸筋が衰えるとその支える力が弱くなり、皮膚やクーパー靭帯への負担が増え、クーパー靭帯の伸びに繋がってしまいます。
大胸筋の衰えは加齢や姿勢の悪さが影響します。特に猫背だと胸が床に対して直角ではなく、少し下向きの状態になります。これによりクーパー靭帯にかかる負担が増え、靭帯の伸びが加速してしまうことがあるので注意しましょう。
(5)妊娠や産後の授乳
妊娠すると女性の身体はホルモンの働きにより乳腺が自然と発達し、バストサイズがアップします。この時に乳房の発達に合わせてクーパー靭帯も伸び、その後出産によってバストサイズが戻ってもクーパー靭帯は戻らないということがあります。妊娠して大きくなったバストは、まずは適切なサイズのマタニティブラでしっかりホールドすることが大切です。
また、産後の授乳期は「搾乳」を行うことも多いでしょう。この時バストにかける力が強すぎるとクーパー靭帯が伸びる原因にもなります。しかし、適切に搾乳をしないと、乳腺が詰まり乳腺炎になるなどのリスクもあります。
妊娠や授乳はクーパー靭帯の刺激が多い時期ではありますが、あまり気にしすぎず自然なことと受け入れて、ほかにできる対策をしていく方がいいでしょう。
胸が垂れるのを防ぐ方法
クーパー靭帯が伸びると胸が垂れる一因となりますが、それだけではありません。クーパー靭帯の保護だけでなくそれ以外の方法も含め、胸が垂れるのを防ぐ方法についてご紹介していきます。
(1)コラーゲンの合成をサポートする食事をとる
クーパー靭帯はコラーゲンからできており、質のいいコラーゲンを作るサイクルを保つことと新たなコラーゲンが合成できるようにすることが保護するうえで大切です。
コラーゲンが多く含まれる食材には「牛スジ」「ウナギのかば焼き」「サンマ(皮有・刺身)」などがあります。
それだけでなくコラーゲンの合成には「ビタミンC」が不可欠です。そのためコラーゲンを含む食事だけでなく、ビタミンCを多く含む食材も一緒に取るようにしましょう。ビタミンCはレモン、アセロラ、パプリカなどに多く含まれます。
コラーゲンを多く含む食材は一緒に脂質も含まれていることが多いので、適宜サプリメントなどでコラーゲンを摂ることも検討しましょう。
(2)大胸筋を鍛える
先ほども「大胸筋の衰え」がクーパー靭帯への負担につながることを解説しました。つまり大胸筋を鍛えることで、クーパー靭帯の負担を減らすことも可能です。
大胸筋は腕立て伏せやダンベルプレスなどで鍛えることができます。
ダンベルプレスは、水を入れたペットボトルなどでも代用できます。
(3)皮膚の保湿をする
バストを支えるのはクーパー靭帯、大胸筋、そしてバストの「皮膚」です。皮膚は保湿をしっかりすることでたるみを防ぐことができ、張りのある状態でバストを支え、クーパー靭帯の負担を減らします。
保湿力の高いバストジェルでバストマッサージをすることで、バストの血行促進とバストの皮膚の保湿を一度に行うことができるのでお勧めです。
クーパー靭帯の伸びを防ぐなら今から
クーパー靭帯は一度伸びると戻りません。また加齢とともにどんどん伸びやすさも増していきます。伸びる前に対策をする必要があるので、対策を始めるには早いに越したことはありません。
クーパー靭帯が伸びやすい習慣を減らし、加齢とともに減少するコラーゲンの合成を食事でサポートし、大胸筋を鍛えたり皮膚のケアをしたりしてクーパー靭帯の負担を減らすことで、「伸びて戻らなくなったクーパー靭帯」を減らすことにつながります。
バストの垂れるのを防止したい方、バストがこれ以上垂れないようにしたいという方はぜひ試してみてください。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。