藤東クリニックお悩み相談室~Gスポットについて~
女性のオーガズムにGスポットが関係しているという話を聞きました。しかし、Gスポットは、実在するのでしょうか。実在するとして、誰にでもあるものなのでしょうか。自分が快感を得られないのはGスポットが存在していないからではないかと不安です。
Gスポットとは?
Gスポット(Gräfenberg spot)は女性の腟内前壁(恥骨に近い側)にあるとされる敏感な領域で、ドイツの産婦人科医エルンスト・グレーフェンベルクの名前に由来しています。腟の入り口から約2.5〜5cm内側の位置にあり、刺激すると性的快感や特有のオーガズムを引き起こす可能性があるとされています。
Gスポットは医学的に存在する?都市伝説?
Gスポット(Gräfenberg-spot)の存在については、科学的な見解が分かれています。
科学的研究では、一部の研究では解剖学的に明確な構造としてのGスポットを確認できていません。他の研究では腟前壁に神経終末が集中している領域があることを示しています。最近の研究では「前腟壁複合体(Anterior Vaginal Wall Complex)」という包括的な概念で説明する傾向もあります。
では「前腟壁複合体」は何かというと、従来のGスポットという単一の「点」ではなく、相互に関連する複数の組織が協調して機能する「領域」として女性の性的感覚を理解しようとするものです。
この中にはスキーン腺やクリトリス本体の内部構造などが含まれています。科学的に「これ」という構造は未だ解明されたはいないものの、女性には腟壁を通して刺激を受ける部分に神経終末が集中している領域があり、その部分をGスポットと呼んでいる形になります。
もっと知りたい!Gスポットについて
Gスポットがある「前腟壁複合体」とは
前腟壁複合体の場所と構成
まず女性の体には「CUV複合体」と呼ばれるエリアが存在します。これはClitoro(クリトリス)、Urethro(尿道)、Vaginal(腟)のそれぞれの頭文字をとっており、この3つの器官の総称です。
一方前腟壁複合体は、主に腟の前壁とその下にある組織(尿道海綿体、傍尿道腺、クリトリスの内部構造の一部)のことを指します。
つまり、前腟壁複合体はCUV複合体の一部分のことになります。
クリトリスと言われると、女性の尿道の上に位置する陰核のことを思い浮かべると思います。実はこの一般的にクリトリスと呼ばれている露出した部分は、正確には「クリトリス亀頭」と呼ばれる一部分に過ぎず、体の内部に隠れた部分も存在している大きな器官です。

前腟壁複合体とクリトリス
前腟複合体はその構造にクリトリスの内部構造の一部を含みます。なぜクリトリスの「一部」かというと、クリトリスは主に6つの部位からなる大きな器官だからです。
~クリトリス全体の部位と名称~
- クリトリス亀頭(グランス)
外部に見える小さな豆状の部分で、神経終末が密集しており、非常に敏感です。 - クリトリス包皮(フード)
クリトリス亀頭を覆う皮膚のひだです。 - クリトリス体部
亀頭の下にある短い柱状の部分です。 - クリトリス脚部(クルラ)
クリトリス体部から分かれて内側に伸びる2本の脚状の構造で、恥骨の下を回り込み、腟の両側に広がっています。 - クリトリス海綿体
脚部を構成する海綿状組織で、性的興奮時に血液が充満して膨張します。 - 前庭球
クリトリスに接続する海綿体組織で、腟入り口の両側に位置します。クリトリス系の一部として考えられることもあります。
このうち、「クリトリス脚部(クルラ)の一部」「クリトリス海綿体組織の延長部」と、クリトリス神経網が前腟壁複合体に含まれます。
Gスポットのあるといわれる位置
Gスポットは、具体的に腟全体の中でどのあたりに位置するのでしょうか。Gスポットは一般的に、腟の入り口から約2.5〜5センチメートル(約1〜2インチ)内側の前壁(腹側、つまり恥骨に近い側)にあるとされています。
具体的には、腟に指を入れて「こっちへおいで」のようなジェスチャー(カム・ヒア・モーション)をした時に、指先が触れる腟前壁の領域に位置しています。この領域は触ると少し隆起していたり、表面の感触が周囲と異なる(やや粗い、またはスポンジ状)と表現されることがあります。

腟内とオーガズムの関係
腟内を刺激すると快感が得られる理由
そもそも、なぜ腟の中に「Gスポットがある」と言われるようになったのでしょうか。それは、腟の中を刺激することでオーガズムを得ることができる女性が多くいるためです。
腟の中にGスポットがあるため、その部分を刺激するとオーガズムが発生する、と考えられました。
一方で「腟は感覚がない」という話を聞いたことがある人もいると思います。この話は、タンポンなどを挿入する際、浅い位置に挿入すると違和感があるが、奥の位置に挿入をすれば違和感がないことの説明でも用いられます。実際、出産という大きな刺激を受けることもある腟自体は入り口側の⅓には比較的神経終末が分布しているのに対し、奥側の2/3には少なくなっています。圧力や伸張を感知する深部感覚受容器が存在しているため圧迫感や膨満感は認識できますが、細かな触覚の感受性は低いです。
つまり、腟を刺激したときに腟が直接快感を感知してオーガズムが起きているのではなく、腟の奥にある前腟壁のクリトリス神経網にも刺激が伝わり、オーガズムが引き起こされているといわれています。
そのため、もし腟を刺激しても快感が得られずGスポットがないのかもしれないと不安に感じる人は、腟越しにさらにお腹側の奥にあるクリトリス神経網を刺激するイメージを持ってみるといいかもしれません。
また、前腟壁複合体の一部であるクリトリス海綿体は性的刺激により膨張します。十分に性的興奮がない状態だとこのクリトリス海綿体が膨張せず、腟内の刺激の快感が伝わりにくいことでオーガズムに至れない可能性もあります。
Gスポットの感度が増すと言われる理由
Gスポットは繰り返し刺激を与えることで、よりオーガズムに至りやすい「開発された状態」になると言われています。その話は本当なのでしょうか。
女性の性感帯の感度が磨かれていく現象には、生理学的な根拠もあるとされています。
神経学的要因
繰り返しの刺激により、神経経路が強化される「ニューロプラスティシティ(神経可塑性)」が起こります。性的刺激を認識し、処理する脳の領域が発達し、より効率的になります。体性感覚野(身体感覚を処理する脳の領域)における性器の表象が拡大することがあります。
身体的要因
性的興奮を経験するうちに、血流パターンがより効率的になります。性器周辺の微小な筋肉のコントロールが向上します。性的反応に関わる筋肉群(骨盤底筋など)が強化されます。
このほかにも、回数を重ねることで抵抗感が減って集中力が高まったり、快感を得られる場所を的確に把握することで、よりオーガズムを得やすくなると言われています。
腟内でのオーガズムのみならず、オーガズム自体を感じたことがない人は、まずは露出しているクリトリスを刺激してオーガズムを感じることに挑戦するといいでしょう。クリトリスで何度もオーガズムを経験し、ニューロプラスティシティが起こっていくと、オーガズムを得やすくなっていくはずです。
その後腟の内側からクリトリス神経網を刺激するイメージで、腟内を刺激してみると良いでしょう。
クリトリスでのオーガズムは、ローター等のラブグッズの振動刺激が効果的です。

Gスポットでオーガズムを得る方法
Gスポットでオーガズムを得るための腟の刺激の方法も「トントン軽く叩くようなイメージ」「全体を揺さぶるイメージ」「ぐっと押すようなイメージ」など、人によってオーガズムに至る刺激は異なると言われています。
特定の刺激方法でオーガズムに至らない場合でも、別の方法を試してみると体験できる可能性があります。
タッピング刺激派
トントンとはじくような刺激によってオーガズムを得やすい人は、タッピングタイプのグッズを使ってみるといいでしょう。
トリプルオルガはGスポットがあると言われている位置に、下から突き上げるようなタッピング刺激が体験できるグッズです。クリトリス部分は人気の吸引タイプになっているので、まずはクリトリスでのオーガズムを目指す方にも適しています。

振動刺激派
腟を通してお腹側全体をぶるぶると揺さぶられるような刺激でオーガズムするタイプの方の場合は、全体が振動するタイプのグッズの相性がいいでしょう。
MUは7種類のパワフルな振動が人気のストレートバイブです。温感バイブのため、人肌のぬくもりを感じながら振動の刺激を受けることができます。

圧迫刺激派
ぐっとお腹側に押すような刺激が快感につながるタイプの人もいます。その場合はスイングタイプのがグッズであれば、指で押すのに近い刺激を感じることできるでしょう。
たとえばマリンビーンズは振動刺激に加え、先端のスイングによって圧迫刺激を得ることができます。ボディ部分は曲げることができるので、自分にあった角度に調節することも可能です。

決めつけずに試していき、Gスポットを見つけよう
科学的にGスポットはこの部位、という特定は完全にはされていませんが、女性の体にはCUV複合体が存在し、前腟壁複合体には神経が多く分布しています。その中の特にクリトリス神経網はオーガズムと関連の深い神経です。
もしクリトリスでのオーガズムを経験したことのない場合は、まずはクリトリスのオーガズムでニューロプラスティシティを起こしていくのもいいでしょう。
Gスポットは俗に腟の入り口2.5cm~5cmの位置に存在すると言われていますが、オーガズムに結びつく刺激の種類は個人差があります。一つの方法で快感を感じないからと言って「自分はきっとGスポットはない」と判断する必要はありません。様々な刺激方法を試して、オーガズムに近づいていきましょう。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。





