藤東クリニックお悩み相談室~角質培養について~
角質培養というスキンケア方法に興味があるのですが、角質培養とは具体的にどのようなことなのでしょうか?
角質培養とは
角質培養(かくしつばいよう)は、肌の最上層にある角質層を健康に保とうという発想のスキンケア方法です。角質層は肌のバリア機能を担う重要な部分で、外部刺激から肌を守り、水分の蒸発を防いでいます。角質培養では、この角質層を「育てる」ことに焦点を当てます。
角質層は摩擦によって傷つき薄くなってしまうと考え、摩擦やその他の刺激を最大限避けることにより、正常な角質層の厚みを取り戻させることが目的になります。肌のターンオーバーは、一般的に4週間(28日)周期で行われると言われているため、効果を実感するには最低でも1回のターンオーバー周期は必要となります。実際に実感を得るには、3か月から半年は想定した方がいいでしょう。本格的な改善には1〜2年程度の長期間が必要な美容法です。
「角質」や「培養」という言葉から化学的・医学的な印象を持つ人も多いようですが、角質培養は正規の方法論が確立していたり、専門的に掘り下げて一般化した人がいる美容法ではありません。いわば「我流角質培養法」が広まっている、インターネット発祥の美容法であり、注意が必要です。
角質培養は危険?
角質培養は明確な医学的・科学的根拠に基づいた標準的な方法が確立されていません。インターネット上で個人の体験談をもとに広まった美容法のため、専門的な指針が不足しており、個人が試行錯誤で行うことが多いのが現状です。そのため、すべての人に適用できる安全で効果的な方法とは言い切れません。
また、肌質、年齢、環境、ホルモンバランスなどにより、角質培養の効果や適性は大きく異なります。オイリー肌の人と乾燥肌の人では必要なケアが違いますし、敏感肌の人には刺激となる可能性もあります。
角質培養で肌トラブルが起きることはある?
角質培養を実践すると、初期段階では肌の状態が一時的に悪化することがあります。「モサ」と呼ばれる白っぽい角質の塊が肌表面に現れたり、角栓が目立つようになったりします。これにより化粧のノリが悪くなり、外見が気になって人に会うことを避けたくなる場合があります。
また、過度に肌を放置すると皮脂や汚れが蓄積し、細菌が繁殖しやすい環境を作ってしまう可能性があります。これにより脂漏性湿疹やニキビの悪化などの肌トラブルを引き起こすリスクがあります。
肌に異常を感じた場合は皮膚科医に相談することをおすすめします。
もっと知りたい「角質培養」について
角質培養のやり方
(1)メイクの見直し
角質培養の基本は「肌に触れる回数を減らすこと」です。理想はノーメイクで過ごすことですが、仕事や外出で難しい場合は、ミネラルファンデーションやフェイスパウダーといった軽めのメイクに切り替えると肌への負担を大きく減らせます。
(2)クレンジングの変更
ノーメイクの日は基本的にクレンジング不要。お湯や洗顔料で十分です。どうしてもメイクをする場合は、刺激の少ないミルクタイプやジェルタイプのクレンジングを使用し、こすらずに落とすことを心がけましょう。
(3)洗顔方法の改善
洗顔では、たっぷり泡立てた泡で顔を包み込むようにして20秒程度で済ませます。使用するのは、合成界面活性剤を避けた固形石けんや低刺激タイプの洗顔料がおすすめです。すすぎの際は、シャワーを直接顔に当てず、ぬるま湯を手ですくって優しく流しましょう。
洗顔後のタオルドライはゴシゴシ拭かず、タオルを押し当てて水分を吸収させるようにしてください。
(4)保湿ケア
角質培養では、肌が本来持つ保湿力を引き出すことを重視するため、スキンケアはシンプルにするのが基本です。セラミドを配合した化粧水や美容液で潤いを与え、ワセリンやホホバオイルでフタをして水分を閉じ込めます。ただし、過度な重ね塗りは避け、必要最小限のケアにとどめることが推奨されます。
(5)UV対策
紫外線対策は重要ですが、日焼け止めは肌負担につながることがあります。そのため、帽子や日傘を使ったり、日陰を利用するなど物理的な対策を優先するのが理想です。どうしても日焼け止めを使う場合は、敏感肌用タイプを少量だけ使用するようにしましょう。
(6)NG事項
角質培養の考え方に反するのが「削る」「剥がす」ケアです。ピーリングやスクラブ、毛穴パックや角栓の押し出しは、角質層を傷めてしまう原因になります。これらは避けることが角質培養の成功につながります。

角質培養の効果をあげるための方法
乾燥対策
角質培養を続けるうえで注意したいのが乾燥です。空気が乾燥していると、角質層は本来の機能を発揮できず、かえって肌荒れを招いてしまいます。
そのため、加湿器を活用して室内の湿度を40〜60%に保ち、特にエアコン使用時や冬場には乾燥対策を徹底することが大切です。
規則正しい睡眠
健やかな角質を育てるためには、質の良い睡眠も欠かせません。肌のターンオーバーは夜間に活発化するため、十分な休息が取れていないと、肌の再生力が低下してしまいます。
特に22時から2時までは「肌のゴールデンタイム」と呼ばれ、成長ホルモンの分泌が盛んになる時間帯です。この時間に合わせて眠るよう心がけると、角質培養の効果を実感しやすくなります。
食生活の改善
角質層の再生には日々の食事からの栄養も大きく影響します。魚や肉、大豆製品などからタンパク質をしっかりと摂取し、さらにビタミンA・B群・C・Eといった新陳代謝を助ける栄養素を意識的に取り入れることが望ましいでしょう。
加えて、セラミドやα-リノレン酸、亜鉛といった成分も肌の保湿力や修復機能を支えます。偏った食事を避け、バランスのよい食生活を続けることで、角質培養をより効果的にサポートできます。

角質培養の「モサ」とは
モサの正体
「モサ」とは、角質培養を行う過程で肌表面に現れる白っぽい突起物のことです。正式には「角栓」と呼ばれるもので、角質培養コミュニティでは親しみやすく「モサ」という愛称で呼ばれています。
主成分は古くなった角質細胞(ケラチンタンパク質)と皮脂が混ざり合ったものです。通常であれば自然に剥がれ落ちるはずの古い角質が、角質培養により意図的に除去を控えることで毛穴に蓄積し、やがて毛穴から白く突出するようになります。
~モサの見た目の特徴~
- 白色または淡黄色の小さな突起
- 毛穴から「ニョキニョキ」と飛び出している
- ウロコ状やフサフサした見た目
- 触るとザラザラとした質感
- 時間が経つとカサブタのように硬くなる
モサは1~2週間で出現し始め、1か月程度立つと目立ち始めます。そのまま3か月以上たつと、自然と減少し、肌質が改善してくると言われています。
角質培養でモサが生じる理由
角質培養では角質を人為的に除去することを控えるため、本来剥がれ落ちるべき古い角質が肌表面に蓄積されます。これが毛穴の皮脂と混ざり合い、徐々に大きくなって毛穴から突出するのがモサです。
特に肌が傷んでいる部分ほどモサが発生しやすくなります。これは、ダメージを受けた肌が自分を守ろうとして角質を厚く作る傾向があるためです。
モサの対処法
モサの対処法は流派によって異なります。
完全放置派
角質培養を厳格に実践する人は、モサも含めて一切手を加えません。モサは肌を保護するカサブタのような役割を果たしており、下で新しい健康な肌が育っているという考えです。
適度な除去派
あまりに見た目が悪く社会生活に支障をきたす場合や、衛生面でのリスクを考慮して、以下の方法で適度に除去します。
~モサの除去方法~
- お風呂で肌を十分にふやかしてから、指の腹で優しく撫でる
- 濡れたタオルで軽く拭き取る
- 自然に取れそうなもののみを除去(無理に引っ張ったり爪で取ったりしない)

角質層を健やかに保つスキンケア
角質培養は個人差が大きく、肌トラブルが起きる場合もあるため、極端な方法を一気に実践するのではなく、自分の肌の状態を観察しながら少しずつ取り入れることが望ましいです。基本は、角質層へのダメージを減らし、守ることに重点を置くと良いでしょう。
セラミドの摂取
セラミドは角質細胞をつなぐ重要な成分であり、不足すると細胞がバラバラになって保湿力やバリア機能が低下します。摂取方法にはサプリメントなどによる経口摂取と、化粧水・美容液・クリームによる経皮摂取があります。どちらの方法も、角質層の保湿と健やかな再生を助けます。
化粧水のあとに乳液やクリーム
スキンケアの際は、化粧水で水分を与えたあとに乳液やクリームで油分を重ね、しっかりとフタをしてあげることが大切です。コットンによる摩擦は避け、手のひらでやさしく押さえるようにハンドプレスをすることで、肌に負担をかけずに潤いを閉じ込めることができます。
特に、洗顔後や入浴後の肌は水分を含んで柔らかくなっており、浸透・吸収力が高まっています。このタイミングでタオルドライをせずに、まだ肌がしっとりしているうちに保湿を重ねる「田んぼ作戦」という保湿法を意識すると、より効果的にうるおいを定着させることができます。

角質培養は、やり方をしっかり把握して行うことがポイント
角質培養は「角質を育てる」というユニークな発想から広まった美容法です。正式に確立されたものではなく、効果や安全性には個人差がありますが、ノーメイクや低刺激の洗顔、シンプルな保湿ケア、紫外線対策などを取り入れることで、肌が本来持つ力を引き出すことを目的としています。
実践の過程では「モサ」と呼ばれる現象が起こることもありますが、それも肌が生まれ変わるための通過点と捉えることができます。大切なのは、角質を削るのではなく守り育てる視点を持つことです。自分の肌と向き合いながら無理のない範囲で取り入れることで、長期的に健やかで美しい肌を目指せます。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。





