藤東クリニックお悩み相談室~陰部のできものについて~
陰部にできものが生じる原因は?
陰部にできものが生じる原因には、ニキビや毛嚢炎のほか性感染症などの病気が挙げられます。外部の刺激や体調の変化によって過敏になった陰部で、細菌が繁殖することにより炎症が起こり、これができものとなります。中には、性感染症が原因でできものが生じる場合もあります。水ぶくれやしこりなどの症状は、病気の種類によって様々です。
陰部にできものが生じるのは病気なの?
陰部にできものが生じる原因は、必ずしも病気とは限りません。市販薬で治療できる軽度な皮膚トラブルの可能性もあります。ただし、強い痒みや痛みを伴う場合や、腫れやしこりがある場合は注意が必要です。重大な病気が潜んでいることもありますので、放置せず早めに婦人科等の受診をするようにしましょう。
もっと知りたい「陰部のできもの」について
陰部のできものの原因
外陰毛嚢炎
外陰毛嚢炎は、陰部の毛嚢(毛穴)に炎症が生じる病気です。毛嚢が大腸菌やブドウ球菌などの細菌に感染して炎症を引き起こし、内部に膿が溜まってしこりを形成します。陰毛の処理の後や生理中などに起こりやすいことが特徴です。
毛穴の浅い部分だけの感染であれば、痒みや痛みなどはほとんどありません。毛穴の深い部分に感染が及んだ場合、硬くて根を持ったようなおできになり、痛みを伴う場合があります。
バルトリン腺嚢胞
バルトリン腺嚢胞とは、腟口の左右にあるバルトリン腺が詰まって嚢胞ができる病気のことです。嚢胞は、小指の先程の大きさから、時にはテニスボール程の大きさになる場合があります。
嚢胞が小さい段階では自覚症状はほとんどなく、嚢胞が大きくなってから病気に気づく場合も少なくありません。嚢胞内で細菌が繁殖すると、皮膚が赤く腫れ上がり強い痛みが生じ、時には発熱する場合もあります。
性感染症
性感染症が原因で、陰部にできものが生じる場合があります。できものの原因として考えられる性感染症は、尖圭コンジローマや性器ヘルペス、梅毒などです。病気の種類によって、イボや水ぶくれなどできものの状態が異なるほか、痒みや痛みなどの症状にも違いがあります。
尖圭コンジローマによるイボ
尖形コンジローマとは、ヒトパピローマウイルスに感染することで陰部にイボが生じる性感染症です。先の尖ったイボが集まった形をしており、乳頭状や鶏冠状、花キャベツ状などと形容されます。イボ以外の自覚症状が少なく、病気に気づきにくいことが特徴です。病気が進行すると、イボの数が増えて患部が広がったり、痒みや痛みが生じたりする場合があります。
尖形コンジローマを引き起こすウイルスは主に良性型です。ただし、まれに悪性型のウイルスが原因となる場合があります。悪性型の場合、子宮頸がんを引き起こす可能性があるので注意が必要です。
性器ヘルペスによる水ぶくれ
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスに感染することで陰部に水ぶくれができる性感染症です。外陰部や腟、肛門などに多数の水ぶくれができ、痛みや痒みを伴います。症状が重い場合には、高熱や足の付け根のリンパ節の腫れ、歩行や排尿が困難な程の強い痛みを伴います。
初めて感染した時に症状が強く出て、再発時には症状が弱くなることが特徴です。一度感染すると神経節にウイルスが潜伏し、疲労や免疫力の低下等によって再発をくり返す場合も少なくありません。
梅毒によるしこり
梅毒は、梅毒トレポネーマに感染することで、赤い発疹やしこりができる性感染症です。梅毒は細菌の潜伏期間が長く、長期間に渡って病気が緩やかに進行する特徴があります。感染して約3週間の初期段階には、陰部や口等に3mm〜3cm程のしこりができ、足の付け根のリンパ節が腫れる場合があります。痛みがないことも多く、症状は自然に軽快する場合がほとんどです。
ただし、治療を行わない限りは、症状がなくなっても潜伏した細菌により病気が進行するため注意が必要です。感染から3か月以上経過すると、手のひらや足の裏など全身に赤い発疹が薄く生じることがあります。さらに数年経過すると、全身の皮膚や筋肉等にゴムのような腫瘍が生じ、心臓や血管、脳などの病変に繋がる場合もあるのです。
腫瘍(がん)
陰部のできものが腫瘍である可能性もあります。腫瘍には良性と悪性があり、悪性であっても自覚症状がない場合がありますので注意が必要です。できものに気づいたら、早めに婦人科等の病院を受診しましょう。
良性腫瘍
陰部に発生する良性腫瘍には、脂肪腫や線維種、筋腫などがあります。比較的多く見られるのが、脂肪腫です。脂肪腫とは増殖した脂肪組織が腫瘍化したもので、痒みや痛みなどの自覚症状がないことがほとんどです。また、稀な病気として、外陰部にできる線維腫や筋腫があります。線維腫は外傷などに反応して線維組織が増殖したものです。筋腫は筋肉組織が増殖したもので、女性ホルモンの影響により大きくなります。
いずれの腫瘍も、自覚症状がなければ治療を必要としない場合も少なくありません。ただし、腫瘍が大きくなると痛みが生じることがあり、日常生活に支障が出る場合があります。さらに筋腫である場合、子宮筋腫を伴っている可能性もありますので注意が必要です。腫瘍の肥大化や痛みを伴う場合、月経痛や過多月経が見られる場合は、婦人科などの病院を受診するようにしましょう。
悪性腫瘍
陰部に発生する悪性腫瘍に挙げられるのが外陰がんです。外陰がんは、腫瘍部分に小豆大のしこりや赤いただれなどが見られます。患部が白っぽく変化したり、皮膚の引き攣れやしわが生じたりすることも特徴です。初期段階では痒みや痛みなどを伴わないこともあり、発見が遅れる場合も少なくありません。
がんが進行すると、患部から水状の分泌物や出血が見られる場合もあります。治療を受けずにいると、がんが腟や尿道、肛門などにも進行し、リンパ節へと広がる恐れもあるのです。長期間治らない皮膚のしこりやただれ、分泌物や出血が見られたら、速やかに婦人科等の病院を受診するようにしましょう。
注意すべき陰部のできものの特徴
(1)陰部にかゆみや痛みがある
陰部のできものやしこりに痒みや痛みを伴う場合、何らかの病気が原因の可能性があります。性感染症であれば、パートナーなど他人に感染させてしまうリスクがあります。さらに、治療を受けずに性感染症を放置すると、腟や子宮頸管、子宮内膜にまで症状が広がる場合もあります。
症状が広がると下腹部痛や腰痛、発熱、排尿痛などが現れ、重症の場合、流産や不妊症の原因となる恐れもあるのです。痒みや痛みを感じた場合、早めに婦人科・産婦人科・皮膚科等を受診してください。
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(2)陰部にしこりがある
陰部のしこりは、痒みや痛みを伴わないことも多く、見過ごしてしまう場合が少なくありません。良性腫瘍である場合も多いですが、梅毒や外陰がんなどの重篤な病気である可能性もあります。症状が長引いたり、気になる点があったりする場合は、放置せずに早めに婦人科・産婦人科・皮膚科を受診しましょう。
陰部のできものの予防法と対処法
陰部を清潔に保つ
陰部は排泄物が付着したり、腟の分泌物が溜まったりして不衛生になりやすい部位です。さらに、蒸れやすい環境のため細菌が繁殖する傾向にあります。細菌が繁殖すると毛嚢炎などの原因になりますので、陰部の汚れを丁寧に洗い流しましょう。デリケートな陰部を洗う際は、刺激の少ない石鹸で擦らず優しく洗うことが大切です。
デリケートゾーン専用のウェットシートを持っておくと、外出先でも陰部を清潔に保てるので便利です。細菌が繁殖しやすい蒸れた環境を防ぐために、通気性の良い服装や生理用品を選ぶことも意識すると良いでしょう。
性感染症を防ぐ
陰部のできものは、性感染症が原因となっている場合が少なくありません。性感染症の予防には、コンドームの使用が不可欠です。コンドームには、厚さや素材、スムーズな挿入を助けるゼリー付きなど様々な種類がありますので、自分に合ったものを選びましょう。
その他、性感染症の予防には、パートナーを特定することや性行為前後にシャワーを浴びる、性行為前に排尿・排便を済ませる、体調不良の時や生理中は性行為を避けるなどの方法が挙げられます。そして、性行為をする方はパートナーに感染させないためにも、定期的に性感染症に関する検査を受けることが大切です。
市販薬を使う
比較的軽症のおできの場合は、市販薬での治療も可能です。抗菌成分と炎症を抑える抗生物質が配合されている軟膏などがあります。症状に合った薬を選ぶために、薬剤師に相談の上購入してください。市販薬を使用して1週間以上経っても改善が見られない場合や、痒みや痛みが増している場合、しこりが大きくなっている場合は、市販薬の使用を中止して早めに病院を受診してください。
クリニックを受診する
セルフケアや市販薬での治療を始めた場合、患部の様子をよく観察しましょう。痒みや痛み、しこりなどの症状が改善せずに悪化する場合は、何らかの病気が原因の可能性があります。その場合は、早急に婦人科や産婦人科、皮膚科などの病院を受診してください。市販薬を使用していた場合は、製品名を医師に伝えられるよう持参すると良いでしょう。
陰部にできものが生じる原因を知り、正しく予防・対策しよう
陰部のできものは、清潔に保って蒸れにくくするなどのセルフケアで、ある程度の予防や改善が期待できます。症状が軽度である場合は、市販薬での治療も可能です。
ただし、症状が悪化する場合や、強い痒みや痛みを伴う場合、しこりがある場合は重篤な病気が潜んでいる可能性もあります。患部の様子を観察し、当てはまる場合は早めに婦人科などの病院を受診してください。
※本記事の医師監修に関して学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。