葉酸が妊娠前から必要な理由とは?サプリメントを飲み始める時期や適切な摂取方法を解説

「葉酸はなぜ妊娠前から必要なの?」

「葉酸は妊娠前いつから飲めばいい?」

「妊娠初期に葉酸を飲まなかったらどうなるの?」

妊娠を希望する方で、このような疑問をお持ちの方がいるのではないでしょうか。葉酸は妊娠中はもちろんのこと、妊娠前からの摂取が推奨されています。妊娠前・妊活中の葉酸摂取が、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを低減できるとされているためです。

本記事では、妊娠前から葉酸が必要である理由や葉酸サプリメントを飲み始める時期、適切な摂取方法について解説していきます。ぜひ記事をお読みいただき、自分と赤ちゃんの健康作りの参考にしてください。

そもそも葉酸とは

葉酸は妊娠中に欠かせない成分として注目されています。葉酸とはいったい何でしょうか。

前提知識として、以下の2つを紹介します。

  • 葉酸の特徴と働き
  • 葉酸の2つの分類

それぞれみていきましょう。

1.葉酸の特徴と働き

葉酸はビタミンB群の1つです。緑色の野菜に多く含まれ、光や熱に弱い性質を持ちます。

ビタミンB12とともに、赤血球の生産を助ける働きがあり「造血のビタミン」ともいわれています。子どもから大人まで、男女ともすべての人にとって大切な栄養素です。

代謝にも関わっており、DNA・RNA・たんぱく質の合成を促進し、細胞の生産や再生を助けるため、発育に重要な役割があります。とくに細胞の分裂や成熟に関与するため、おなかの赤ちゃんにとって重要だといわれているのです。

2.葉酸の2つの分類

葉酸には食品中に存在する「ポリグルタミン酸型葉酸」と、加工食品やサプリメントに含まれる「モノグルタミン酸型葉酸」があります。2つは体での利用率が異なります。

葉酸は水溶性ビタミンで、水や熱に弱いため、ポリグルタミン酸型は調理の過程で損失しやすいのです。消化吸収の過程でもさまざまな影響を受けるため、体での利用率は低く、50%程度とされています。

一方モノグルタミン酸型は、体内にそのまま吸収されるため、ポリグルタミン酸型より利用率が高くなります。体での利用率は85%程度です。厚生労働省では神経管閉鎖障害のリスクを低減する目的で、サプリメントや栄養補助食品による摂取を推奨しているのです。

参考:eヘルスネット葉酸とサプリメント‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果/厚生労働省
参考:日本人の食事摂取基準(2020年版)/厚生労働省

妊娠前から葉酸が必要とされる理由

葉酸は、妊娠前から摂取する必要があるといわれています。おもな理由は以下の2つです。

  • 赤ちゃんが健康に育つための大切な栄養素であるため
  • お母さんの栄養不足を補うため

一つずつ解説します。

1.赤ちゃんが健康に育つための大事な栄養素であるため

妊娠前の葉酸摂取が推奨される大きな理由は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを減らすとされているためです。

神経管閉鎖障害とは、おなかの赤ちゃんの神経管ができるとき(受胎後およそ28日)にうまくつながらない先天性異常で、無脳症や二分脊椎、髄膜瘤などです。妊娠初期のお母さんに十分な葉酸がないと、発症リスクが高まることがわかっているため、この時期が重要とされています。

2.お母さんの栄養不足を補うため

2015年の国民健康・栄養調査によると「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度」は、若い女性ほど少ないことがわかっています。「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度」で「ほとんど毎日」としている人は、総数平均で52.7%でした。ところが、20〜29歳の女性では38.4%という結果でした。

調査結果より、そもそも若い女性は栄養のバランスが崩れがちであることがわかります。

2019年(令和元年)の国民健康・栄養調査報告によると、女性の葉酸の平均摂取量は以下の通りでした。

年齢 葉酸の平均摂取量(μg)
20~29歳 226
30~39歳 233
40~49歳 247

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、非妊娠時の女性の摂取基準を1日240μgとしているため、不足している現状なのです。栄養不足を補うためにも葉酸摂取は大切です。

参考:令和元年国民健康・栄養調査報告/厚生労働省
参考:日本人の食事摂取基準(2020年版)/厚生労働省

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葉酸サプリは妊娠前いつから飲めばいい?

「葉酸が妊娠前から大切なのはわかったけれど、どれくらい前から?」と疑問に思った方もいるでしょう。

厚生労働省では、妊娠を希望する女性に関して「神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させるために、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間、葉酸をはじめその他のビタミンを多く含む栄養バランスがとれた食事が必要」としています。

胎児の神経管は、お母さんが妊娠に気づく前にできあがります。そのため、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの期間に、一定量の葉酸摂取が推奨されているのです。

葉酸は妊娠期間を通して、非妊娠時よりたくさんの量が必要です。授乳中は母乳を通して赤ちゃんに葉酸を与えることになります。妊活中から授乳期間までは、意識して摂取する必要があるのです。

【妊娠前〜授乳中】葉酸摂取の推奨量

葉酸の摂取目安量は時期により異なります。厚生労働省の推奨量は以下の通りです。

食事性の葉酸(μg) サプリメントなどの葉酸

(μg)

妊活中~妊娠初期 240 400
妊娠中期~出産 240 240
授乳中 240 100
成人女性 240

妊娠前~妊娠初期には食事からの葉酸に加え、1日400μgをサプリメントで摂取することが推奨されています。

ただし、サプリメントを飲んだから安心というわけではありません。葉酸を多く含む食品を積極的に摂取しましょう。とはいえ、食事はバランスが大切であるため、同じ食品だけ食べ続けることがないようにしてください。さまざまな食品を摂取し、主食・主菜・副菜のバランスがとれた食事を心がけましょう。

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葉酸を多く含む代表的な食品

葉酸はさまざまな食品に含まれています。含有量が多く、調理しやすいもの、入手しやすいものは以下の食品群です。

  • 野菜類
  • 果物
  • 豆類

どのような食品があるかみていきましょう。

1.野菜類

野菜類で、葉酸の含有量が多い食品は以下の通りです。

食品名 100g当たりの含有量(μg)
ブロッコリー(油炒め) 340
えだまめ(ゆで) 260
なばな(ゆで) 240
アスパラガス(油炒め) 220
ほうれんそう(油炒め) 150

葉酸は水に溶けやすい性質であるため、スープにして汁ごと摂取したり、焼いたりして食べるのがおすすめです。効率よく摂取するために、加熱せず食べられる食品を選ぶのもよいでしょう。

2.果物類

果物類で、葉酸の含有量の多い食品は以下の通りです。

食品名 100g当たりの含有量(μg)
ドライマンゴー 260
いちご 90
アボカド 83

ドライマンゴーやいちごは皮をむく手間がなく、手軽に食べられます。常備しておくのもいいでしょう。

3.豆類

豆類で、含有量の多い食品は以下の通りです。

食品名 100g当たりの含有量(μg)
きな粉(黄大豆・脱皮大豆) 250
糸引き納豆 130
そらまめ(フライビーンズ) 120

きな粉は牛乳に溶かして飲めば、カルシウムも摂取できるためおすすめです。納豆も毎日の食事に取り入れやすいですね。

葉酸サプリに関するよくあるQ&A

葉酸サプリのよくある質問は、以下の3点です。

  • 葉酸サプリを飲まない方がいいのは本当ですか
  • 妊娠初期に葉酸サプリを飲まなかったらどうなるのですか
  • 葉酸サプリを摂取すればダウン症は防げるの

それぞれ回答していきます。

1.葉酸サプリは飲まない方がいいのは本当ですか?

本当ではありません。

葉酸は、赤ちゃんの神経管が形成される時期の大切な栄養素です。妊娠初期に葉酸が不足すると、赤ちゃんの先天異常のリスクが高まります。また、お母さんの体は栄養が不足しやすい状態であり、貧血などが起こりやすくなります。

妊娠前から十分に葉酸を摂取することが大切です。ただし、サプリメントの過剰摂取には注意しなければなりません。

サプリメントの過剰摂取により、ビタミンB12欠乏の判別が難しくなったり、健康障害につながったりする恐れがあるためです。厚生労働省では、葉酸サプリからの摂取量上限を1日900μgとしています。この量を超えないように注意しましょう。

食事での葉酸については、摂りすぎる心配はありません。

2.妊娠初期に葉酸サプリを飲まなかったらどうなるのですか?

お母さんや赤ちゃんに必要な栄養が不足してしまいます。

妊娠初期は食事からの葉酸に加え、さらに400μg必要です。食事だけで満たそうとすると、たくさんの量の食べ物が必要となるため、効率的に摂取できるサプリメントの利用がすすめられているのです。

神経管閉鎖障害の原因は葉酸不足だけではありませんが、妊娠前から十分な葉酸を摂取することで、リスクを低減させることがわかっています。

3.葉酸サプリを摂取すればダウン症は防げるの

現段階では、葉酸サプリがダウン症を予防できるとはいえません。

葉酸サプリは、妊娠前からの摂取で、神経管閉鎖障害の発症リスクを減らすことが報告されています。ダウン症についての明確な根拠は、まだ確認できない状況です。

葉酸サプリの適切な摂取方法

葉酸サプリは適切に摂取することで、おなかの赤ちゃんに効率的に栄養を届けられ、リスクも抑えられます。適切な摂取方法は以下の4つがあります。

  • 水か白湯で飲む
  • 1日複数回に分けて飲む
  • 自分が継続しやすいタイミングで飲む
  • 1日の目安量を守る

一つずつくわしくみていきましょう。

1.水か白湯で飲む

葉酸サプリの栄養をしっかり補給するには、水か白湯で飲むことが大事です。

お茶やコーヒーなどカフェインが含まれている飲み物は、葉酸の吸収をさまたげる恐れがあります。せっかく葉酸サプリを飲んでも、カフェインの含まれた飲み物で飲むと、吸収されにくくなってしまうのです。

急いでいるときも、水や白湯で飲むようにしてください。

2.1日複数回に分けて飲む

葉酸サプリは、複数回に分けて飲むのがおすすめです。複数回に分けると、体内に葉酸がある状態を持続できます。

葉酸は体内に貯めておけず、尿として排出されてしまうため、分けて飲むのがポイントです。

3.自分が継続しやすいタイミングで飲む

葉酸サプリはお薬ではないので、基本的にいつ飲んでもかまいません。自分の生活スタイルに合わせて飲むようにしましょう。

飲み忘れをしないように「朝食後と夕食後に飲む」など決めて飲むのも一つの方法です。

4.1日の目安量を守る

葉酸サプリは商品ごとの目安量を守るようにしよう。飲み忘れたからといって、数日分まとめて飲むなどしないようにしてください。

まとめて飲むと、1日の上限量を超える可能性があるため注意が必要です。毎日適切な量を継続して飲んでみてください。

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葉酸を妊娠前から摂取し赤ちゃんを迎える準備をしよう

妊娠前から葉酸が必要とされる理由は、おなかの赤ちゃんの神経管閉鎖障害リスクを減らすとされているためです。

神経管ができるのは受胎後28日ごろですが、妊娠に気づくのはこれより遅くなります。そのため、妊娠を望む方は、妊娠の1か月以上前、つまり妊活中からの摂取が推奨されているのです。

葉酸はお母さんの栄養不足を補うためにも大切です。バランスのよい食事と合わせて、サプリを適切な方法で摂取し、赤ちゃんを迎える準備をしていきましょう。

 

記事監修

藤東 淳也
藤東クリニック院長・医療法人双藤会 理事長日本産科婦人科学会専門医 / 医学博士 / 細胞診専門医 / バイオインフォマティクス認定技術者 / 日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医 / 日本内視鏡外科学会技術認定医 / 婦人科腫瘍専門医 / 母体保護法指定医 / 新生児蘇生講習会専門コース修了