「妊活中に必要な葉酸の量はどれくらいなの?」
「葉酸の多い食べ物はどんなものがある?」
「妊活中に葉酸を摂りすぎても大丈夫?」
妊活を始めてから「葉酸」を意識するようになったけど、どのくらいの量を摂取したらいいのかわからない人や「妊娠してから始めよう」と先送りにしている人もいるのではないでしょうか?
妊活中から授乳期にかけて推奨される葉酸の摂取量は、各ステージによって異なります。本記事では以下の内容を詳しく説明します。
- 妊活中に必要な葉酸の量
- 葉酸の摂取が推奨されている理由
- 葉酸を多く含む食べ物
- 葉酸サプリをおすすめする理由
- 妊活中・妊娠中に最適なサプリの選び方
- サプリを摂取するときに気をつけてほしいポイント
妊活中に必要な葉酸の量を知り、妊娠前から産後までの体づくりに役立てたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
【妊活中・妊娠中・産後】葉酸の推奨摂取量
葉酸は細胞の合成や増殖に深く関わっている栄養素です。厚生労働省は、妊活中から授乳期の女性に推奨されている葉酸の摂取量を、各ステージごとに設定しています。
基本の推奨量 | 付加量 | 合計 | |
---|---|---|---|
成人女性 | 240μg | ー | 240μg |
妊活中~妊娠初期 | 400μg | 640μg | |
妊娠中期~妊娠後期 | 240μg | 480μg | |
出産~授乳期 | 100μg | 340μg |
それぞれのステージについて詳しく解説します。
妊活中〜妊娠初期
成人女性の場合、食品からの摂取が推奨される葉酸の量は240µgです。
基本の推奨量 | 付加量 | 合計 | |
---|---|---|---|
成人女性 | 240μg | ー | 240μg |
妊活中~妊娠初期 | 400μg | 640μg |
しかしながら、妊娠初期は胎児の脳や神経が形成される時期のため、通常よりも多くの葉酸が体内で消費されます。そのため、妊活中から妊娠初期にかけては、400μgの葉酸をサプリメントから摂ることがすすめられています。
妊娠の意志がある女性は、あらかじめ十分な量の葉酸を摂取して、妊娠に備えておきましょう。
妊娠中期〜妊娠後期
妊娠中期~妊娠後期は、基本の推奨摂取量240µgに加えて、1日あたり240μgの葉酸を摂取するよう推奨されています。
基本の推奨量 | 付加量 | 合計 | |
---|---|---|---|
成人女性 | 240μg | ー | 240μg |
妊娠中期~妊娠後期 | 240μg | 480μg |
妊娠中に母体の葉酸が不足していると、低出生体重児や早産の原因となることがあるため、注意が必要です。
付加量の240μgについては、サプリなどの栄養補助食品を活用して、必要量を不足なく摂取するようにしましょう。
出産〜授乳期
出産~授乳期は、1日あたり100μgの葉酸を追加で摂取することが推奨されています。母乳は血液からつくられるので、授乳中は葉酸が不足しやすくなるためです。
基本の推奨量 | 付加量 | 合計 | |
---|---|---|---|
成人女性 | 240μg | ー | 240μg |
出産~授乳期 | 100μg | 340μg |
母体と赤ちゃん、両方の健康をサポートするために、産後も積極的に葉酸を摂取しましょう。
妊活中から授乳期にかけて葉酸の摂取が推奨される2つの理由
妊活中から授乳期にかけて葉酸の摂取が推奨されているのは、次の2つの理由からです。
- 神経管閉鎖障害のリスク低減
- 貧血予防
ひとつずつ解説します。
1.神経管閉鎖障害のリスク低減
妊娠1か月前〜妊娠3ヶ月の間に十分な量の葉酸を摂取していると、胎児の神経管閉鎖障害が起きるリスクを低減させられるといわれています。
神経管閉鎖障害とは、胎児の脳や脊髄に起こる先天性異常です。これは、胎児が成長する過程で「神経管」という組織が正常に発達しなかったために起こります。
神経管閉鎖障害として代表的なものは、無脳症や二分脊椎です。両者の具体的な状態や経過をご紹介します。
状態 | 症状・経過 | |
---|---|---|
無脳症 | 脳の大部分が欠損した状態 | 死産となるか、生後数週で死亡する |
二分脊椎 | 背骨が正常につくられず、部分的に欠損している状態 | 病変の生じた部位より下位に麻痺や感覚障害が起きる |
神経管閉鎖障害は軽度であれば目立った症状は見られないこともありますが、重度であると胎児の命や健康に大きな影響を及ぼす可能性が高くなります。
神経管が形成されるのは受胎からおよそ28日間ですが、この時期は妊娠に気づかない女性も多いため、注意しなければなりません。
妊娠を希望している、もしくは妊娠の可能性がある女性は、サプリメントなどの栄養補助食品を活用して、十分な量の葉酸を摂取しましょう。
2.貧血予防
妊娠中期~授乳期にかけては、おもに貧血予防の観点から葉酸の摂取が推奨されています。
葉酸やビタミンB12は、赤血球の合成に大きな役割を果たしている栄養素です。どちらが不足しても赤血球の形に異常が生じ、巨赤芽球性貧血という悪性の貧血が引き起こされる可能性があります。
とくに妊娠中は体内の血液量が30〜50%増加するため、血が薄まりやすく、貧血になるリスクが高い時期です。疲労や息切れが代表的な自覚症状ですが、気がつかないまま病状が進行することもあるので、気をつけないといけません。
貧血対策というと鉄分を意識する女性も多いですが、葉酸やビタミンB12などの栄養素についても、欠かさず摂取するようにしましょう。
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妊活中の葉酸摂取量を補うのにおすすめな食品
葉酸は緑黄色野菜やレバー、豆類など、さまざまな食品に含まれている栄養素です。
葉酸を多く含む食品の例を「動物性食品」と「植物性食品」に分けて紹介します。
動物性食品
食品名 | 葉酸の含有量 |
---|---|
鶏レバー串1本(30g) | 390μg |
たたみいわし(100g) | 300μg |
さくらえび(100g) | 230μg |
参照元:食品成分データベース参考
鶏レバーは葉酸の含有量が多いため、焼き鳥1本だけで基本の推奨量をまかなえる便利な食材です。魚介類では、たたみいわしのように内臓ごと食べる食品に葉酸が多く含まれます。
しかし、動物性食品は脂質やコレステロールなど、葉酸以外の栄養素も豊富に含まれる傾向にあります。偏って摂取すると、カロリー過多や栄養バランスの乱れにつながる恐れがあるため、注意しましょう。
植物性食品
食品名 | 葉酸の含有量 |
---|---|
煎り大豆(100g) | 260μg |
ブロッコリー4房(100g) | 220μg |
いちご中粒8~9個(100g) | 90μg |
参照元:食品成分データベース参考
植物性食品のなかでは、豆類や緑黄色野菜に多くの葉酸が含まれています。また、果物は洗うだけで食べられるので、手軽に葉酸が摂取できる便利さが魅力です。
とはいえ、妊娠中に必要な栄養素は葉酸だけではありません。
1つの栄養素に偏るのではなく、満遍なく多様な食品を摂取することが大切です。
妊活中は食品に加えて葉酸サプリの活用がおすすめ
食品に含まれる葉酸は体内での利用効率が一定でないため、サプリメントなどの栄養補助食品で補うことが推奨されています。
食品に含まれる葉酸とサプリの主な違いは、以下のとおりです。
食品中の葉酸 | サプリメントの葉酸 | |
---|---|---|
葉酸の形 | ポリグルタミン酸型 | モノグルタミン酸型 |
吸収過程 | 体内でモノグルタミン酸型に変換されてから吸収される | そのまま吸収される |
生体内利用率 | 50% | 85% |
特徴 | 水に溶けやすい
熱に弱い 調理工程で失われやすい |
吸収がいい
生体内利用率が高い |
参照元:葉酸塩|厚生労働省eJIM
実際に、諸外国で行われている「葉酸と神経管閉鎖障害のリスク軽減の関連性」に関する研究は、多くの場合でサプリと同じモノグルタミン酸型の葉酸がが利用されています。
バランスの良い食生活を意識して、食事からも葉酸を摂取しながら、サプリメントで付加量を補うことがおすすめです。
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妊活中に葉酸サプリを選ぶ際の3つのポイント
葉酸サプリを選ぶときに重視したほうがいいポイントは、以下の3つです。
- 葉酸の含有量を確認する
- 安全性にこだわる
- サポート体制を確認する
ひとつずつ、詳しく解説します。
1.葉酸の含有量を確認する
葉酸の含有量は、サプリを選ぶうえで重要なポイントです。
何粒でどのくらいの葉酸が摂れるのか把握できていないと、必要な量を適切に摂取できません。また、飲みすぎが続くと過剰摂取になってしまうリスクもあります。
妊活中や妊娠初期に飲むことを前提とするのであれば、1日あたり400µgの葉酸が摂れる商品がおすすめです。
1粒に何µgの葉酸が含まれているのか確認をして、過不足のないように摂取しましょう。
2.安全性にこだわる
妊娠中は普段よりも体がデリケートになりやすいので、サプリ自体の安全性にもこだわって商品を選ぶことをおすすめします。
安全性の評価ポイントは、以下のとおりです。
安全性の評価基準 | 解説 |
---|---|
GMP認定工場で製造されているか | ・「GMP認定工場」とは、原料の受け入れから製品の出荷までの全工程において、適正な製造管理と品質管理がされていると認定された工場のこと。
・厚生労働省の定めたガイドラインが採用されている |
原材料の安全性が確認できるか | ・防腐剤・添加物・着色料が使用されていない
・残留農薬や放射能・水銀の検査が行われている |
原産国・最終加工国を開示しているか | ・原材料の原産国や最終加工国が開示されている |
妊活中・妊娠中の女性をターゲットにした商品を展開しているメーカーでは、安全性を示すために、さまざまな企業努力が行われています。
そのなかでも、工場での品質管理や原材料の安全性は重要なポイントです。
妊活中から授乳期の終わりまで、安心して飲み続けられる商品を選びましょう。
3.サポート体制を確認する
きちんとしたサポート体制があるかどうかも、葉酸サプリを選ぶうえでは見逃せないポイントだといえます。
他のサプリとの飲み合わせや、服用に関する不安など、困ったときに問い合わせが可能な体制が整っていると安心です。なかには、サポートセンターの担当者を「女性の専門家」のみにしているメーカーもあります。
充実したサポート体制の商品を選ぶと、安心して服用し続けられるでしょう。
葉酸サプリを摂取するときの注意点
葉酸サプリを摂取する際の注意点は、以下のとおりです。
- 必ず障害や疾病を予防できるわけではない
- 飲みすぎると過剰摂取のリスクがある
それぞれ詳しく解説します。
必ず障害や疾病を予防できるわけではない
葉酸サプリを摂取していたからといって、神経管閉鎖障害を100%防げるというわけではありません。
神経管閉鎖障害は遺伝的な要因や、特定の薬剤が原因で起こることもあります。貧血についても、原因は葉酸不足だけでなく、鉄分不足も考えられます。
そのため、葉酸サプリの摂取だけでこれらの障害や疾病を100%予防することは難しいでしょう。
とはいえ、神経管閉鎖障害は妊娠前から葉酸を適切に摂取していれば、発症リスクを約40〜80%減らせるといわれています。
高い予防効果が期待できることは確かなので、適切な量の葉酸を摂取することは非常に大切です。
参照元:日本周産期・新生児医学会雑誌|葉酸による神経管閉鎖障害の予防:発生率、リスク因子、葉酸サプリメントの摂取、行政への要望
飲みすぎると過剰摂取のリスクがある
食事から摂る葉酸に摂りすぎの心配はありませんが、サプリメントから摂取する分については、過剰摂取になるリスクがあるので注意が必要です。
実際に、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でも、サプリメントなどの栄養補助食品に含まれる葉酸にのみ耐容上限量が設定されています。
年齢 | 耐容上限量 |
---|---|
12~29歳 | 900µg |
30~64歳 | 1,000µg |
葉酸サプリを過剰摂取したときの主な症状は、以下のとおりです。
- 葉酸が体内ではたらきにくくなる
- ビタミンB12欠乏症の診断が困難になる
サプリに含まれるモノグルタミン酸型の葉酸は、過剰に摂取し続けると、体内での葉酸のはたらきを阻害してしまうことがあります。
また、高用量の葉酸はビタミンB12欠乏症の特徴である巨赤芽血球性貧血を改善するため、神経障害の症状を隠してしまうことが懸念されます。そのため、葉酸を摂りすぎていると、正しい診断と治療を妨げてしまう可能性があるのです。
このような事態を避けるためにも、服用する商品の用法・容量は必ず確認をして、正しく摂取することが大切です。
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葉酸に関するよくあるQ&A
葉酸に関するよくある質問は以下のとおりです。
- 葉酸サプリは飲まないほうがいいの?
- 妊娠前から飲めばダウン症を予防できる?
ひとつずつ解説します。
葉酸サプリは飲まないほうがいいの?
結論から言うと、妊活中・妊娠中の女性は葉酸サプリを飲んだほうがいいでしょう。
葉酸は、胎児の神経管閉鎖障害や母体の貧血を予防する効果があるとされています。厚生労働省では「妊活中・妊娠中の女性は食品からの摂取に加えて葉酸サプリを摂取したほうがいい」と正式に発表しています。
ただし、過剰摂取には注意が必要です。1日あたりの耐容上限量を超えて摂取を続けると、健康被害が起こる可能性があります。
正しい用法・容量を確認し、飲みすぎないようにすることが大切です。
妊娠前から葉酸を飲めばダウン症を予防できる?
葉酸の摂取がダウン症の発生リスクを下げるという科学的な根拠はありません。
葉酸の摂取で一定の予防効果が認められた先天性異常は、現段階では神経管閉鎖障害とされています。少なくとも日本人女性については、葉酸の摂取とダウン症児の発生率には関連性が認められませんでした。
葉酸は、母体や胎児に必要不可欠な栄養素であることに変わりはないため、過不足のないように摂取することが大切です。
参照元:厚生労働科学研究|日本人女性の葉酸代謝関連酵素遺伝子多型と先天異常(神経管欠損症およびダウン症候群等)の発生予防効果に関する基礎的研究(総括研究報告書)
必要量を摂取するために妊活中から葉酸サプリを活用しよう
妊活中・妊娠中は胎児と母体の健康のために、適切な量の葉酸を摂取することが重要です。
とくに妊娠前から妊娠初期については、葉酸の摂取が胎児の先天性異常のリスクを低減させるといわれています。
妊娠を意識している女性は葉酸サプリを活用して、赤ちゃんを育てるための体づくりを始めましょう。
記事監修
藤東 淳也 藤東クリニック院長・医療法人双藤会 理事長日本産科婦人科学会専門医 / 医学博士 / 細胞診専門医 / バイオインフォマティクス認定技術者 / 日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医 / 日本内視鏡外科学会技術認定医 / 婦人科腫瘍専門医 / 母体保護法指定医 / 新生児蘇生講習会専門コース修了 |