妊活中の葉酸はいつから飲むべき?必要性や推奨量・サプリが推奨される2つの理由

「妊活をしている人はいつから葉酸を摂ればいいの?」

「不足したときのリスクは?」

「どうすれば必要量を摂取できるの?」

妊活を意識し始めてから「葉酸」が気になっているけれど、いつから飲み始めたらいいのかわからない人や、「まだ妊娠していないから必要ない」と後回しにしている人もいるのではないでしょうか?

葉酸は「赤ちゃんがほしい」と思っている妊娠中の女性だけでなく、出産後も積極的に摂取していただきたい栄養素です。

この記事では妊活中の葉酸はいつから飲むべき?必要性や推奨量について解説します。

妊活中の葉酸はいつから摂取すべき?

結論から言うと、妊娠を意識している女性は、なるべく早く葉酸の摂取を始めることをおすすめします。

その理由は、葉酸には胎児の「神経管閉鎖障害」の発症リスクを減少させる効果が期待できると、国内外の研究で報告されているからです。リスク低減のためには、妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月まで摂取するよう推奨されています。

しかしながら、正確な妊娠のタイミングをあらかじめ把握することは困難です。また、実際に妊娠が判明したときには、すでに摂るべき期間を過ぎている可能性もあります。

妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性は、早い段階で葉酸を摂り始めて、妊娠に備えておきましょう。

葉酸が妊活中に欠かせない理由

葉酸とはビタミンB群の一種で、細胞の合成や再生に大きく関わっている栄養素です。妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児に神経管閉鎖障害が起きるリスクが高まるといわれています。

神経管閉鎖障害は脳や脊髄、脊椎に生じる先天性異常のひとつで、おもな症状と経過は以下のとおりです。

症状と経過
無脳症 大脳が欠損した状態

死産となるか、生後数週で死に至る

二分脊椎 背骨の一部が欠損した状態

欠損した部分より下位に麻痺や感覚障害が生じる

神経管閉鎖障害は、中枢神経系を束ねる「神経管」が成長の過程でうまく発達しないことが原因です。

軽度であれば目立った症状は見られないこともありますが、重度であると、胎児の命や健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。妊娠前〜妊娠初期に葉酸の摂取が推奨されているのは、神経管閉鎖障害の発生リスクを低減することがおもな目的です。

また、葉酸は貧血予防の効果も期待できるため、妊娠・出産前後の人にとって欠かせない栄養素のひとつだといえるでしょう。

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【妊活中~授乳期】葉酸の推奨摂取量

妊活中~授乳期の女性に推奨される葉酸の摂取量は、以下3つのステージごとに分けて設定されています。

  • 妊活中~妊娠初期
  • 妊娠中期~妊娠後期
  • 出産~授乳中

それぞれ、詳しく解説します。

妊活中~妊娠初期

厚生労働省が公開している葉酸の推奨摂取量は18歳以上の女性の場合、1日あたり240μgです。

妊活中・妊娠初期の女性は、食事からの摂取に加えてサプリメントなどの栄養補助食品で400μgを摂取することが推奨されています。神経管閉鎖障害のリスクを減らすためには、食事とサプリの両方から推奨量を摂取することが重要です。

しかし、妊娠初期はつわりなどが原因で、普段どおりの食事が難しくなることも少なくありません。

吐き気が強いときは服用のタイミングをずらすなどして、可能な限り葉酸を体内に取り入れられるよう工夫しましょう。

妊娠中期~妊娠後期

妊娠中期から出産にかけて、妊娠中の女性は1日あたり240μgの葉酸を追加で摂取することが推奨されています。18歳以上の女性であれば、1日あたりの推奨摂取量240μgを食事から摂り、付加量240μgをサプリメントで補うことが望ましいでしょう。

妊娠中期以降に葉酸が不足すると、貧血の原因となる可能性があります。貧血は早産や低出生体重児のリスクを上昇させる可能性があるため、注意が必要です。

妊娠中は、体内の血液量が約30〜50%増加するため、通常よりも貧血が起こりやすくなっています。

中期以降も油断はせず、不足しないように葉酸を摂取しましょう。

出産~授乳中

出産後から授乳期間中にかけては、1日あたり100μgの葉酸を追加で摂取することが推奨されています。

18歳以上の女性の場合で計算すると、1日あたりの推奨摂取量240μg+付加量100μgで、合計340μgが摂取量の目安です。

授乳中の葉酸摂取は見落とされがちですが、授乳するたびに母体の葉酸は消費されています。

そのため、産後も卒乳をするまでは、付加量100µgをサプリメントなどで摂取して、必要な栄養素を補いましょう。

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いつからでも取り入れられる!葉酸を豊富に含む食品

葉酸は、野菜や柑橘類、肉類など、多くの食品に含まれています。代表的な品目と含有量は、以下のとおりです。

食品名 葉酸の含有量
鶏レバー串1本(30g) 390µg
ブロッコリー4房(100g) 220μg
焼きのり1枚(3g) 57μg
きなこ大さじ2(14g) 35µg
ネーブルオレンジ1個弱(可食部100g) 34µg
卵Mサイズ1個(可食部50g) 24.5µg

参考:食品成分データベース (mext.go.jp)

レバーは葉酸を多く含みますが、脂質が高いので、頻繁に食べる際は注意が必要です。

また、ブロッコリーのように加熱して食べる食品は、調理工程で葉酸が失われやすい特徴があります。これは、葉酸が水溶性ビタミンで、水に溶けやすく熱に弱いという性質をもつためです。

葉酸を多く含む食品を取り入れることは大切ですが、意識しすぎると逆に栄養バランスが乱れてしまう可能性もあるでしょう。

葉酸以外の栄養素も過不足なく摂取できるように、バランスの取れた食生活を心がけましょう。

食事のほかに葉酸サプリの摂取が推奨される2つの理由

葉酸は食事からだけでなく、サプリからもあわせて摂取することが推奨されています。

その理由は以下のとおりです。

  • 食品だけでまかなうことが難しい
  • 吸収率が異なる

それぞれ詳しく解説します。

1.食品だけでまかなうことが難しい

妊活中・妊娠中は、1日あたり640μgの葉酸摂取が推奨されています。しかしながら、すべてを食事から補うことは難しいでしょう。

食品中に含まれる葉酸は、体内で消化吸収される過程でさまざまな影響を受けるため、生体利用率が不安定だといわれています。また、調理の過程で失われやすい性質があるため、実際の食事に含まれている正確な量を把握するのは困難です。

体内で十分な量の葉酸をはたらかせるためには、毎日コンスタントに推奨量を摂取することを重視しなければなりません。

サプリメントであれば、摂取量を把握しながら吸収効率のいい葉酸を取り入れられるので、積極的に活用するようにしましょう。

2.吸収率が異なる

葉酸には「ポリグルタミン酸型」と「モノグルタミン酸型」の2つの型があり、それぞれ吸収率が異なります。

それぞれの特徴と吸収率は、以下のとおりです。

種類 特徴 吸収率
モノグルタミン酸型 そのまま小腸で吸収される 約85%
ポリグルタミン酸型 調理や消化の過程でモノグルタミン酸に分解されてから吸収される 約50%

食品に含まれている葉酸は、ほとんどがポリグルタミン酸型です。そのため、葉酸を多く含む食品を摂っても体内での吸収率は約50%と、利用効率が良いとはいえません。

一方、サプリに含まれている葉酸はモノグルタミン酸型が多く、食品より吸収効率がいいという特徴があります。

実際に欧米で行われた神経管閉鎖障害の予防に関する実験で利用されているのは、ほとんどの場合でモノグルタミン酸型の葉酸です。

食品からバランスよく栄養を摂取しつつ、サプリメントも活用して効率よく必要量を補いましょう。

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妊活中・妊娠中に葉酸サプリを摂るときの注意点

妊活中・妊娠中に葉酸サプリを摂取する際は、以下の2点に注意しましょう。

  • 妊婦に適した商品を選ぶ
  • 過剰摂取に注意する

それぞれ詳しく解説します。

妊婦に適した商品を選ぶ

葉酸サプリはドラッグストアなどでも販売されていますが、可能であれば、妊活中・妊娠中に特化した商品を選ぶことをおすすめします。

妊活中・妊娠中の人向けに作られた商品は、通常の商品と比較して、安全性や原材料の品質が高い場合が多いです。また、サポート体制も充実している傾向にあるため、トラブルがあった際もすぐに相談できる環境が整っています。

妊娠中は心身ともにデリケートになりやすい時期です。安心してサプリを摂取できるように、状況に適した商品を選びましょう。

過剰摂取に注意する

葉酸サプリを摂りすぎると、過剰摂取になるリスクがあります。

サプリから摂取する葉酸の1日あたりの耐容上限量は12〜29歳で900μg、30〜64歳で1,000µgです。これを超えて摂取すると、以下のような健康被害が出る可能性があります。

  • 葉酸が体内ではたらきにくくなる
  • ビタミンB12欠乏症の診断が困難になる

サプリに含まれている葉酸の多くは「モノグルタミン酸型」という形をしています。

モノグルタミン酸型の葉酸は、過剰に摂取すると葉酸のはたらきを悪くすることがあるため、注意が必要です。

また、高用量の葉酸はビタミンB12欠乏症の症状を一部緩和しますが、根本的な原因は解決できません。

この場合、医師による正しい診断と治療を妨げてしまう危険性があります。

食品から摂る葉酸については過剰摂取になる心配はないとされていますが、サプリの場合は摂りすぎに注意してください。

選んだ商品の含有量をチェックして、飲みすぎないように気をつけて服用しましょう。

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葉酸に関するよくあるQ&A

葉酸に関するよくあるQ&Aは以下のとおりです。

  • 妊娠初期に葉酸サプリを飲まなかったらどうなる?
  • 「葉酸サプリは飲まないほうがいい」って本当なの?
  • 妊娠前から葉酸を摂っていたらダウン症の予防になるの?

ひとつずつ、詳しく解説します。

妊娠初期に葉酸サプリを飲まなかったらどうなる?

これまでの研究結果から、妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害の発症率が高まるとされています。

ただし、全ての神経管閉鎖障害が葉酸不足で起きるわけではありません。2015年に出生した新生児総数1,005,677人のうち、神経管閉鎖障害の患児は542人、発症率は0.05%程度でした。

神経管閉鎖障害は、発症した際の症状が重篤であることと、予防方法がわかっている数少ない疾患であることから、可能な限り予防に努めることが推奨されています。

手軽で吸収率の高いサプリを活用して、適切な量の葉酸を摂取するように心がけましょう。

「葉酸サプリは飲まないほうがいい」って本当なの?

厚生労働省は「妊活中・妊娠中の女性は食品からの摂取に加えて葉酸サプリを摂取したほうがいい」と正式に発表しています。「飲まないほうがいい」というのは間違いだといえるでしょう。

食品に含まれている葉酸にも神経管閉鎖障害のリスクを下げる効果はあると考えられています。

しかしながら、効果が期待できるだけの摂取量はまだわかっていません。

そのため、食事に加えて、吸収効率がよく体内で摂取されやすい葉酸サプリの摂取が推奨されているのです。

ただし、葉酸サプリは1日あたりの耐容上限量を超えて摂取を続けると、過剰摂取となる可能性があります。用法・容量を確認し、過不足のないように摂取しましょう。

妊娠前から葉酸を摂っていたらダウン症の予防になるの?

葉酸の摂取がダウン症の発生リスクを下げるという科学的な根拠はありません。

諸外国では、神経管閉鎖障害やダウン症、そのほかの先天性異常を予防する効果が葉酸にないか、研究が行われています。

そのなかで一定の予防効果が認められたのは、現時点では神経管閉鎖障害のみです。少なくとも日本人女性については、葉酸の摂取とダウン症児の発生率には関連性が認められませんでした。

とはいえ、葉酸が母体や胎児にとって、重要な栄養素であることに変わりはありません。

妊活中・妊娠中はとくに意識をして、必要量を摂取することが大切です。

妊活中の体づくりに葉酸サプリを活用しよう

葉酸は、胎児の成長や母体の健康維持に必要不可欠な栄養素です。しかしながら、体内ではたらき始めるのに時間がかかるという難点があります。

いつ妊娠しても安心なように、妊活中は葉酸サプリを活用して、早め早めの体づくりを心がけましょう。

 

記事監修

藤東 淳也
藤東クリニック院長・医療法人双藤会 理事長日本産科婦人科学会専門医 / 医学博士 / 細胞診専門医 / バイオインフォマティクス認定技術者 / 日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医 / 日本内視鏡外科学会技術認定医 / 婦人科腫瘍専門医 / 母体保護法指定医 / 新生児蘇生講習会専門コース修了